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花のない花屋
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母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
大城千晶さん(仮名) 55歳 女性
主婦
ドイツ在住

    ◇

私が住むドイツは冬が長く、最近ようやく春がやってきました。特に今年は4月のイースター(復活祭)の後にも雪降りの日があるほど。なごり雪の景色に、娘が誕生した時の記憶が重なり、当時を思い出して今回筆をとりました。

私が結婚のためドイツに移り住んだのは、21年前。仕事で数カ国に駐在したので海外暮らしには慣れていましたが、初めてのドイツの夏は体調を崩しました。でもその後すぐに、体調不良ではなく妊娠だとわかったのです。35歳での初めての妊娠に、異国での出産を不安に思う隙もないほどうれしかったことを今でも覚えています。

「初孫の顔を真っ先に見たい」と、実家の母が産後すぐにドイツに来てくれました。うれしいことを全身で表す感激屋で明るい性格の母だけれど、日本国内の旅行すらあまり行かない出不精(でぶしょう)さん。その母がたった一人で航空券を握りしめ、英語もドイツ語もわからないのに不慣れな海外渡航を敢行してくれたことは、私たち家族で語られる母の武勇伝のひとつになりました。

当時のフランクフルト空港は、不安になるほどに延々と長い通路が続き、乗り継ぎまでの難関が何カ所も。私もそれは心配したものです。空港まで迎えに行ったドイツ人の夫によると、母は運よく親切な日本人乗客に出会え、長い乗り継ぎ通路をクリア。到着した最寄りの空港で夫の顔を見つけるや、長い旅路から解放された安堵(あんど)とうれしさで、父が書いた命名書が入った荷物もポーンと放り投げ、映画の主人公のように駆け寄ってきたとか。ただし、投げたのが手続きが終わっていない荷物だったため、駆けつけた空港スタッフに大目玉を食らったのも、今では笑い話です。

夫が私との結婚を考えたのは、「両親にかわいがられているから」という理由もあったそう。それほどに私は両親に甘えさせてもらいました。考えてみれば、私が決めたことをいつも認めて応援してくれた両親。当たり前と思っていたけれど、自分が親になって改めて父と母の愛情と懐の深さに気付き、感謝をするようになりました。

生まれたばかりの赤ちゃん、私、そして母の3世代で、ドイツのなごり雪を眺めたあの幸せな時間。赤ちゃんだった娘は20歳になり、春の雪を一緒に眺めた3人は、今ではそれぞれ違う街の空の下で暮らしています。ずっと私を大事に思ってくれている母に、お花を贈っていただけませんか。感謝の気持ちをこめて、応募します。

母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して
≪花材≫ダリア、カラー、ガーベラ、カーネーション、ドラセナ、ハラン

花束をつくった東さんのコメント

うれしいことを思いっきり喜ぶ、明るいお母様をイメージして、オレンジを中心に、一足早く夏を先取りしたアレンジで作りました。

ダリアには多くの品種がありますが、今回はその中でも花びらの色のグラデーションがきれいな品種を使いました。実はこのダリア、花びらの表と裏で色が違います。まわりに置いたトマホークという種類の元気が良いガーベラと一緒に、見る角度によって、さまざまな表情を見せてくれるでしょう。

引き立て役として、今回はアレンジの下の部分に3種のリーフワークを入れました。ドラセナやハランなど、グリーンがお花を引き締めています。投稿者様の感謝の気持ちを込めました。“感激屋”であるお母様が、思いっきり喜んでくれるといいですね。

母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して
母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して
母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して
母娘3世代、今はそれぞれの空の下。幸せな時間を思い出して

(文・福光恵 写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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