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〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

東京・墨田区のランドマークといえばなんといっても東京スカイツリー。その足元の押上、曳舟、向島かいわいには古い建物を利用したカフェや昔ながらの商店街など、下町の雰囲気が色濃く残っている。

向島三丁目交差点の一角にある「一軒家カフェikkA」も、築50年以上の一軒家をまるごと使った空間。1階はカフェ、2階はさまざまなイベントが開催できるギャラリースペースのほか、古書店「甘夏書店」とキャンドル専門店「オレンジろうそく」が入っている。

常連客から「ちえさん」の名で親しまれている「ikkA」の店主のとよしまちえさんは、紅茶好きが高じてお茶について独学し、紅茶専門店の修業を経て店を持とうと決意。アクセサリー作家などの活動もしていたことから、ギャラリーやイベントもできる広い空間を探した。

「だから一軒家がよくて、都内のいろんな場所を探しました。半年たって偶然見つかったのがこの向島の家。2階の広々とした和室がおばあちゃんちみたいで、ホッとできる空間だと思ってここにしました」

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

友人の力を借りて壁の漆喰(しっくい)塗りやタイル張りなどを行い、2011年1月にオープンにこぎつけた。カフェで扱うのは紅茶、中国茶、ハーブティー、フレーバーティー、薬膳茶など50種類以上のお茶。メニューには、ひとつひとつにていねいな解説が添えられており、どれにするか迷ってしまいそうだ。そんな時は、ちえさんに声を掛けて好みや気分などを伝えてみよう。きっとぴったりのお茶を用意してくれるはずだ。ちえさんが特におすすめしているのはケニア紅茶。香りが高く、豊かなコクとうまみが特徴だ。

「お客さんがきっかけで、ケニア紅茶を扱う会社とのつながりができました。ケニアは世界一の輸出量を誇る良質な紅茶の産地。2019年には現地にも行き、生産地や工場を見て回りました。その時に、アフリカ布を使った服やエプロン、雑貨を作る女性とのご縁もあり、毎年1回、ケニアのイベントを開いています」(ちえさん)

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

世界各地のお茶に精通しているちえさんは、店に本も置きたいという気持ちをかねて抱いていた。しかし、自分で本を揃(そろ)えるイメージは湧かなかったという。

「ブックカフェにはよく行っていましたし、お茶と本は仲良しだから、ぜひこのお店にも置きたいと思っていました。でも、自分じゃない誰かに任せたいと思っていたんです」

「うちの2階に来ませんか?」

そんな時に知り合ったのが、現在2階で「甘夏書店」を営む店主の大山朱実さんだ。大山さんは谷中・根津・千駄木エリアの書店街「不忍ブックストリート」の恒例イベント「一箱古本市」に参加したのをきっかけに、個人書店の面白さに目覚めた。2011年からは曳舟の「鳩(はと)の街通り商店街」のシェアショップに間借りして、本や雑貨を扱う店を営んでいた。

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

「本や絵本が昔から好きで、書店や図書館で働いてみたいと思ったこともありましたが、なかなかそういうお仕事にはたどり着けませんでした。でも、一箱古本市で『自分でもできるんだ』と思えるように。お客さんから直接本の感想をいただいたり、コミュニケーションを取ったり、自分で古本を開拓したりするのが面白くて、本屋に惹(ひ)かれていきました」(大山さん)

ちえさんは、鳩の街通り商店街のイベントに参加した時に大山さんと知り合った。「ikkA」の器と本のイベントに大山さんが参加するなどで交流が深まった頃、大山さんが間借りするシェアショップの閉店が決定。そこで、ちえさんは大山さんに「うちの2階に来ませんか?」と声をかけた。

「うちの2階は意外と広くて、もっと有効に使えないかなと思っていた時でした。本のイベントをよくやっている大山さんが来てくれれば、もっと一緒にいろんなことができるんじゃないかと思ったんです」(ちえさん)

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

こうして2014年4月に、「甘夏書店」が2階に入居した。6畳の空間に本棚を置き、押し入れも本棚として活用。以前は絵本が中心だったが、向島が森鷗外や幸田露伴、永井荷風も暮らした土地ということもあり、ゆかりの文豪の著書や関連書籍も集めるように。他にも建築関係、小説や詩集、ZINE(編注:ジン=個人で作る雑誌)やリトルプレスなど、幅広いラインナップをそろえる。

「一般書店ではあまり見かけないZINEやリトルプレスには面白いものがたくさんあるので、少しずつ扱いを増やしています。製作者とのご縁も広がりました」(大山さん)

いつまでも居たくなる“パラダイス”

2階は広々とした畳敷きで、思わずまったりしたくなる。客が時間を忘れて本探しに没頭することもしばしばだという。

「お客さんに『甘夏書店さんはパラダイス!』と言われてうれしかったですね。本好きの方がいらっしゃったら、店にある本やZINEについていろいろとお話ししたくなっちゃって。もちろん静かに見たい方には、お声がけしません。日常のすき間に本を読むゆとりを作ってもらい、思いがけない本との出合いを楽しんでもらいたいですね」(大山さん)

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

2階に本屋ができたことで、カフェにも相乗効果が表れるようになった。

「2階で本を買って、1階でゆっくりされる方が確実に増えました。あと、2階のギャラリーを使った『お座敷まるごとブックマルシェ』も定番イベントに。手ぬぐいのイベントなども大山さんに企画してもらっています」(ちえさん)

長引くコロナ禍の影響で、イベントが行いにくい状況が続いているが、ちえさんと大山さんは通販サイトを立ち上げるなど、模索しながら営業を続けている。

「私がオープン前にイメージしていた“おばあちゃんちの温かい空間”は作れたかな、と思っています。通販はコロナがいいきっかけになりました。今もできることをやるのみ。ここに来たみなさんが元気になって帰ってくださることが、一番のよろこびです」(ちえさん)

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」
「ikkA」のとよしまちえさん(左)と、「甘夏書店」の大山朱実さん

大切な一冊

ひとまねこざる』(文・絵/H.A.レイ、訳/光吉夏弥)
十数カ国語に翻訳され、世界中で愛されている「ひとまねこざる(原題: Curious George)」シリーズの2作目。動物園に暮らす、好奇心旺盛なジョージ。ある日、外の様子が気になって街に飛び出してしまう。ジョージの行く先で起こる愉快な出来事を描いた名作絵本。

〈163〉スカイツリーのふもとで世界のお茶を 「一軒家カフェikkA」&「甘夏書店」

「小学校低学年の時の教科書に載っていたのが、『ひとまねこざる』でした。高校生になった頃、子供時代に好きだった絵本を買うようになったのですが、もちろんこれも買いました。私にとっては絵本の面白さに気付いたきっかけの一冊といえます。とにかく絵が生き生きとしていて、かわいいですよね。ボロボロになるまで読み、自分の子どもに読み聞かせました。絵本は昔を振り返ることもできるし、子や孫に受け継ぐこともできる。この絵本を手に取ると、いつもそんな思いを新たにさせてもらえます」(大山さん)


フォトギャラリーへ(下の写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

一軒家カフェikkA
甘夏書店
東京都墨田区向島3-6-5

「book cafe」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)

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