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小川フミオのモーターカー
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スポーツカーの見本のようなフロントエンジン・後輪駆動 ポルシェ944S2

ターボを除けばシリーズ最強のS2モデル

ポルシェのスポーツカーといえば、リアエンジンかミドエンジンが通り相場。でも、1970年代から80年代にかけては、フロントエンジンと後輪駆動の組み合わせが多かった。ここで取り上げる「944(S2)」もその1台。今の目から見ても、理知的なデザインが、魅力的だと思う。

フロントエンジンと後輪駆動のポルシェといえば、最初は75年に登場した「924」だ。当初はフォルクスワーゲンの依頼で開発したモデルだったものの、計画がキャンセルとなったので、ポルシェのブランドで発売したのが最初である。

このデザインのステアリングホイールは後継「968」と同様
このデザインのステアリングホイールは後継「968」と同様

82年の944は、ポルシェが当初から自社ブランドで発売すべく開発しただけに、シャシーもエンジンも、(スタイリングコンセプトは似ているものの)924とは別もの。ラインアップとしては、911と924の間に位置し、ベースモデルは924のトップモデルより安かった。

ポルシェでは、新しい市場を切り開くために、77年にV型8気筒のユニークなスタイリングのGT「928」を発表していた。主市場の北米ではユーザーが快適志向に移行していくと読んだポルシェでは、フロントエンジンでリアシートも使えるスポーツカーのラインアップを拡充していくことを選んだからだ。

短いストロークで小気味よくシフトできる変速レバー
短いストロークで小気味よくシフトできる変速レバー

ただし、924も928も、当初はポルシェに期待されるキレのよさが足りなかった。そこでポルシェではエンジンをDOHC化したり、ターボチャージャーを装着したりと、高性能化をめざすことに。

そのなかで登場した944は、ブリスターフェンダーという、パネルごとふくらませたフェンダーを持つスタイルを含め、新しい時代のポルシェのスポーツカーという印象を強く与えてくれた。

3リッターと巨大ともいえる排気量の4気筒搭載
3リッターと巨大ともいえる排気量の4気筒搭載

86年に追加された「944S」で4気筒エンジンはDOHC化(さきにDOHC化した928のV8を半分にして使った)。88年の「944S2」は、そのエンジンの排気量を従来の2.5リッターから3リッターへと拡大して、出力をさらに上げたのが特徴だ。

たしかにパワフルだった。大きなカーブや直線では、大きく盛り上げるトルクによる力強い走りが味わえた。サスペンションシステムは硬すぎず、適度に快適。ブレーキは剛性が高く、ステアリングホイールは重めだが、しっかりとした操舵(そうだ)力を持っていた。

リアの「S2」の字は当時カッコよかった
リアの「S2」の字は当時カッコよかった

スポーツカーで大事なマニュアル変速機のシフトフィールをとっても、カチッカチッとゲートに入る正確性と剛性感がすばらしく、ポルシェ以外でほとんど味わえないフィールなのだ。

4気筒エンジンをフロントに搭載して後輪を駆動するスポーツカーとしては、944のあと、ポルシェは92年に「968」を発表。カブリオレやクラブスポーツなど、エレガンスと同時にスポーティーな志向の顧客も満足させるラインアップ構成も引き継いだ。

ただし収益性は高くなく、製造コストや人件費の高さも足を引っ張り、やがて90年代にポルシェは経営危機に陥るのだ。業績が上向くようになるのは、ベンデリン・ビーデキングという新しいCEOを迎え、トヨタから学んだリーン生産方式などを実行した93年以降である。2000年代後半には、会社の業績は大きく向上している。

広報写真なのになぜかトヨタディーラーの前で
広報写真なのになぜかトヨタディーラーの前で

この時点で、ポルシェからフロントエンジンのスポーツカーはなくなった。ポルシェのスポーツカーを代表するのは911で、その下にミドシップの「ボクスター」(1996年)が配され、そしてやがてドル箱になるSUV「カイエン」(2002年)が送り出された。

もちろん、ポルシェがつぶれてしまっては元も子もなかったので、ビーデキングCEOの選択は、あの時点では正しかったのだろう。EV化が進む今だけに、あらたに4気筒のスポーツカーを出す計画はなさそうだ。それゆえ、余計、スポーツカーの見本のような944シリーズに、懐かしさを覚えるのだ。

【スペックス】
車名 ポルシェ944S2
全長×全幅×全高 4300x1735x1290mm
2990cc直列4気筒 後輪駆動
最高出力 211ps@5800rpm
最大トルク 28.6kgm@4000rpm

(写真=Porsche AG提供)

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