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“まめ夫”「Presence」は、なぜプライムタイムドラマの主題歌になり得たのか? 「リアル」と「リスペクト」が生んだ日本の新たなヒップホップ

左から、KID FRESINO、松たか子、STUTS=関西テレビ提供

才能が集結 日本の新しいヒップホップの誕生

Spotifyの公式Podcastによると、今回の企画の発端は「俳優にラップしてほしい」という坂元のアイデアだったという。坂元とドラマのプロデューサー佐野亜裕美がイメージしたのは、劇団ままごとの演劇「わが星」。本作は三浦廉嗣(□□□〈クチロロ〉)が音楽を担当し、演者が劇中にラップで自己紹介をする。しかし坂元も佐野もラッパーを知らない。そこで、佐野は古巣TBSの先輩である藤井健太郎に助言を求めた。藤井は自身の番組「水曜日のダウンタウン」のオープニングテーマにPUNPEEを抜擢(ばってき)するほどのヒップホップ好き。そこからSTUTSへとつながっていった。

俳優がラップするだけでも十分挑戦的な試みと言えるが、さらに画期的なのは、主題歌の歌詞がドラマの内容に応じて毎回変わることだ。ラッパー陣には、各話のキーワードをリリックに落とし込むことが課せられた。5人のラッパーたち(KID FRESINO、BIM、NENE、Daichi Yamamoto、T-Pablow)は、各話における大豆田とわ子(松たか子)と3人の元夫(松田龍平、岡田将生、角田晃広)たちの気持ちを解釈し、それを反映したリリックをエンディングで披露している。

俳優とラッパーの組み合わせは、STUTSを中心にドラマのキャラクターとの相性も意識して考えられた。ラッパーたちはどんどん変わっていく脚本の準備稿を読み込み、自分たちの視点から、主人公たちの言葉にならない心情をリリックに落とし込んでいる。

「Presence I」に参加したKID FRESINOは、第1話に流れる1ヴァース目で、ある程度のことは誰にも頼らず1人でできてしまうけれど、そのことにもどかしさも感じていそうなとわ子の心情を「濡れた思い洗濯物のように揺れる」などと情景描写で表現した。だが第6話では、2ヴァース目の最後で「歌は存在の軽さを忘れていた私に胸を貸す」という強いラインを入れている。実は6話目まで、とわ子を含む主人公たちは自分の問題や処理できない気持ちと向き合うことから逃げている。KID FRESINOの繊細な感性とワードセンスは、ずばりとその問題を射抜いていた。

「Presence II」は病的なほど不器用な弁護士、慎森(しんしん/岡田将生)の歌。BIMはそんな彼を「bigieeなprideとsmallsな器」とコミカルに表現する。ラッパーBIMの特徴は、背伸びが当たり前とされるヒップホップの価値観の中で「普通の感覚のままいろんなことに挑戦する人がいたっていい」という信念を貫いていること。自虐をポジティブなニュアンスに変換できるBIMだからこそ、ドラマ本編とは異なる慎森の魅力を引き出せたのだろう。

“まめ夫”「Presence」は、なぜプライムタイムドラマの主題歌になり得たのか? 「リアル」と「リスペクト」が生んだ日本の新たなヒップホップ
左から、STUTS、岡田将生、BIM=関西テレビ提供

芸人としても活躍する角田晃広が演じるカメラマンの鹿太郎は、誰もが認める「器の小さな人間」。その狭量さは彼の自信のなさの表れかもしれない。一方、「Presence III」で彼とコンビを組んだNENE(ゆるふわギャング)は常に自信満々。彼女はネガティブな環境から生まれた負の感情を創作にぶつけることで解消していると話す。

NENEのライン「自信を持っていえるBest Life/ふざけてるつもりは1ミリもない」は、まるで鹿太郎に「おじさん、大丈夫だから。もっとしっかりしなよ」と尻を叩(たた)いているようにも感じられた。

“まめ夫”「Presence」は、なぜプライムタイムドラマの主題歌になり得たのか? 「リアル」と「リスペクト」が生んだ日本の新たなヒップホップ
左から、NENE、角田晃広、STUTS=関西テレビ提供
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