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【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命

恋は勘違いから始まるものですから(吉田)

高橋:羊さんは、役を演じるときに、自分自身の経験に寄せることはあるんですか?

吉田:作品によりますが、どんな役を演じていても、最後は結局自分が、自分の考え方や生き方が出てしまうものだなと思います。自分とまったく違うものにはならない。ただ、自分の経験値では到底補うことのできない未経験の役が来た時は、なかなか準備しがいがあります。例えば医者とか弁護士とかは技術的な練習で準備できますが、殺人犯とか妊婦とかは想像力でしか準備できません。でも後者の場合、正解が分からず悩んでしまう気持ちと、想像次第でいかようにも役の人生を脚色できるという自由度にワクワクする部分とがありますね。

高橋:じゃあ、「生きるとか死ぬとか父親とか」で、羊さんがジェーン・スーさんに激しく似ている現象というのは(笑)?

吉田:ふふふ。役作りって、私は、メイクと衣装で8割決まると思っているので。衣装と、メガネとターバン、あれで視聴者がいいように勘違いしてくださる。お芝居って、必ず見ている人の想像力で補完していただく部分があるので、見ている方の持っている錯覚力?みたいなものをお借りしているのだと思います。

【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命

高橋:僕、ドラマを見る前にジェーン・スーさんにお会いしていて、ミュージックビデオにも出演していただいているのに、ドラマの羊さんがジェーン・スーさんにしか見えなかったんです(笑)。

吉田:撮影前にお話を伺って、著書を読んだりする中で、なんとなく、こういうしゃべり方かな、こういう癖かな、こういう考え方かな、という研究はしました。でも、私はスーさんとは正反対の人間だと思っています。スーさんは知的な方だけれど、私は愚鈍な人間なので。

高橋:どんな時にご自身を愚鈍と思うのですか?

吉田:話すことがそもそも苦手で、咄嗟(とっさ)の質問に瞬発で答えられないんです。おまけに緊張しいなので私はあんなに流れるようにはしゃべれないです。今日も、対談の前にあらかじめお話しすることを用意してきました。そうやって、事前に原稿を作っておかないとしゃべれない(と、手書きのメモが書かれた数枚の便箋(びんせん)を見せる)。なのにさっきから、優さんの流暢(りゅうちょう)な受け答えに気圧(けお)されて、なおさら緊張して原稿を盗み読むことすらできてません、わたし(笑)。

【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命

高橋:これ、なんなんだろうと思ってました。

吉田:取材のときは、だいたい、こうやって準備しているんです。普段生活をしていても、とっさの判断力が鈍いなと思うことはしょっちゅうです。乗るべき交通機関を間違えたり、会話の中で不適切な言葉を選んでしまったり。部屋や思考を整理できないのも、ダメだなあと毎日思っています。そうやって自分には不足しているものが沢山あって、それらすべてを総括して「愚鈍」と呼んでいます(笑)。なので、私なんかが演じさせてもらってすみません、と何度も思いました。

演者が心を削り取られる過程って、観る側はたまらなく面白いんですよ(吉田)

高橋:でも、スーさんも同じようなことを言いそうですよね、なんとなく。この間、ラジオがテーマの対談の中で、「リスナーの方の悩みにアドバイスを心がけていますか?」と質問したら、「そもそも、ラジオでしゃべったりしている人間なんて、ろくなもんじゃない。卓越した能力なんて何も持っていないんです。だからこそ、誰に対しても対等に向き合えると思うし、結局は、読んであげることで自分の仕事はほとんど終わっていると思っています。それぐらいしかできない」みたいなことをおっしゃっていました。
スーさんはすごく頭がいいし、切り返しもすごい方なのに、ご本人はそう思っている。だから、羊さんと似ている部分はあります。

吉田:スーさんの言う「できない」と私の「できない」とでは天と地ほどの開きがありますが、もしもスーさんと私に共通点を探すなら、「こんな私で良ければ精一杯(いっぱい)頑張ります」ってとこかな。そういえば、田中みな実ちゃんとスーさんと3人で、TBSラジオ「トッキーとヒトトキ」を再現した番組に出演しました。そのときは、吉田羊としての答えを求められていたのに、蒲原トキコ的思考で考え、演じてしまっている自分がいましたね。ドラマをやって2カ月半、饒舌(じょうぜつ)なトキコを演じていると、不思議と頭が覚醒してきて、情報の処理能力が上がっていたんですよ。自分に役を憑依(ひょうい)させることで覚醒したんでしょうね。そうやって短所を克服していくやり方は、もしかしたら効果的なのかも、と思いました。

【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命

高橋:へぇ。演じているうちに、中身まで近づいていくんですね。毎回、そのくらい役に対して思い入れを持つものですか?

吉田:「やるかやらないか」を選ぶ時点で、そのキャラクターに感情移入できるかどうか、好きか嫌いかも考えて選んでいるので。あとはどれだけ自分の心を削れるかですよね。1人分の感情で2人分の人生を生きるっていうだけで消耗しますけど、そうやって人間が心を削り取られる過程ってどうしようもなく生々しいし、観(み)る側はたまらなく面白いんですよ。削り取った部分を今度は役で補塡(ほてん)して、役と自分の境目が無くなっていくのは、俳優の宿命だなと思います。

高橋:善人だけでなく悪役を演じることもあるし、極端な役も多いじゃないですか。禁断の愛を重ねた人の役だったとしたら、抜け出すのに一苦労とかしないんですか?

吉田:しますよ! 恋愛もののときは、相手のことを本当に好きになるし。終わってからもしばらく引きずって、勝手に失恋して傷ついたり(笑)。

高橋:本気で好きになって、相手もそうだったら大変ですね。

吉田:そうですよ! だから「逃げ恥」のお二人みたいに結婚するんですよ。恋は勘違いから始まるものですから。

高橋:名言ですね(笑)。

〈3〉家族と孤独と私」へ続く

【対談】
〈1〉あっけらかんと夢を語れた「下積み時代」。純粋に楽しかった

PROFILE

【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命
吉田羊

よしだ よう
俳優。福岡県出身。小劇場での活動を経て、2007年より映像作品に活躍の場を広げる。14年、ドラマ「HERO」の女性検事役で一躍脚光を浴び、15年には映画「ビリギャル」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作にドラマ「真田丸」「ペペロンチーノ」(NHK)、「中学聖日記」「恋する母たち」(TBS系)、「まだ結婚できない男」(CX系)、「2020年 五月の恋」「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」(WOWOW)、映画「ハナレイ・ベイ」(18年)、「記憶にございません!」(19年)など。現在は、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京)に主演の蒲原トキコ役にて出演中。

【対談】吉田羊×高橋優〈2〉表現する者が背負う宿命
高橋優

たかはし ゆう
シンガーソングライター。秋田県横手市出身。2008年活動の拠点を札幌から東京に。10年7月シングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。15年7月、秋田県より「あきた音楽大使」に任命される。16年より自身主催の野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」を開催。20年10月、7枚目となるアルバム「PERSONALITY」をリリース。21年4月、ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」オープニングテーマ「ever since」を配信。現在、高橋優 10周年初の弾き語りツアー「ONE STROKE SHOW 2021 ~ NICE TO MEET U ~」を開催中。


文:菊地陽子
撮影:相馬ミナ

スタイリスト:上井大輔(demdem inc.)
高橋優さん衣装協力
ATON AOYAMA:03-6427-6335
NOname!:078-333-1341

ドラマ24「生きるとか死ぬとか父親とか」

毎週金曜深夜0:12~(※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00から放送)
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」でも配信

原作:ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮文庫)
主演:吉田羊 國村隼
出演:松岡茉優 富田靖子 DJ松永(Creepy Nuts) オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO) 森本晋太郎(トンツカタン) ヒコロヒー
オープニングテーマ: 高橋優「ever since」(unBORDE/Warner Music Japan)
公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
公式Twitter:@tx_ikirutoka

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