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パリの外国ごはん ふたたび。
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動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

連載「パリの外国ごはん」では三つのシリーズを配信しています。
《パリの外国ごはん》は、フードライター・川村明子さんと料理家・室田万央里さんが、暮らしながらパリを旅する外国料理レストラン探訪記。
《パリの外国ごはん そのあとで。》では、室田さんが店の一皿から受けたインスピレーションをもとに、オリジナル料理を考案。レシピをご紹介します。
今週は、川村さんが心に残るレストランを再訪する《パリの外国ごはん ふたたび。》です。

待ちに待った5月19日。カフェとレストランのテラスが再オープンした。店内での営業は6月9日からの再開で、故に、テラス席のない店などまだ再稼働に至っていない店も少なくないのだが、それでも7カ月ぶりにカフェの扉が開き、テラスに人々が座ってサービススタッフが立ち働く光景には、街が動き出した印象を受けた。

それで私は、ある店に向かった。3区の常設市場、マルシェ・デ・ザンファン・ルージュにスタンドを構えるアフリカ&アンティル諸島料理の「Corossol(コロッソル)」へ。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

屋根はあるけれど扉は無い半屋外の店舗で、“テイクアウトで営業しているのではないか?”と期待しながら、この半年、何度も様子を見に行っていた。だけれど、シャッターはずっと閉まったままだったのだ。

「コロッソル」は、表通りに面する市場の門から見ると一番奥に位置している。出向いたその日、通りからのぞくと、またもシャッターは閉まっていた。“もしかして閉店してしまったのだろうか……”。芽生えた不安を抑えつつ、市場内に入り通路を奥まで進んだ。すると、これまでとは違う貼り紙があった。「今日だけ、臨時休業します! 明日からまた開けます!」

よかった〜!! 再開したんだ! それで、その2日後に改めて、出かけた。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

黒板メニューを眺めていたら、ちょうど空いた、店舗に沿った通路に出されたテーブル席に案内された。“この喧騒(けんそう)はうれしいなぁ”。市場全体に広がるざわつきとせわしなさに喜びをひしひしと感じつつ、何を頼もうかと考えるも、気持ちが高まってしまいなかなか決められない。

そこへ、店主の女性が注文を取りに来た。「まだ決まっていなくて……」と伝えたら、「まず何か飲みますか?」と聞かれたので、「じゃあ、ショウガのジュースを」とお願いした。

それはまさにショウガをすりおろして搾った、と感じられるショウガの濃度だった。でも甘みもあった。聞いてみたら、少しフレッシュなパイナップルを加えているという。それでとろっとしているのだろう。気温は22~23度なのに、のんびりした気分になるには十分なくらい空気は程よく温かくて、ジュースに氷が入っていないことも幸いし、“あーこれを、このぬる~い感じを味わいたかった”と心底思った。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

実は、「コロッソル」に行くことを決めてすぐに、この連載の本編『パリの外国ごはん』の相方、万央里ちゃんに「一緒にどお?」と連絡していた。「食事の最中にも横を通り過ぎる人がいる、ざわつきのあるマルシェの端っこで、揚げ物をつまみながらちょっとご機嫌な気分になりたいな~と思ってさ!」と誘った。残念ながら彼女は多忙を極めていて、この日は難しいということだった。「あープランタンのフライ食べたいー。ラム飲みながら。わしの分も、た、頼む!」と返事が来た。

プランタンバナナのフライには大いに惹(ひ)かれたけれど、1人で一皿食べるとおなかが張ってしまう。これは次回にとっておくことにして、代わりにアクラ(干し塩鱈〈たら〉のコロッケ)を取ることにした。

それとメインは、初めて訪れた時に食べてから何度かテイクアウトもしたルガイユと迷って、結局、名前を見ると気になるコロンボをチョイス。パリでは“コロンボ”という名の料理を見かけることがある。インド食材店でも、スーパーのスパイス売り場でも“コロンボ”というミックススパイスを売っている。19世紀に、インド人によってアンティル諸島にカレーが持ち込まれ、時とともに、現地のハーブや香辛料が加わって誕生したミックススパイスが、かつてのスリランカの首都の名を冠した、コロンボなのだそうだ。

ちょっとじわっと汗をかくくらいの辛さも欲していて、それを伝えると「辛いソースを添えますね」と言ってくれた。

5分ほどでコロッケが運ばれてきた。皿の真ん中にはくすんだ緑のソースがあったけれど、それとは別に、真っ赤な、辛そうなソースも持ってきてくれた。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

アクラはモチッとしていた。タロイモでも入っているのかな? そうじゃなかったら、小麦粉じゃなくてタピオカ粉と合わせてるのだろうか? 塩気が柔らかく、ドーナツのようにパクパク食べてしまう味だ。元から添えてあるソースは、青唐辛子とエシャロットとライムが主な材料か、爽やかで、それほど辛くなく、食欲をいいあんばいで刺激した。

そこで、例の赤いソースをつけてみた。恐る恐る少しだけ。確かに辛い。でも辛いだけではなく、唐辛子の持つ甘みも感じて、味に奥行きがあった。“これはおいしいなぁ”。そう思ってつけていたら、頭皮にじんわり汗をかいた。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

続いて出てきたコロンボは、薬膳チキンカレーと出されたら、なるほど、と納得しそうなスパイス使いの逸品だった。なす、ズッキーニ、セロリがたくさんで、鶏肉も骨からほろっと簡単にほぐれるくらいに煮込まれている。するすると胃に収まり、なんだか体が元気になりそうだ。そして、またも赤いソースをチョン、と真ん中に落とした。これはごはんが進む。お米はバスマティ米ではなくタイ米で、それがまた好みだった。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

食べ終わるタイミングで、店主のマダムが、私の目の前にあるテーブルに、私に向かい合うように(店の入り口が見えるように)座った。これから食事をとるようだった。それで尋ねることにした。

以前、北駅とシャペル駅の間にあるインド食品のスーパーでレユニオン島産の、手作りと感じられる唐辛子ペーストを売っていて、それがものすごく辛いけれどおいしくて買っていたのに、いつしか売らなくなってしまった。こちらのはそれよりも辛くなくて風味にも奥行きがあって食べやすくとてもおいしかったのですが、これはどこで買っているのですか?

すると、「これはうちで作ってるんですよ」とうれしそうに、誇らしそうにマダムが答えた。あぁそうなのかぁ。「それ、売っていますか?」と聞いたら、「分けてあげますから今度、空き瓶を持っていらっしゃい。ちゃんとよく口の締まるやつね」という。なんとーーー!! それはうれしい。とてもうれしい。

またすぐにでも、来よう。今度は空き瓶を持って。その時は、万央里ちゃんと一緒に。

動き出したパリの街。にぎやかなマルシェで、ご機嫌なソースに遭遇/Corossol

Corossol(コロッソル)

39 Rue de Bretagne, 75003 Paris

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