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「キャラクターではなく人間を描いている」『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』福井晴敏×皆川ゆか

往年の名作であり、現在活躍している創作者たちに大きな影響を与えたアニメ『宇宙戦艦ヤマト』。2013年にはリメイク版となる『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下『2199』)シリーズが全国ネットで放送された。そして、アニメ映画史に残る大ヒットとなった『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をモチーフにした『2199』の続編『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下『2202』)シリーズが2017年に始まった。新たなシリーズは従来のファンのみならず大きな反響を呼んだ。

そんな両シリーズを再構築した総集編が、6月11日に『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』(以下『総集編』)と題し劇場上映される。『2202』の物語を中心に、イスカンダルへの大航海からガトランティス戦に至る歴戦の記録を約120分で描いた本作は、ただのダイジェスト版的な総集編ではなく、新たに作画したカットや新録ナレーションを織り交ぜたドキュメンタリー映画のようなタッチで表現されている。

今回は、壮大な物語を約120分に収めアニメ映画として新しい表現に挑戦したスタッフにインタビューした。本作で構成・監修・脚本を務める小説家の福井晴敏さんと、同じく脚本を手掛けた小説家の皆川ゆかさん。幼い頃から『宇宙戦艦ヤマト』を見てきたという二人が本作へかけた思いとは――。

「キャラクターではなく人間を描いている」『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』福井晴敏×皆川ゆか

皆川ゆかが共感した福井晴敏の“軸”

皆川さんは『小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の著者で、映像作品の脚本は本作が初挑戦だ。『2202』の続編として2021年の上映が予定されている『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(以下、『2205』)への参加も決まっている。皆川さんが本作の脚本に抜擢された理由を、『2202』からシリーズ構成・脚本を務めていた福井さんはこのように話す。

福井 言葉を選ばずに言うと、とてもうるさかったんですよ(笑)。皆川さんに『小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の執筆をしていただくにあたって僕が作成した企画書をお渡しした際、独自の視点からいろいろと意見を言われまして。こういう人を味方に取り込んでおいた方が後々いい影響を与えてくれるだろうと考え、次回作である『2205』にスタッフとして入っていただくようお願いしました。また、『2205』の制作中に今回の『総集編』のお話が出てきたのですが、『2205』でやり取りをしていく中で皆川さんは映像感覚もお持ちだと分かったため『総集編』の脚本をお願いしました。

福井さんの言葉に笑みを浮かべながら、「福井さんの軸がしっかりしていたから同じ船に乗せていただいた」と皆川さん。

皆川 福井さんの考える物語の軸が許せないと思っていたらご縁はなかったと思います。しかし、福井さんのこれまでの著作も楽しませていただいていましたし、私が(『2202』の)ノベライズ版を書かせていただいたとき、企画書で不覚にも泣いてしまうほど軸に共感ができた。この人のつくる物語であれば、意見のぶつかり合いはあったとしても、決裂することはないだろうと思い参加させていただきました。

「キャラクターではなく人間を描いている」『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』福井晴敏×皆川ゆか

「不覚にも泣いてしまった」と語るのは、福井さんの描く“生の人”に魅力を感じていたからだ。

皆川 登場する人物たちが大きな社会とどう向き合い、どう動いていくのか。そういう人情的な部分の生っぽさを福井さんの作品には感じます。そんな福井さんが『宇宙戦艦ヤマト』を切り口に描いた物語はどうなるのだろうと興味もありました。そして、私が参加するなら福井さんとは違う切り口で文句を言おうと思ったんです(笑)。

こう話す皆川さんに福井さんは「『総集編』の制作では、皆川さんから来るアイデアをただ受け止めました」と笑顔でこぼした。

福井 自分だけで進めていたら、ここまで“文芸調”にはならなかったと思います。自分も文芸が入口ですが、長年映像に関わっていくと頭を切り替えなきゃいけないと考えることが多くて。そこに同じ文芸畑の皆川さんが脚本に参加したことで、カッコいいと思える言い回しを追求する勇気をもらいました。どうせならと思って、最終的にさらに文芸調に持っていきましたよ(笑)。

「福井さんの思い描く映像を理解するのに時間はかかったけど、こういう経験は一人で書いているとできない」と脚本完成までのやり取りを振り返り、皆川さんは初の映像作品の脚本経験に対する苦労と同時にチームでつくり上げるおもしろさも口にした。

現代日本を描くため、ドキュメンタリータッチに

“「宇宙戦艦ヤマト」という時代”とタイトルにあるように、本作は“時代”が大きなテーマとなっている。このテーマを表現するため用いたのが、ドキュメンタリータッチの映像手法だ。

福井 『宇宙戦艦ヤマト』シリーズは事あるごとに宇宙人が攻めてくる作品です。当時はそれがファンタジーとして捉えられていましたが、いまのご時世になってみると宇宙人が地球に攻めてきても驚かないと思うんです。毎年のように新しい災害が起き、昨年からも未曾有の事態が起こっている。何が起こってもおかしくないのが現代です。度重なる苦難を生き抜いてきた物語である『宇宙戦艦ヤマト』が現代日本の鏡像として描ける時代になってしまった。ご覧になるみなさまに真正面からそれを捉えてほしいと考え、本作をドキュメンタリーという一歩引いた視点から描くことに決めました。

「キャラクターではなく人間を描いている」『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』福井晴敏×皆川ゆか

最初に放映されたTVアニメシリーズから描かれてきた社会風刺的な表現。これまで大切にしてきた日本の、日本人の気分を忘れずに描くことを、『2202』でも強いこだわりとして持っていた。

福井 最初に放映されたTVアニメシリーズは「戦後日本」が重要な要素でした。「戦争反対」という主張をせず、本来考えるべき「戦争が起こらないようにするにはどうしたらいいのか」を戦後初めて教えてくれたフィクションが『宇宙戦艦ヤマト』だったんです。敵を全滅させてしまったあと、「ああ、なんてことをしてしまったんだろう。愛し合うべきだったのに」ということを教えてくれた。そして、戦争の痛みを経て爛熟し、バブル経済の片鱗を見せ始めた日本に対し、「死んでしまった人たちに申し訳が立たない」というスタートから描かれているのが映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』だと思います。時代を映し出してきた『宇宙戦艦ヤマト』シリーズをリメイクするとなったとき、同じ物語をそのままもう一度描くのではなく、現代をしっかり捉えて描きたいと思ったんです。

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