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シルクロードのオアシスの味? 家でつくるアジアのおつまみ「ケバブ」

世界各地を旅してきた旅行作家・下川裕治さんが、アジアの旅先で味わったものを自宅で再現するシリーズ。イスラム圏でさまざまなケバブを食べてきた下川さんが今回、ビールに合う、と選んだのは新疆ウイグル自治区のケバブ。現地でビールを飲むには、極意があるそうです。

■本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

アジア旅で知った絶品ビールおつまみ・中国の新疆ウイグル自治区のケバブ

ビールがおいしい季節になった。しかしコロナ禍はいまだ収束せず、家ですごす時間が長くなる。アジアの味に浸りながらビールが飲めたら……。

そこでアジアのビールつまみを再現してみることにした。

今回は中国の西端、新疆ウイグル自治区のケバブに挑んでみた。中田浩資カメラマンがまずつくり、その動画を見ながら、僕もケバブを焼いてみた。

ケバブの素材は魚や野菜でもいいようだが、一般的には肉。イスラム圏の料理だから羊肉の串焼きというイメージが強いだろうか。しかし羊肉の串焼きといっても、肉のサイズや味つけがかなり違う。イスラム圏でさまざまなケバブを食べてきたが、新疆ウイグル自治区のケバブがいちばんビールに合う。

でも、イスラム圏だからビールが飲めないのでは?  まずは新疆ウイグル自治区のケバブ事情から。

短編動画

羊肉の串焼きだから、作業は単純。肉を串に刺し、焼けばいい。問題は肉の味付けや香辛料。焼く前や後で、塩やクミンシードを振りかけるが、その量など、この動画を参考にしてほしい。忠実につくってもらえれば、新疆ウイグル自治区のケバブの味にかなり近づくはずだ。

新疆ウイグル自治区のケバブ、そしてつくり方 「旅のフォト物語」

Scene01

ケバブ

ここは新疆ウイグル自治区のカシュガル。食堂の前に、こういうケバブ焼きセットが置かれていることが多い。ここからたちのぼるにおいと煙に誘われて……。それがこのエリアの夕方風情だ。タクラマカン砂漠に近接した内陸の街だから、1日の寒暖差も激しい。夏場の昼間は熱気に包まれるが、夕方になると一気に楽になる。そこにケバブ。たまりません。(2017年)

Scene02

ケバブ

そこでビールがほしくなる。しかしイスラム圏。腰を低くして、「あの……ビールなんか、買ってきていいでしょうか」と店主に聞く。許可が出ると、脱兎(だっと)のごとく、近所の雑貨屋へ。彼らは異教徒の飲酒を禁じているわけではない。「漢民族のように大騒ぎしなければ」と。静かにまったり。新疆ウイグル自治区でのビールの飲み方の極意です。(2017年)

Scene03

並木

新疆ウイグル自治区はかつてのシルクロード地帯。天山北路、天山南路、西域南道……。ここはクチャの旧市街で、かつて天山南路のオアシスだった。その証しが、このポプラ並木。この間の道を隊商は進んでいった。この一帯に行くたびに、僕はポプラ並木の真んなかに立ってみる。これがシルクロード……。実感の旅。(2012年)

Scene04

肉

クチャは、かつてシルクロードのオアシスだった街。そんな街には必ず、立派な市場がある。ウイグル人のテロ対策という名目で、僕らも厳しいセキュリティーチェックを受けて市場に入ると、ヌッと現れる羊の肉塊。ウイグルの男たちは得意げにポーズをとるが、その肉食系パワーに、ちょっと腰が引ける。(2012年)

Scene05

レストラン

カシュガルの旧市街はウイグル人街。土塀の建物が続く。彼らの家があり、彼らが暮らす一帯なのだが、出入りするたびに厳重なチェックを受ける。毎日、何回となくチェックを受けてウイグル人は暮らしているわけだ。漢民族は自由に出入りできるのだが。そんな管理のなかで、ウイグル人向けレストランもひっそりとしていた。(2018年)

Scene06

旧市街

カシュガルの旧市街を歩く……。楽しい時間だ。ヨーロッパのような街並みが続き、土塀のなかには中庭がある。ときおり、彼らはその庭に入れてくれる。1本の木。そして縁台。そこで飲むお茶……。中国にいることを忘れてしまいそうになる。東西を結んだシルクロード。オアシス都市カシュガルには、確実に西洋が入り込んでいる。(2018年)

Scene07

食堂

優しい光が差し込むウイグル人向けの食堂。気の合った老人がふたり、ケバブとパン、そしてお茶の昼食。彼らはたっぷりの肉と大量のお茶を飲む。お茶がケバブの脂肪を洗ってくれる? ケバブはウイグル人の民族食のように思えてくる。シルクロードの時代から時間が止まったような食堂だった。(クチャの旧市街、2017年)

<ケバブの再現料理はここから>
Scene08

羊肉

羊肉はラムのもも肉が手に入りやすいが、脂身が少ないことが難点。現地の雰囲気に近づけるには、脂が焼けるにおいは必須。そこで近所のスーパーをまわり、肩ロース肉をみつけた。ただ100グラムが548円とやや高い。10串つくることを考えて300グラム。肉を切るサイズはこの写真や動画を参考に。このサイズは再現料理としてはかなり重要。理由はscene11で。

Scene09

下味

玉ねぎのすりおろし大さじ1と、にんにくのすりおろし小さじ1、酒大さじ2、砂糖小さじ1/2で下味をつける。玉ねぎとにんにくが羊肉の風味の引き立て役だということが食べてみてわかる。現地で焼いているところを見たとき、焼く前にしっかり塩を振っていたので、この段階では塩は加えなかった。この方法が現地の味に近づけた理由? たぶん。

Scene10

羊肉

玉ねぎやにんにくのすりおろしをしっかりともみ込んで、ひと晩、冷蔵庫に。ボウルにビニールをかぶせ、そこに切った羊肉を入れると、もみ込むときに楽。レシピによっては、そのまま焼くものもあったが、しっかり下味がついていたほうが、羊肉を食べ慣れていない日本人にはいいような気がする。

Scene11

串

脂の多い部分と少ない部分をバランスよく串に刺していく。すきまなくぴっちり刺していくのがコツとか。このケバブ、ウズベキスタンやカザフスタンといった中央アジアへ行くと肉のサイズが大きくなる。それに比べると、肉のサイズが小さく、焼き鳥感覚に近づくのが新疆ウイグル自治区のケバブ。日本人には食べやすい。

Scene12

炭

新疆ウイグル自治区では、ケバブを焼くのは炭。ほかは考えられないといった空気が流れている。それは中央アジア全域にいえること。そこで中田カメラマンは炭を採用。やはり焼きあがりの香ばしさが違うはず。焼き網の上に炭を載せ、ガスの火でおこした。でも僕は軟弱に魚焼きグリルを使った。この違いは味に影響する?

Scene13

羊肉

焼く前にクミンシード、塩をまんべんなく振りかけた。こんな感じでかけたが、焼きあがった後でももう1回、クミンシードを振りかけるので、この時点での量はアバウトでもいい気がする。クミンシード、塩ともに両面にやや多めに振りかける……といった感覚だろうか。この多めの塩、コツのひとつ。

Scene14

羊肉

あまり頻繁にひっくり返さないほうがいい。じっくり片面を焼いて、ひっくり返し、隅などの生焼け部分に火が通るように角度を変えるなどして焼きあげていく。しっかり焼きあがったところで、クミンシード。好みでチリパウダーか一味唐辛子などをかけても。新疆ウイグル自治区では、黙っていると、最後にチリパウダーをかけて渡してくれます。

Scene15

ケバブ

羊肉は硬くなるのが早い。熱い焼きたてを。僕は魚焼きグリルで焼いたが、満足の味。雰囲気はないが味はこれでもいける。ビールにぴったりだが、現地ではこれをパンに挟んで食べる人が多い。パンは以前、この連載、「家でつくるアジア旅の味・中国カップ麺編」で紹介している。ウイグル風のパンが手に入らない場合は、ベーグルが代用になる。

※再現してみた日:5月26日

【次号予告】次回はミャンマーの揚げ豆腐、トーフジョーをつくってみます。

シルクロードのオアシスの味? 家でつくるアジアのおつまみ「ケバブ」

2019年に連載された台湾の秘境温泉の旅が本になりました。

台湾の秘湯迷走旅(双葉文庫)

温泉大国の台湾。日本人観光客にも人気が高い有名温泉のほか、地元の人でにぎわうローカル温泉、河原の野渓温泉、冷泉など種類も豊か。さらに超のつくような秘湯が谷底や山奥に隠れるようにある。著者は、水先案内人である台湾在住の温泉通と、日本から同行したカメラマンとともに、車で超秘湯をめざすことに。ところがそれは想像以上に過酷な温泉旅だった……。台湾の秘湯を巡る男三人の迷走旅、果たしてどうなるのか。体験紀行とともに、温泉案内「台湾百迷湯」収録。

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