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【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった

撮影:相馬ミナ

小劇場俳優であるという自覚しかないんです(吉田)

高橋:芸人の皆さんは、本当にテレビで見る通りのリアクションで、勢いがあって、本当に素晴らしいんですが、羊さんは、もう少し……すごく対等な感じがしたんです。出演者だから声をかけてくださったというより、「お疲れ様でした」「ありがとうございました」という普通の挨拶の中に、すごく心がこもっているというか。
他の人たちの言葉が心がこもっていないという意味ではなくて、スターとか有名人とか、そういうイメージとは別のところで、人としてすごくいい感じだなって……。その感じって僕にはすごく大事で。……わかりますか?

吉田:思い出しました。あの番組に来られるゲスト芸人の方は、毎回みな等しく緊張されていたんです。レギュラー監督のお三方ですら、ビートたけしさんという大きな存在を前に、どうするのが正解かと、あがいてもがいて必死で爪痕を残されていく。で、終わったあとは、やはりみな一様に「あれでよかったのか??」という自戒が背中に浮き出ていて。そんなお笑い界の厳しさを毎週見てましたから、初めていらっしゃる、しかも芸人ではない方、というだけで私はちょっと安心したところがありました。畑違いだから緊張せずに気楽にやってくださいね、という気持ちで声をかけたような気がします。
それに優さんからも、「僕にはフレンドリーに話しかけてもらって大丈夫です」というサインを感じましたよ。

【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった

高橋:とにかく、それで僕はめちゃくちゃ解(ほぐ)れたので。解れた時には全部終わった後だったんですが(笑)。テレビ局という緊張感あふれる現場で、同じ目線で、率直に話しかけてくださったのがうれしかった。有名な人たちって、どこか近付き難いオーラがあるし……。あ、羊さんがないって言ってるわけじゃないですよ(笑)。

吉田:ありがとうございます(笑)。

高橋:同じ目線のところまで降りてきて、声をかけてきてくださった。そんな気がしたんです。懐の深い女性というか。そんな印象がありました。

吉田:いやーだってそもそも私、自分がスターであるとか、有名人であるとか、成功しているとか思ったことがないですし。当時からずっと、自分は小劇場俳優であるという自覚しかないです。私が今のように認知していただいたの、ほんの7年前ですよ? ごく最近ですもの。

第一線で戦っている人は、人として大きい部分と小さい部分を持っている(高橋)

高橋:今回こうして対談もすることになって、吉田羊さんの経歴を軽く調べさせていただいたんですが、下積みというか……。色々ご経験されていますよね。

吉田:小劇場で10年やって、映像に移行してからもなかなか知名度は上がりませんでした。その後「HERO」に出て、格段に注目していただきましたが、私自身はあの頃から何も変わっていないですね。芝居がうまくなりたいってずーっと思ってますし。周りの環境は変わりましたけど、今でも、“人気俳優”とか言われるとこそばゆい。自分じゃないみたいな感じがします。これからどんなに経験値を積んでも、死ぬまで、「自分は小劇場俳優である」という自覚は変わらないんじゃないかと思いますね。

高橋:へえ。でも、名前が知られていくこそばゆさの中には、手応えも多少はあるんですか?

吉田:例えば飲食店へ行って、自分の来訪を喜んでくださるお店の方を見ると、ああ、嬉しいなあとは思います(笑)。ただ、多くの方に知っていただける作品に出られたことはありがたいですが、それを自分の手柄だとは思えないんですよね。

【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった

高橋:「有名になったぞ、イエー!」みたいなことはない?

吉田:アハハ(笑)。私が有名になれたのは、間違いなく「人」と「ご縁」のお陰さまですから。決して自分の力じゃないから、手応えという感覚を持てないんだと思います。そういえば、小劇場時代に小田急線に乗りながら、「私はいつか電車で囲まれる俳優になるんだ」と漠然と思っていた時期があります(笑)。
今は、囲まれないにせよ、なんとなく顔を晒(さら)さずに乗りますが、それが成功と思うかというとそうでもなくて。俳優に限らずですが、何かを手に入れた瞬間に次の課題が見つかったり、なくしてしまうかもしれない不安が同時に生まれたりすることはあると思う。安心なんてないなと感じます。

高橋:僕もそれは思います。「下積み時代」と定義される時代の方が、「有名になってやるぞ!」とか、あっけらかんと夢を語れましたから。

吉田:純粋に、楽しかったですよね。

高橋:楽しかったし、売れてる人たちを仮想敵にして、「あいつら、ぶっ倒してやる!」みたいな(笑)。そういう若さ故の無謀さはありましたね。でも、自分もだんだん歳(とし)を重ねていくし、スターと呼ばれる人でも、「夢をつかんだ」とか「テッペンをとった」という感覚じゃない人がたくさんいると知って、僕自身の価値観も変わっていきました。
昔は芸能人と言ったらシルクのガウンを着て、葉巻をくわえて、ブランデーをたしなんで、部屋の外にはボディーガードがいて……。

吉田:いつの時代の話?(笑)。

高橋:漠然とね(笑)。そんなことを思っていたんですが、実は、「大御所」でも「有名俳優」でも、自分ではそう思っていない人の方が多い。しかも、謙虚な部分を持っている人の方が多いと感じていて、もっと話してみたくなります。

吉田 :揺るぎない“椅子”をお持ちの大先輩に限って、「羊ちゃんの頑張りを見て励まされるよ」なんてことを本心でおっしゃる。胡坐(あぐら)をかかない先輩が人生の行く先にいてくださることは、ものすごく幸せなことだなと思います。

高橋:ただ、少年少女の純粋な瞳を持ったままの大先輩を見て安心する気持ちと、「そこまで行ってもそうなのか」とちょっと怖くなる気持ち。両方ありませんか?

吉田:あります、あります! 達成感って果たしていつか感じられるのかな?って。そして芸の道は、先に進めば進むほど孤独だなって。結局は“敵”って、外にいないじゃないですか。表現することは、自分と戦って、自分を更新していく作業だから。友達や家族ではその孤独は埋められない。

【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった

高橋:でも、だから芸能界は面白いなとも思います。ものすごくやきもち焼きの尊敬する大先輩がいるんですが、「なんで君にあの話が来て、僕じゃないんだ」と言われたこともあります(笑)。「この人はまだ戦っていて、僕すらライバルと思っているんだ」と思うと、第一線で戦っている人は、人として大きい部分と、人として小さい部分の両方を持っていて、だからこそ尊敬できるし、好きにもなれるな~ってしみじみ思いますね。

吉田:たしかに。魅力的な人ほど、不格好で正直で、人間くさいですよね。

「表現する者が背負う宿命〈2〉」へ続く

PROFILE

【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった
吉田羊

よしだ よう
俳優。福岡県出身。小劇場での活動を経て、2007年より映像作品に活躍の場を広げる。14年、ドラマ「HERO」の女性検事役で一躍脚光を浴び、15年には映画「ビリギャル」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作にドラマ「真田丸」「ペペロンチーノ」(NHK)、「中学聖日記」「恋する母たち」(TBS系)、「まだ結婚できない男」(CX系)、「2020年 五月の恋」「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」(WOWOW)、映画「ハナレイ・ベイ」(18年)、「記憶にございません!」(19年)など。現在は、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京)に主演の蒲原トキコ役にて出演中。

【対談】吉田羊×高橋優〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった
高橋優

たかはし ゆう
シンガーソングライター。秋田県横手市出身。2008年活動の拠点を札幌から東京に。10年7月シングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。15年7月、秋田県より「あきた音楽大使」に任命される。16年より自身主催の野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」を開催。20年10月、7枚目となるアルバム「PERSONALITY」をリリース。21年4月、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」オープニングテーマ「ever since」を配信。現在、高橋優 10周年初の弾き語りツアー「ONE STROKE SHOW 2021 ~ NICE TO MEET U ~」を開催中。


文:菊地陽子
撮影:相馬ミナ

スタイリスト:上井大輔(demdem inc.)
高橋優さん衣装協力
ATON AOYAMA:03-6427-6335
NOname!:078-333-1341

ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」

毎週金曜深夜0:12~(※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送)
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信

原作:ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮文庫)
主演:吉田羊 國村隼
出演:松岡茉優 富田靖子 DJ松永(Creepy Nuts) オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO) 森本晋太郎(トンツカタン) ヒコロヒー
オープニングテーマ: 高橋優「ever since」(unBORDE/Warner Music Japan)
公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
公式Twitter:@tx_ikirutoka

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