大人の表現を任される喜びも 安達祐実、パブリックイメージを更新する闘い

コロナ禍の春、多摩川沿いの街に生きる人々の日常を、オムニバス形式で切り取ったドラマ、Huluオリジナル『息をひそめて』。安達祐実がミステリアスな年上の女性・琴子=妃美を演じた第3話「君が去って、世界は様変わりした」は、マッチングアプリで出会った男女のつかの間の逢瀬(おうせ)を描いている。
子役時代から第一線で活躍してきた安達は、多くの人がその成長とキャリアを見守って共有してきた存在だ。本人役を演じた昨年放送の連続ドラマ『捨ててよ、安達さん。』は、そんな彼女の半生を、実人生と虚構を織り交ぜて振り返る旅でもあった。
そして40歳をむかえる今年、安達は人生のさらなるステージに踏み出そうとしている。この日着ていた衣装は、2020年に立ち上げた、自身がプロデュースを手がけるブランド「虜(Torico)」のセットアップ。パブリックイメージとのギャップに悩み、闘い、環境を変えるべく自ら行動を起こしてきた安達祐実が次に向かう先とは?
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世の中はコロナ禍の孤独とどう向き合っているのか
――今なお先の見えないコロナ禍で、その状況をリアルタイムで描く作品に出演することは、どんな体験でしたか?
安達 それこそ最初の緊急事態宣言が出たときは、基本的にずっと家にいて、3日に1回だけスーパーに行くような生活をしていたんです。そんな中で、24時間ずっと子供と向き合っていると、孤独感も増してくる。世の中の人たちはどうやってこの状況を過ごしているのかと気になっていました。
だからこの脚本を読んだとき、コロナ禍にあっても人とのつながりを求めたり、そんなときでも誰かと会おうとしたりすることには、共感する部分もあったんです。撮影を通して、みんながどうやって今の現実を生きているのかをのぞき見られたというか。それぞれの屋根の下ではこういうふうにして生活しているのかもしれないな、というのを感じられて、ほっとしたような気がします。

――初対面にもかかわらず親密な仲になるという、マッチングアプリを通したコミュニケーションのあり方は、矛盾した距離感とも言えます。
安達 短い時間であの空気感を作れたのは、相手役の(村上)虹郎君のおかげです。私自身、あまりがつがつと人との距離を詰められるタイプではないんですけど、現場で虹郎君がぽつりぽつりと私について質問してくれたのでそれに答えたり、お互いにちょっとずつコミュニケーションをとろうとするぎこちなさと心地よさが、この作品にとってはちょうどよかったと思います。
ここ数年、出演されている映画などを拝見し、俳優としての存在感が増した、という印象でした。そこに至るまでの経緯に葛藤があったことを知って、安達さんの地道な努力に強い感銘を受けました。