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タイ、ラオスの酸味が決め手のソーセージ 家でつくるアジアのおつまみ「ネーム」

世界各地を旅してきた旅行作家・下川裕治さんが、アジアの旅先で味わったもののうち、「ビールに合う」ものを厳選して再現するシリーズ。今回は下川さんと写真家の阿部稔哉さんが、それぞれ発酵ソーセージの「ネーム」づくりに挑戦。発酵具合を見極めて、できあがったら十分に火を通して味わいましょう。

■本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

絶品ビールおつまみ・タイ、ラオスの発酵ソーセージ「ネーム」

タイやラオスには、ビールにぴったりのソーセージがある。ネームという。ソーセージはビールに合う食材だと思うが、タイやラオスのそれは発酵ソーセージで、軽い酸味が特徴だ。

今回はこのネームを日本で再現してみる。

ネームのファンは、欧米人のビール好きにも多い。ネームという料理名の発音も、英語の「名前」とほぼ同じなので覚えやすい。日本にやってきた彼らは、タイ料理店に入ると、「ネームはありますか」とよく聞くという。しかし日本のタイ料理店でネームを置いている店はなぜか多くない。

そう、コロナ下だから家でネームというより、日本では簡単に食べることができないから家でつくってしまおう。そんな発想で挑んでみました。

我が家のビールつまみのレパートリーがひとつ増える?

まずはタイやラオスの食堂のテーブルから。ネームの親戚のようなビールに合う料理の数々を。

短編動画

ほかの料理レシピでは1日の発酵でネームができるというものもあった。しかしこのつくり方で1日がたったとき、発酵はあまり進んでいなかった。少し不安になったが杞憂(きゆう)だった。3日目にはしっかり発酵し、なかなかのネームができた。振り返ってみると、意外と簡単。最後に揚げるか、ゆでるかは好み。僕はゆでたほうがしっくりきた。

タイやラオスのビールワールドと発酵ソーセージのつくり方 旅のフォト物語

Scene01

鍋

タイの鍋は香辛料たっぷりのたれで食べるのでビールに合う。これはイサーンと呼ばれるタイ東北地方の鍋、チムチュム。酸っぱくて辛いスープが出色だ。テーブル脇でタブレットを見ているのは、この屋台を切り盛りする女性の子供。見ているのは日本のアニメ。その音を聞きながら僕らはビール。タイですなぁ。(タイ・ナコーンラーチャシーマー、2016年)

Scene02

料理

こういう写真を目にすると、タイ好きはたまらないのでは? 揚げた肉に野菜が添えられて出てくる。唐辛子をちょっとかじって、肉を舌に載せる。「辛いなぁ」などと口にしながら、ビールをぐいッ……。目が輝いてくるシーンだ。まったりとした夜の空気に、タイの民謡がからんでくる。(タイ・コーンケーン、2019年)

Scene03

揚げ春巻き

揚げ春巻きを注文する。するとこんな感じで料理が出てくる。その前で腕を組む。どうやって食べる? 思いつく食べ方は野菜で春巻きを包んで……。それ、正解です。テーブルに置かれた香辛料を少し加える。すると料理に刺激が加わり、立派なビールつまみに変身してしまう。(ラオス・ビエンチャン、2016年)

Scene04

魚

葉物野菜で料理を包んで食べる──。タイやラオスを旅すると、このスタイルが多いことに気づく。とくにビールを飲むときは。この店では川魚の塩焼きを頼んだ。すると近くの客が食べ方を指南。野菜で魚を包む? 味が合わないんじゃない? やってみると目からウロコです。(タイ・ウドーンターニー、2016年)

Scene05

イカ

食堂で料理を頼んでビールを飲む。そこでほしくなるのが、日本でいう「箸休め」。タイやラオスでは、そういうすき間にすっと入り込んでくる物売りたちがいる。これは干したイカ売り。この女性は屋台街や店内に入り、その場でイカを焼いてくれる。ちゃんと火鉢で。つい頼んでしまう。(ラオス・ビエンチャン、2016年)

Scene06

料理

タイやラオスのビールおつまみを紹介してきたが、このあたりからソーセージの世界へ。イサーン地方のサイクロークイサーン、チェンマイのサイウア……種類も多い。ひき肉に米やもち米を加えてつくるものもある。それぞれ酸味や風味、形が違う。このソーセージは酸味が弱いタイプだった。(ラオス・ルアンパバーン、2001年)

Scene07

料理

数あるタイ、ラオスのソーセージのなかで、酸味が強いものがネーム。日本で売られているソーセージにはない味なので、最初は、「腐っていない?」と不安になるが大丈夫。やがてその味わいがしっくりくるようになります。食べ方もいろいろ。この店では野菜炒めの具に使っていました。(ラオス・ホンサー、2013年)

<ネームの再現料理はここから>
Scene08

材料

ネームづくりの材料。細かい分量などは、動画を参照してください。通常のソーセージの材料との違いのひとつはミミガー。豚の耳だ。現地では豚の皮を入れるが、それが日本では手に入りにくいための代用品。コンビニでつまみとして売っている。ミミガーを入れたから、ネームに弾力が出た?

Scene09

豚肉

ひき肉にみじん切りにしたミミガー、すりおろしたニンニク、塩、コショウ、冷や飯を入れて練り、混ぜる。混ざりにくいのは冷や飯。指先でばらばらにしては練り、また米をばらばらにして練る……といった作業を続ける。ここで手を抜かないこと。粘り気が出てくる。どのくらいまで練る? それは動画をじっくりと見てください。

Scene10

成形

練りあがったら成形。生の唐辛子を丸ごとなかに入れた。これがネームの特徴のひとつ。輪切りにしたとき、この唐辛子があるところと、ないところができてしまう。それは気にしない。現地の人たちはおおらかです。もっと辛くしたいなら、青い唐辛子を使ってもいい。タイ食材店で手に入る。

Scene11

ビニール袋

阿部カメラマンは、成形したネームをビニール袋に入れ、空気が入らないように巻いた。僕はラップで巻いてみた。どちらも空気が入らないように巻くのがコツだろうか。ネームは軟らかいので、僕はラップがぴったりとくっつくようにネームを少し押すようにして巻いた。

Scene12

冷蔵庫の側面

発酵を待つ。つくったのは6月。梅雨どきで最高気温は30度を超えない時期。現地は暑いので、そのまま放置すればいいようだが……。阿部カメラマンは冷蔵庫の側面、僕は冷蔵庫の上に置いた。放熱を利用する作戦。冬場につくるときの技としてネットに出ていた。真夏ならそのまま放置でいいはず。

Scene13

肉

そこからが悩みの時間。発酵が進んでも色がガラッと変わるわけではない。見た目ではわかりにくいのだ。僕はラップを開け、においをかぐが、まだ発酵臭がない。失敗か……。レシピによっては翌日にはできあがると書いてあるものも。ところが3日目、帰宅してラップを開けると……。

Scene14

肉

ニンニクのにおいが消え、つんと鼻腔(びこう)に届く発酵臭。このレシピでつくると、3日目に一気に完成に近づくらしい。ちょっとうれしい。これ以上、発酵が進むと、酸味が強くなりすぎる気がして、その夜に調理することにした。僕は1本をゆで、もう1本を炒めてみた。

Scene15

ネーム

豚の生肉を練ったものなので、念入りにゆで、しっかりと炒めた。タイやラオスでは、葉物野菜、5ミリ角に切ったショウガ、ライム、ピーナツ、パクチーなどがついてくる。それを葉に包んで食べる。僕はそのとき、口のなかで広がるライムの味が好きなのですが、日本ではやや手に入りにくい。でも、ネームは満足の味。アジア料理のレパートリーが増えた。

※再現してみた日:6月21日~6月24日

【次号予告】次回は沖縄のちきあぎ、そしててんぷらです。

タイ、ラオスの酸味が決め手のソーセージ 家でつくるアジアのおつまみ「ネーム」

2019年に連載された台湾の秘境温泉の旅が本になりました。

台湾の秘湯迷走旅(双葉文庫)

温泉大国の台湾。日本人観光客にも人気が高い有名温泉のほか、地元の人でにぎわうローカル温泉、河原の野渓温泉、冷泉など種類も豊か。さらに超のつくような秘湯が谷底や山奥に隠れるようにある。著者は、水先案内人である台湾在住の温泉通と、日本から同行したカメラマンとともに、車で超秘湯をめざすことに。ところがそれは想像以上に過酷な温泉旅だった……。台湾の秘湯を巡る男三人の迷走旅、果たしてどうなるのか。体験紀行とともに、温泉案内「台湾百迷湯」収録。

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