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お笑いに身を捧げ、面白さで黙らせる ミルクボーイ内海崇、角刈り後の再生

内海崇さん=2020年4月2日午前、大阪市中央区、白井伸洋撮影

「史上最高の大会」との呼び声も高い、2019年のM-1グランプリ。下馬評ではダークホース的な存在だったお笑いコンビ「ミルクボーイ」の優勝は今も記憶に新しい。

母親が好きな朝ごはんはコーンフレークか否かという、彼らのあまりにばかばかしい話し合いは、会場全体に巨大な笑いのうねりを起こし、審査員の松本人志は「これぞ漫才」、ナイツ塙は「100点に近い」と賞嘆した。

07年にコンビを組んでから14年。そのうち5年近くが事実上の解散状態にありながら、2人は今にも切れそうな細い糸をつたい、死に物狂いで頂点にたどり着いた。

ツッコミの内海崇は振り返る。本気を出したと納得するまで辞めようとは思えなかった、と。

ふしだらな生活に別れを告げ、本気でお笑いに向き合おうと決めた内海を、支え、刺激し、奮い立たせた人たちがいる。長年通う理容室の店主や、M-1で共に死力を尽くした戦友への思いを聞いた。

世界中に広がったコロナ禍で、出歩くことも、人と会うことも、以前のようにはできなくなりました。だからこそ、大勢の人が、つながりについて考え直したようにも思えます。&M、&w、&Travelの3マガジンは、サイトリニューアルを機にマガジン横断インタビュー「つながる、ということ」を企画しました。

念願の恩返し 52万円の椅子をプレゼント

――M-1グランプリを制してから1年半が経ちました。「人生が変わる大会」と言われていますが、実際変わりましたか?

めちゃくちゃ変わりましたね。岩手にロケに行ったとき、路地裏にいた中学生が「ミルクボーイだ!」って言うんです。ほんま驚きました。それまで知名度ゼロだったのに、もう日本人全員、俺らのこと知ってるんちゃうかって。今は毎日仕事があって、顔も覚えられて、収入も上がって、親も家族も喜んでます。

お笑いに身を捧げ、面白さで黙らせる ミルクボーイ内海崇、角刈り後の再生
漫才を披露するミルクボーイ/吉本興業提供

――内海さんの生き方も変わりましたか。

いや、生活や人間関係は変わらんことのほうが多いですよ。ネタ合わせのときに行く喫茶店のママ(「珈琲館サモア」木田恵子さん)にも、角刈りにしてくれる散髪屋のおっちゃん(「プロムナード塚本店」小川清さん)にも、よう会います。以前と変わらず接してくれるから、落ち着くんです。

M-1優勝して何が一番うれしかったかって、ずっと付き合ってきた人たちと喜びを分かち合えることですよ。やっと恩返しができると思って、おっちゃんの店に椅子をプレゼントしました。52万円もする最新式のめちゃくちゃ性能のええやつです。「M-1グランプリ2019チャンピオン ミルクボーイ内海」って刺繍(ししゅう)を入れて。刺繍に12万円もかかりましたが、まあええかって。

――ずいぶん奮発しましたね。

でも、優勝するまで、散髪代は2年以上無料でしたから。僕が払おうとすると、「そんなもん、出世払いや〜」って。

角刈りって10日に1回くらいのペースで手入れが必要なんです。おっちゃんのところは1回2000円くらいするので、月6000円。ちょっとええ美容院と変わらんでしょ。それをタダにしてくれたのは、おっちゃんなりの応援ですよ。僕もその期待に応えたくて、「優勝したら、僕専用の椅子と散髪台つくりますから!」って宣言して。ようやく少しだけ恩返しができました。

お笑いに身を捧げ、面白さで黙らせる ミルクボーイ内海崇、角刈り後の再生
内海さんがプロムナード塚本店に寄贈したイス。背面に文字を入れるのに12万円かかったという/内海崇さん提供

――都会ではあまり想像がつかない人間関係ですが、小川さんとの付き合いはどうやって始まったのでしょうか。

おっちゃんは、(相方の)駒場が通っていたトレーニングジムの会長のお父さんなんです。ある日会長さんから、「内海さん、角刈りにされるんなら、うちのオヤジが切らせてほしいって言ってるんですけど、どうですか?」って誘われて。「(角刈りの技能を競うコンテストで)日本3位になったこともあるんです」って言うから、ほな行こかって。

――日本3位。角刈りにもうまさがあるんですね。

めちゃくちゃありますよ! 以前行った散髪屋では、70歳くらいのいかにもうまそうなおじいちゃんが出てきて。「角刈りか〜。久しぶりやし、できるかな」って言うから、謙遜してるんやろなと思ってたら、ゆっくり1時間くらいかけて丸坊主になりまして。右が短なったと思ったら、次は左が短なって、どうにもうまくバランスが取れない。さすがにおっちゃんは、そんなことにはなりません。

あと、話しやすさも大事ですね。僕は芸人だから、極端な髪形にしたいわけです。でもM-1に出る前は、僕らのことなんて誰も知らんし、自分から芸人ですって言うのも恥ずかしいじゃないですか。ただ、それを店の人に伝えないと、丸みを帯びた街を歩ける角刈りにされてしまう。その辺の微妙なところを、おっちゃんとはしっかり相談できました。この極端に角張った角刈りは、おっちゃんのおかげです。

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