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フィンランドで見つけた“幸せ”
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鳥の声と波の音に包まれて ムーミン作者が愛した夏の島

トーベを思う日々 たくさんの美しい瞬間を見つけて

徒歩10分程度で一周できてしまう島では、時間はあり余るほどあるのではないかと思っていた。なのに、書棚に残された書籍や画集を眺めたり、小説の一編を思い出しながら散策したりしているうちに、日々はあっという間に過ぎてしまった。この小さな島はどの瞬間もどの場所も美しくて、片時も目を離せなかったのだ。訪れた日の夕刻には、西の空に日没を、東の空に満月を同時に眺めることができた。小屋の裏手にある小高い丘に登って岩の上に身を横たえると、一日の終わりと夜の始まりが両手の届くところにあるような気がした。

日没
食事
ろうそくの明かりのもとでの食事もなかなか趣がある
トイレ
こちらは野外トイレ。固形物は滞在後に各自が持ち帰ることになっている

島の真ん中にあるたまり水は、天候によって水位を変え、水が引くと岩の間に緑が茂り、鳥たちが遊びに来る。たまり水を囲む大きな岩々をつたって、外海の方へ歩いていくと、つややかなじゅうたんのような海草の森が広がっている。そして、トーベも愛した丸くすべすべとした石、はっきりとした色のラインが入った、切り立った大きな岩。

鳥
島にはたくさんの鳥たちがやって来る
石
どの石も美しい

夜になると、月明かりが漆黒の海とたまり水に光の道をつくる。明け方に雲を連れてさあっと降ってくる雨が上がった後には、空に鮮やかな虹が架かった。

小さな小屋とたまり水、小高い岩の丘の他には、背の高い木も生えないこの島での暮らしが、こんなに心満たされるものだとは思わなかった。ただ美しい自然の中にいるだけで他には何もいらないことを、私はトーベの残してくれたこの島で実感した。

島の記憶は今もなお色あせない。偉大なフィンランドの作家が愛した島と、その島を大切に守り続ける地元のあたたかい人々は、私にとってフィンランドを何度も訪れたい、忘れられない国にした。それから毎年フィンランドを訪ねている。そしてその度にフィンランドは想像以上に美しい風景を見せてくれ、心あたたまる出会いをくれた。

フィンランドの旅を思い出すとき、人に話すとき、いつもある思いに満たされているのを感じる。もしかしたらそれは、“幸せ”という感情なのかもしれないと最近気づいた。そしてそれは、フィンランドを旅することがかなわない今も薄れることはない、あたたかく懐かしい感情なのだ。

※クルーヴハルは通常は非公開です。夏のオープンウィークのみ一般公開され、ツアーの訪問先として組み入れられることもあります。

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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