先のことはわからない 与えられた場所で最善を尽くす 虎屋会長が語る500年の歴史をつなぐ心構え(後編)

500年ほど前に創業した老舗和菓子屋の虎屋。コロナによる経営への影響を「いまだかつていない危機」と語った17代の黒川光博さんは、昨年6月に息子の光晴さんを新社長に選び、自身は会長になる決断をしました。コロナ禍で自粛ムードが強まるタイミングでなぜ社長交代を決断したのでしょうか。会社の歴史をつなぐために必要な考え方や心構えについて聞きました。
▼インタビュー前編
コロナで気づいた和菓子の価値 未曽有の逆境で虎屋のトップが考えたこと(前編)
世界中に広がったコロナ禍で、出歩くことも、人と会うことも、以前のようにはできなくなりました。だからこそ、大勢の人が、つながりについて考え直したようにも思えます。&M、&w、&Travelの3マガジンは、サイトリニューアルを機にマガジン横断インタビュー「つながる、ということ」を企画しました。
――なぜ、コロナ禍に社長交代を決断したのですか。
迷いがなかったか、といえばうそになります。「コロナだから、今は交代すべきではない」という人も社内にいました。ただ、数年前から息子の仕事ぶりを見てきて、安心して社長を任せられる確信がありました。
また、コロナの時代だからこそ、変化への対応という意味で若い感性や考え方が必要になると思いました。リモート、オンラインショップ。技術が進歩するなかでの商売を考えていかないといけない。
率直に申し上げて、77歳の私では、いくらがんばっても追いつけないところがあります。20代、30代の若い人たちの発想を今こそ生かすべきでしょう。いいタイミングで交代できたと思っています。

社長交代したときに、息子は35歳でした。私は47歳で社長になりましたが、16代目の父の光朝は、28歳で社長に就任しています。
ビジネスも政治の世界も、引き際は大切ですね。日本では「あなたじゃないと無理ですよ」などと言われて、ついついその気にさせられてしまって、退けないベテランの高齢者は少なくないんじゃないかと思います。