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On the New York City! ~現代美術家の目線で楽しむニューヨーク~
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意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 

伊藤知宏

建築物にも楽しみを見いだせるギャラリー

今回僕が訪れたギャラリーを二つ紹介したい。まずはウォーカーストリートとチャーチストリートにある「Bortolami Gallery」。

1階ではアメリカの抽象画家、デボラ・レミントンさん(2010年没)の個展が行われていた。彼女の1960年代から00年代までの作品が並んでいるが、驚くことに40年以上の間、作品のスタイルが全くと言っていいほど変わっていない。「継続は力なり」と無言で訴えかけてくるのが、この展覧会のすごさだ。

2階ではグループ展「Transmutations」が開かれていた。一般的なキャスト・アイアン構造の住宅スペースの内装をそのまま使用した展示方法で、鑑賞者に自分の家に作品を飾ったらどう見えるかを想像させる。右の奥に見える木の引き出しはキッチンだ(2つ目の写真の下段を参照)。

意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
Bortolami Galleryの1階部分の写真
写真上:筆者撮影
写真下:Deborah Remington: Five Decades, installation view, Bortolami Gallery, New York, 2021. Image courtesy Bortolami, New York. Photograph by Kristian Laudrup.
意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
Bortolami Galleryの2階部分の写真
写真上:Transmutations, installation view, The Upstairs, Bortolami Gallery, New York, 2021. Image courtesy the artists and Bortolami Gallery, New York. Photograph by Kristian Laudrup. 床置きの作品がJules GimbroneさんのTraps and Transmutations 3
写真下:筆者撮影

もう一つのギャラリーは「Ortuzar Projects」。イタリア人アーティスト、リサ・ポンティさんによる「LISA PONTI: DRAWINGS, 1993-2018」と題した展覧会が大きなスペースで開かれていた。

彼女の作品は、線を使った絵やコラージュが主だ。特徴は、僕が過去に見たどの作品よりもシンプルな絵(またはコラージュ)の構造にある。これだけシンプルでいながら美術作品として成り立っているのがすごい。非常に高いデザイン力のなせる業だろう。

この展覧会は展示方法もシンプルで余白部分も多い。そこに美しさを感じると同時に、このエリアの土地の高さからとてもぜいたくな展示方法であるとも感じた。

意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
写真左:Lisa Ponti, Untitled, n.d.; Watercolor on paper, 11 3/4 x 8 1/4 inches (29.7 x 21 cm)
写真右:Lisa Ponti, Untitled, 2008; Collage and sticker on paper, 11 3/4 x 8 1/4 inches (29.7 x 21 cm)
意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
Ortuzar Projectsのギャラリースペース

美術館では味わえないギャラリーの魅力

政府がワクチン接種を推進した効果で、NYの街も少しずつ以前の状態に戻りつつある。昨年の夏から今年の3月ごろまで、ギャラリー利用はオンライン経由で予約、または入り口での個人情報の入力が必須であったが、今ではほぼ必要なくなった。入場料などは基本的には無料だ。

意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
ほとんどのギャラリーには無料のマップが置かれ、最新のギャラリー・スペースや展覧会の情報がチェックできる

トライベッカの各ギャラリーにはそれぞれ個性がある。巨大な絵が1枚だけ展示してあるだけのスペースから、年配作家の新作展、実験的な試みのグループ展まで多岐にわたるが、残念ながら駆け出しの若いアーティストの作品はほとんど見られない。

まだ若手アーティストの僕としては、少しくらいは若手の作品を取り扱い、冒険してもいいのではと思うが、ギャラリー側にも事情があって現実的には難しいのだろう。

それでも、将来的に美術館などに収蔵されるかもしれない意欲的な作品群が並び、そこから新鮮さやエネルギーを感じられるのが、ギャラリーならではの魅力だ。専門家の僕が見ても、解説を読まないと趣旨がわからない作品も多い。ギャラリーの雰囲気や作品をさらっと見るのも楽しいが、時間が許すならば、作品の解説などを読みながら時間をかけて見ていくことをお薦めしたい。

ちなみに、かつてこの連載でチェルシー地区のギャラリーを取り上げたが、トライベッカやソーホーのギャラリーとチェルシーのそれとの違いは、ギャラリー自体の構造——つまりキャスト・アイアン構造の建築物にも楽しみを見いだせるところにあると思う。

天井の高い古い建物を改装したギャラリーは、自然光の降り注ぐ巨大な部屋に絵が飾ってあるような場所から、家具や本などと作品が同じ場所に陳列してあるものまでいろいろだ。

新型コロナウイルスによる規制も徐々に解除され、ギャラリーのレセプショニストからの「ハロー」というあいさつも、なんだか以前よりもうれしそうな気がして、こちらも少しだけ明るい気分になる。 今の時期、NYは秋と並んで非常に過ごしやすい季節だ。この記事を通して少しでもトライベッカのギャラリー地区の現在の空気を楽しんでいただけたらうれしい。

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