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戦国最悪の籠城戦“渇え殺し”の舞台 鳥取城(3)

吉川経家像の前から見上げる鳥取城

日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載「城旅へようこそ」。今回は鳥取城(鳥取市)の第3回。この城を舞台にした、“渇(かつ)え殺し”と呼ばれた戦国時代の籠城(ろうじょう)戦を紹介します。

【動画】鳥取城と“渇え殺し”

かくれなき名山の、堅牢な名城

久松山(きゅうしょうざん)の山上に築かれた鳥取城の本丸からは、抜群の眺望が広がる。鳥取砂丘や日本海、晴れていれば大山(だいせん)まで見渡せる。陸水運の利便性が高い、領国の拠点としてふさわしい立地だ。久松山は眺めのよさと防御性の高さから、吉川経家(きっかわつねいえ)が「日本(ひのもと)にかくれなき名山」と評したほど。鳥取城は、かの織田信長に堅牢な名城と言わしめた城でもある。

山上に累々(るいるい)と残る石垣
山上に残る石垣

羽柴(豊臣)秀吉は鳥取城を2度攻めている。1580(天正8)年4〜6月に鳥取城主の山名豊国を降伏させた第一次因幡(いなば)攻めと、その後城主となった吉川経家が籠(こも)る城を兵糧攻めにした、1581(天正9)年7〜10月の第二次因幡攻めだ。“渇え殺し”と呼ばれるのは、第二次因幡攻めのことだ。

秀吉、兵糧攻め前に入念な包囲網

1581年3月、臨時の城主として鳥取城に入った吉川経家は、兵力を分散させるより鳥取城に集中させて戦うほうが有利とみて籠城戦を選択した。この地域は11月になれば大雪に見舞われるため、10月まで支城を守り抜いて持ちこたえれば敵が戦いを中断せざるをえないと考えたのだ。

ところが経家が入城したとき、城内は兵糧不足に陥りかけていた。凶作に加え、秀吉は前年に侵攻した際に兵糧を徴収し、さらには刈田もしていたのだ。一説によれば、事前に近隣の商人を鳥取城下へ侵入させて米を相場の倍以上の高値で買い占めさせていたという。また、すでに鳥取城への支援ルートも秀吉により断絶しかけていた。経家は入城前の早い段階でこの危機に気づき味方の吉川元春に調達を依頼しているが、すでに時は遅く、秀吉の進軍も予想以上に速かった。

山麓に立つ吉川経家の像
山麓(さんろく)に立つ吉川経家の像

秀吉は、完璧(かんぺき)な事前工作のうえで兵糧攻めに臨んでいた。鳥取城を取り囲み補給路を断絶する第一の包囲網、攻略した支城によって陸路や海路を完全封鎖する第二の包囲網、南条氏・宇喜多氏ら寝返らせた国人によってその外側につくった第三の包囲網、という三重の包囲網を構築していたのだ。第一次因幡攻めから段階的に形成された、実に緻密(ちみつ)な包囲網だった。秀吉が鳥取城下に到着した頃には、ほぼ勝敗は決していたといってよいだろう。

海上封鎖で海からの補給断たれる

吉川元春は経家の要請を受け救援に乗り出すも、これでは手の打ちようがない。残された方法は日本海からの海上輸送だが、秀吉軍は賀露(かろ)の湊(みなと)をはじめ千代川(せんだいがわ)河口付近を中心に海上封鎖も行っており、伯耆(ほうき=鳥取県西部)の泊港までは入れたものの秀吉の水軍に追い払われ、もはや活路を見出せなかった。

賀露の湊から。正面の山が鳥取城
賀露の湊から。正面の山が鳥取城

山上の本丸から賀露の湊を見ると、ちょうど中間地点には丸山城が見える。さらに、丸山城と鳥取城を結ぶ尾根上には雁金山砦(かりがねやまとりで)が見下ろせる。これらは日本海から海路で千代川に運び込まれた物資を尾根伝いに鳥取城へ運び込む際、中継地点となる重要な城だった。秀吉が家臣の宮部継潤(けいじゅん)に雁金山砦を攻略させると、丸山城からの補給路は断ち切られ鳥取城は完全に孤立。その後も秀吉は鳥取城へ通じる要所に土塁を増設して、鳥取城への補給路を徹底的に遮断した。

本丸から。鉄塔が建つ山(奥)が雁金山砦、その先の小山が丸山城。賀露の湊も見える
本丸から。鉄塔が建つ山(奥)が雁金山砦、その先の小山が丸山城。賀露の湊も見える

千代川は現在とは流路が異なり、かつては丸山城の麓(ふもと)を流れていた。現在の重箱緑地公園一帯が流路で、公園の側を流れる袋川が名残だ。川幅は現在とは異なりかなり広く、重箱緑地公園を挟み東側の道路まであったようだ。賀露の湊からまっすぐに丸山城に通じていたのだ。この大動脈を制圧されては、すべての機能が停止せざるをえない。鳥取城内には絶望しかなかっただろう。

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