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花のない花屋
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雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
ハワード智美さん(仮名) 47歳 女性
主婦
アメリカ在住

    ◇

雨の日はみんなでカッパを着て、私を後ろ、弟を前に乗せ、家と保育園と幼稚園の道のりを自転車で片道30分、懸命にこぐ母の背中——。今でもよく思い出す、子どものころの登園風景です。

母は、私が2歳のときに父と離婚。同居していた祖母とともに一生懸命働き、私たち姉弟を育ててくれました。 自分が親になってつくづくわかったのは、ひとり親で子どもを育てることの大変さです。それでも母は、生活がつらいとか、仕事がつらいとか、愚痴をこぼすことは一切ありませんでした。

「家族で力を合わせてがんばっていこうね」

そんな母の言葉を聞きながら、私たちは不自由のない、幸せな子ども時代を過ごすことができました。

ところが、私が高校生になるころ、祖母が仕事を引退してまもなく認知症に。仕事と私たちの子育てに加えて、祖母の世話が加わり、母はまさに一家の大黒柱に。忙しい毎日へ、さらに拍車がかかりました。

母の奮闘を尻目に、私は短大卒業後まもない21歳で、アメリカから交換留学生として来日していた現在の夫と結婚を決意。認知症の祖母、大忙しの母、大学生だった弟を置いての、私のわがままな決断でした。

社会経験の少ない私が結婚、それも国際結婚ということで、この時ばかりは大層心配した母。話し合いを続け、許しが出たのは約半年後。とはいえ、竹を割ったような性格の母です。「決まった以上、あとは全力で応援するね!」と、気持ちよくアメリカに送り出してくれました。

旅立ちから26年。一人暮らしになった母が仕事をやめて、10年以上が経ちます。アメリカと日本とで遠く離れているため気軽には会えませんが、日本の日曜朝9時に、1、2時間国際電話で話すのが恒例となっています。母は電話に出るなり、今週あったできごとを楽しそうに話してくれます。スポーツジムで汗を流したり、お琴や民謡といった古風な趣味を楽しんだり、母のスケジュール帳はびっしりのようです。

私の中でひとつ気がかりなことがあります。アメリカでの3人の子育てに追われ、余裕のないままここまできてしまった私。母に何ひとつとして親孝行ができていないのです。これまでは、「子どもたちも含めて、恥ずかしくない生き方をしていることが何よりの親孝行なんだ」と自分に言い聞かせてきましたが、子どもたちも大きくなって手が離れ、すこしずつ生活に余裕ができてきました。

これからは私にできる範囲で、母に素敵な時間を味わってもらえるよう行動していきたい。そんなこれからの決意と、これまでの母への感謝の気持ちを乗せて、お花を贈っていただけませんでしょうか?

雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」
≪花材≫サンダーソニア、ガーベラ、グロリオサ、サンタンカ、バラ、エピデンドラム、アルケミラモリス、ユリ、ベニバナ、ポリシャス

花束をつくった東さんのコメント

ご家族を、その小さな肩で支えてきたお母様。家族を励ますアクティブでパワフルな母をイメージして、見るだけで元気にしてくれるような色味のお花をそろえました。ガーベラ、グロリオサ、サンタンカ、バラ、エピデンドラム、アルケミラモリス、ベニバナ、ポリシャス、ユリのほか、サンダーソニアも顔をのぞかせています。

お母様は、お琴などの日本の趣味もお持ちとのこと。和のエッセンスもところどころに入れて、見る方向によって変化を楽しめるアレンジに仕上げました。

一人暮らしとなった今も、人生をパワフルに楽しんでいるお母様へのエールを込めつつ、ときにはゆっくりとアレンジを眺め、そのさまざまな表情を楽しんでもらえるとうれしいです。

雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」
雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」
雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」
雨の中、自転車を懸命にこぐ母の背中。「今から親孝行、させてください」

(文・福光恵 写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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