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THE ONE I LOVE
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固定観念にあらがうポップスターたち──CHAIが選ぶ愛のプレイリスト

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、5月21日に3rdフルアルバム『WINK』をリリースした4人組バンド・CHAIのセレクト曲を紹介する。「4人がいま大好きな曲」を全員で選んだ結果、近年の洋楽ヒップホップを中心としたアップトゥーデートなプレイリストが完成。インタビューでは、マナ(Vo, Key)、カナ(Vo, G, Key)、ユウキ(B, Cho)、ユナ(Dr, Cho)が各曲の魅力を解説してくれた。

〈セレクト曲〉

01. Lizzo「Juice」
02. HONNE「Good Together」
03. Mac Miller「Good News」
04. The Internet「Come Over」
05. CHAI「チョコチップかもね (feat. Ric Wilson) 」

■Lizzo「Juice」

ユウキ これは、愛の種類で言ったらセルフラブじゃない? 押しつけがましくなくて、リゾのオリジナリティーがそのまま音楽になったみたいな曲だよね。

マナ リゾ自体がセルフラブとかボディポジティブ(ありのままの体形を愛そうというムーブメント)とかを訴えているアーティストなんだけど、それを自分の体をもって表現しているところに大・大・大リスペクト。ありのままの自分でい続けて、それでグラミー賞を取ったのはマジでカッコいいよ。ああいうシンガーが現れたのは本当に革命だと思う。この曲でも、「私はこうなんだよ」ってハッキリ言ってるのが超カッコいい。

カナ 正直、歌詞の内容についてはあまり気にせず聴いてるんだけど、まず曲自体がすごく好きで、もう1音目からいい。よく4人で聴いて、これを参考に曲を作ろうとしたことが何度もあるくらい。全然できなかったけど(笑)。コード進行とビートが最高にキャッチーだし、「よくこれだけポップにやれるな」って。それと、Bメロで「If I’m」「shining」「every-」「body」「gonna」って4分音符でラップしていくところもめっちゃキャッチーだと思う。そんなラップ、あんまり聴いたことないからさ。ポップさ、センスのよさ、キャッチーさの3拍子そろってるところが最高だよね。

ユナ リゾはライブパフォーマンスもゴリゴリでバキバキで、最高のエンターテイナーだなって。全身で表現して、自分の武器を100%使いきってるところが好き。

■HONNE「Good Together」

マナ これはCHAIにとって思い出いっぱいの曲。2018年にバーガー・レコーズっていうアメリカのレーベルと契約したときに出演したサウス・バイ・サウスウエスト(テキサス州オースティンで毎年開催されている世界最大規模の複合イベント)のステージで、初めてアメリカでのライブが盛り上がって。「アメリカでやっていけるかも」と思いながら、帰りの飛行機の中でみんなで聴いたのがこの曲だったの。いま聴いてもバーガーの人たちの顔が思い浮かぶし、愛にあふれすぎていて一生忘れられない曲になった。曲自体もよくできていて、とにかくメロディーが素晴らしい! ホンネの人のよさが曲に出てる。

ユナ 人間味があふれてるよね。愛が詰まってて、とっても温かい気持ちになるんだよなあ。情景が思い浮かんで、ほっこりしちゃう。

ユウキ 英語が苦手だから、歌詞で何を言っているのかは調べるまでわからないことも多いんだけど、メロディーや歌声で伝わるものって聴いた瞬間にあるよね。その曲が持っているものって雰囲気に現れるから、あとで内容を知って「ああ、やっぱり合ってた」みたいな。この曲に関してはもう、「Good Together」ってタイトルがまずいい。

マナ こういうチルな曲もずっと大好きで、CHAIとしては今回のアルバム『WINK』で改めてそういう表現に向き合ったんだよね。今まではライブに向けて作品を作っていたところがあって、「ライブはライブ」「作品は作品」って分けられていなかった。今回コロナでの自粛とかもあって、自分の作りたい音楽についてちゃんと考えたときに、こういう“持ち帰る音楽”にしたいと思って。それをきちんと満足いく形にできたのが『WINK』なの。大満足。CHAI大好き。

■Mac Miller「Good News」

マナ これだけは唯一、歌詞で選んだ。歌詞もだし、マック・ミラーの事実(2018年に26歳で死去)も含めてあまりにも泣いた曲だったから。「みんなが聞きたいのはいいニュースばかり(Good news, good news, good news/That’s all they wanna hear)」だけど「俺の体はもうボロボロだ、休ませてくれ(I’m running out of gas, hardly anything left)」っていう訴え方がまずラッパーらしくていいし、それをふわふわしたメロで歌うところもマックならではの表現だと思う。「その音、絶対に外れてるじゃん」っていう(笑)。言いたいことを全部包み隠さずに、自分のやり方で伝えているところが本当にミュージシャンだなって思う。憧れだし、歴史に残る人なんじゃないかな。できることなら本当に会いたかった人。

カナ 自分の中で本当は「いい」と思っていることをついネガティブに捉えちゃったりとか、“矛盾”がそのまま歌詞に書かれてるのが人間らしくていいと思う。すごくミュージシャンっぽいなって。

ユナ 「落ち込んでると嫌われる(No, they don’t like it when I’m down)」「何が違うっていうんだ?(So different, what’s the difference?)」のあたりは、「いいニュース」ばかりを求められることの違和感を歌っているんだと思うけど、それはCHAIが発信してきた「NEOかわいい」(固定化されすぎている「かわいい」という価値観の再定義)に通ずるところもあるのかなって思った。多くの人が世間で「いい」とされているものになんの疑問も抱かないから、「それは本当にいいのか?」っていう問いがそもそも生まれにくいんだよね。そこにちゃんと疑問を持って、自分の直感を大事にしていきたいなって。

マナ マック・ミラーを聴くと、いつもそう思う。「ムカつく」「腹立つ」「あいつクソじゃん」みたいな感情を隠すのが大人だとされているけど、それを表立って言っていくことをマックはやってみせてくれて、それが私にとっても自信になった。怒りだったり、小学校くらいのときから一貫して感じてきたものって自分の本質だし、一番ポジティブになれる感情なんだよ。

■The Internet「Come Over」

マナ これは曲や歌詞がどうこうという次元じゃなくて、とにかくジ・インターネットというバンドのセンスがよすぎるってことで選んだ曲。私はボーカルのシドが大好きなんだけど、彼女は同性愛者で、バイセクシュアルを公言するメンバーもいて。全員がソロでも活動している音楽家集団で、それぞれのソロ曲も素晴らしくいい。音楽的にも人間的にも、本当に憧れる部分が多いバンドです。たぶんバンドとして明確なメッセージ性を持っている人たちではなくて、それはこの適当すぎるバンド名にも表れてるよね(笑)。その力の抜けた感じも好き。本当は勉強家で音楽にもめちゃくちゃ詳しいのに、やる気ない感じに見せるのがうまい。

カナ 実際、インターネットの曲をコピーしようと思っても難しくてできないんですよ。この曲で言えば、まず冒頭のギターカッティングからしてすごく複雑なことをやっている。こんな和音構成をどうやったら作れるんだろう? その半面、目立つギターソロのパートでは初心者みたいなフレーズしか出てこなくて(笑)、そこにセンスのよさを感じるよね。私はThe XXのロミー(・マドリー・クロフト)もすごく好きなんですけど、彼女のギターソロも全然ビブラートやチョーキング(弦を押し上げて音高を上げる奏法)が使われないので、ギターっぽくないのがカッコいいなと思ってて。うまく弾こうと思ってない感じがいい。だから「好きなギタリストは?」と聞かれたら、スティーブ・レイシー(ジ・インターネット)とロミーって答えます。そこが一番好きっていう人は珍しいかも(笑)。

■CHAI「チョコチップかもね (feat. Ric Wilson) 」

マナ これはもう、歌詞が素晴らしい。愛にあふれてる。ホクロをチョコチップにたとえているんだけど、作詞をしたユウキ自身すごくホクロが多いから、すごく納得できた。ちゃんとユウキが書く意味のある歌詞だし、笑いもあるし。っていうか笑える。

ユナ ユーモアが本当にすてきだよね。しっとりした曲調とも相まって押しつけがましくないし、「私もホクロいっぱい欲しい!」って思える。ホクロをめでたい。

ユウキ 歌詞はいつも最後につけるんだけど、サウンドやメロディーからは想像できないような単語をいきなりスポーンって乗せるのがすごく好きで。そういう遊びができるバンドだから好きだなって思ってる。それでいて、本当に自分の中から出てくる言葉だからいいんだろうなって。 純粋に自分から出てきた表現にさえなっていれば、それは売れなくてもカッコいいもん。結果売れたらなおカッコいい、っていうだけの話で。

マナ ホントそう!

ユウキ 売れることを優先して作るなら、「ホクロ」はまず出てこないよね(笑)。この曲はホクロ賛歌ではあるんだけど、ホクロの除去手術とかを否定するつもりもまったくなくて。それによって自分を好きになれるんだったら全然いいと思う。私たちが言っているのは、「形を変えることだけじゃなくて、見方を変えることでもコンプレックスをチャームポイントにできるんだよ」っていう、自分を愛せるようになる方法の選択肢を増やす提案なんだよね。やりたいことは結局一緒だからさ、整形という手段を選んだ人に対して「NO」みたいな思いは全然ないかな。

■CHAIは“うまく弾く”ことに興味がない?

マナ ギターとベースとドラムはマジでうまいと思うよ。

ユウキ うまいのかなあ? そこがまずわからないんだけど(笑)。テクニックをひけらかす方向に行かないのは、そもそも自分にテクニックがあると思ってないからじゃないかな。私はCHAIを始めるときに偶然ベーシストになっちゃっただけなので、ユナみたいに一生の仕事としてドラムを始めたタイプの人とは入りからして違うんだよね。

ユナ ドラマーとしては、シンプルなビートでグルーブさせられたらめっちゃ無敵と思ってて。手数の多いプレーヤーもそれはそれでカッコいいけど、私が目指したいのはそっちじゃない。極論、ハイハットとスネアだけのビートで満たされるならそれが最強だなって思ってるし、足し算はあんまりしないかな。

カナ 音楽も含めて芸術作品って、うまいヘタは関係なしにセンスだと思う。たとえば絵のうまいヘタは私たちには判断できないけど、いいか悪いかは判断できる。そういう感覚が4人とも一致してるのかも。私のギターで言えば、本当に単純なフレーズしか弾いてないんだけど、そこで“ヘタに聴こえちゃうフレーズ”を選ばないセンスがあるっていうことなんだと思う(笑)。そこが大事なんじゃないかな。

マナ 演奏で自分を出すことよりも、曲を優先してるかな。曲がよければそれが一番いいっていう。みんな、“うまく弾く”ことに興味ないんだと思う(笑)。

(取材・文/ナカニシキュウ、企画制作/西本心〈たしざん〉)

■CHAIセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト
■CHAI『WINK』
固定観念にあらがうポップスターたち──CHAIが選ぶ愛のプレイリスト
PROFILE
CHAI

双子のマナ(Vo, Key)とカナ(Vo, G, Key)、ユナ(Dr, Cho)、ユウキ(B, Cho)による4人組バンド。1stアルバム「PINK」が、音楽業界を超え様々な著名人から高い評価を受ける。2020年にはGorillazの新作アルバムヘ参加。USのインディーレーベル、SUB POPと契約するなど、世界的な活躍を加速させる。

【関連リンク】

CHAI Official Website.
https://chai-band.com/

CHAI official (@CHAIofficialJPN) · Twitter
https://twitter.com/CHAIofficialJP

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