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宇賀なつみ わたしには旅をさせよ
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時間も気温も体重も気にしない、函館の旅 宇賀なつみがつづる旅(21)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は、5年前に初めて行った函館。宇賀さんが思い出す、小さな出来事とは。

「風に吹かれて 函館」

5月の風が好きだ。
夏への曲がり角を曲がった気分になる。

爽やかで心地良い風の中に、ほんの少し夏の匂いを感じると、
体も心も軽くなり、じっとしていられなくなってしまう。

5月病とは無縁だ。
いつもよりも元気になって、旅に出たくなる。

ちょうど5年前の2016年5月には、
生まれて初めて函館に行った。

札幌は、仕事も含めてもう10回以上訪れていたが、
函館は初めてだった。

午後に着いて、ホテルに荷物を置いたら、
まずは赤レンガ倉庫のあたりを歩いた。

空も海も道も、広くて大きい。
ほとんど人がいなかったので、独り占めしているようだった。
街に余裕があるような気がした。

早くから開いているすし屋を見つけたので、入ってみた。
カウンターに座り、少しドキドキしているのを隠すために、雑談をする。

最初は無口で怖そうだなと思った大将も、
初めて来たと伝えると、
魚のことや街のことを、色々と教えてくれた。
こんな時間に出会いたくて、旅を続けているのだと実感する。

まずはイカのお刺し身。
その後もオススメをいただきながら、話は弾んだ。

最後に「お土産にどうぞ」と、ようかんをふたつくれた。
壁には、ファイターズのポスターが貼られていた。

ようかん

日が傾いてきたので、ロープウェーで函館山に上った。
せっかく来たのだから、夜景を見ておかなくてはいけない。

昼と夜の間、薄明の時間帯に着いた。
そこから、少しずつ夜がやってくるのを、ずっと見下ろしていた。
海と陸がはっきりと浮かび上がった。

夜景

翌日は、朝市に行ったり洋館を巡ったり、
特急に30分ほど乗って、大沼公園にも行った。
自転車を借りて、沼の周りを走り、遊歩道を歩いた。

人混みの中で暮らしていると、
本当は広い空のこと、濃い緑のことを、忘れてしまう。

この日は、どこに行っても私が少数派で、
大きな自然の中の、小さな存在だった。

日が昇ると起きて、風に吹かれて、ただ歩く。
疲れたら休むし、おなかがすいたら何か食べる。

すごく原始的で、根本的なことなのに、
どうして日常では、できないんだろう。

時間や気温は気にしなかった。
体重計に乗るのもやめた。

私たちは、自分たちが勝手に作ったルールに、
苦しめられているのかもしれない。

林

こうして振り返ると、見事なまでに王道で、
観光ガイドブックをコピーしたような旅だった。

でも、5年経って思い出すのは、
森の中で聞いた名前を知らない鳥の声や、
夜中に食べたラーメンに浮いていたお麩(ふ)の食感や、
歩きすぎて靴擦れしたかかとのこと。
どこにも載っていない、私だけの小さな出来事なのだ。

今年も夏がくる。
私の心は、どこに行けるだろうか。

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