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ニッポン銭湯風土記
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舞鶴の入り江は「日本のベネチア」 漁師町に文化財銭湯のたたずむ「聖地」

西舞鶴地区の北の外れ、「伊根の舟屋」(京都府伊根町)とともに「日本のベネチア」とも呼ばれる吉原地区にたたずむ日の出湯=京都府舞鶴市

旅が好きだからといって、いつも旅ばかりしているわけにはいかない。多くの人は、人生の時間の大半を地元での地道な日常生活に費やしているはず。私もその一人だ。が、少し異なるのは、夕方近くにはほぼ毎日、その地域で昔から続く銭湯(一般公衆浴場)ののれんをくぐることだろうか。この習慣は地元でも旅先でも変わらない。昔ながらの銭湯の客は、地域の常連さんがほとんど。近場であれ旅先であれ、知らない人たちのコミュニティーへよそ者として、しかも裸でお邪魔することは、けっこうな非日常体験であり、ひとつの旅なのだ。

東舞鶴と西舞鶴、軍港と漁師町と

私が住む神戸は瀬戸内海に面しているが、じつは本州が最もくびれた部分に位置しており、まっすぐ北上すれば日本海も意外に近い。高速バスに乗れば1時間半ほどで日本海の良港・舞鶴に着いてしまうから、午前中に仕事を片付けて午後からブラ~ッとメシがてら風呂がてら、なんてことも可能だ。

舞鶴市街地は西舞鶴と東舞鶴に分かれている。かつての軍港で今も自衛隊が駐屯する東舞鶴に対し、古くから田辺城(舞鶴城)の城下町として栄えてきたのが西舞鶴。こちらは海の幸に恵まれた漁師町でもある。

舞鶴を東西に分ける五老岳(ごろうがたけ)山頂から見た舞鶴湾口方面。湾は東西に大きく分かれ、写真の右側に東舞鶴、左側に西舞鶴が位置する
舞鶴を東西に分ける五老ヶ岳(ごろうがたけ)山頂から見た舞鶴湾口方面。湾は東西に大きく分かれ、写真の右側に東舞鶴、左側に西舞鶴が位置する

考えてみれば舞鶴ほど優美な名前の街もそうはないだろう。舞い立った鶴が故郷へ帰るように、戦後多くの日本人がこの港の岸壁を目指して旧満州や朝鮮半島から帰ってきた。その情景を歌った「岸壁の母」の岸壁は東舞鶴にある。

でも私はいつも西舞鶴でバスを降りる。なぜなら西舞鶴には昔ながらの銭湯が2軒残っていて、しかもこの2軒が近年相次いで国の登録有形文化財になった。“まちの風呂屋”として私がテーマにする現役の銭湯で、国の登録有形文化財になっているのは全国で8軒。うち2軒がここ西舞鶴にある。

商店街アーケードを抜け突如現れる洋館風銭湯・若の湯

西舞鶴駅付近から北に向かって「マナイ商店街」という1本のアーケード商店街がある。その手前で目につくのは、派手な看板を上げた鮮魚店。発泡スチロールの箱ごとに、神戸ではあまり見ない大きな魚やカニ、イカなどが並んでいる。つやつやとして見るからに新鮮そのもの。一瞬にして自分が今まぎれもなく日本海の漁師町にいることを実感させられる。

舞鶴の入り江は「日本のベネチア」 漁師町に文化財銭湯のたたずむ「聖地」
JR西舞鶴駅にほど近い鮮魚店・丸富士食品。1.5kmほど北の舞鶴漁港で水揚げされた新鮮な魚、珍しい魚介が並ぶ

商店街を海のほうへ向かって歩くとアーケードが途切れ、そこに突如として独特の風貌(ふうぼう)をした洋風建築が現れる。これが2018年に国の登録有形文化財となった「若の湯」だ。ここでまずあいさつ代わりにひとっ風呂といこう。

ひときわ目を引く若の湯の外観。1923(大正12)年に建てられ、2018年に国登録有形文化財となった
ひときわ目を引く若の湯の外観。1923(大正12)年に建てられ、2018年に国の登録有形文化財となった
傘立ての背後にあるマジョリカタイル。マジョリカタイルは明治期に流行した立体的なタイルで、若の湯のものは小ぶりだが他で見たことがない図柄
傘立ての背後にあるマジョリカタイル。マジョリカタイルは明治期に流行した立体的なタイルで、若の湯のものは小ぶりだが他で見たことがない図柄

番台ではにこやかな女将(おかみ)、若井康江さんが迎えてくれる。はじめて来た土地の銭湯でこんな笑顔に出会ったら、たちまちその街が好きになってしまうだろう。

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