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ニッポン銭湯風土記
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京都駅から徒歩15分、庶民の京都へタイムワープ 東寺道・日の出湯

1928年に建てられた日の出湯。京都最大級の町家型銭湯建築=京都市南区

旅が好きだからといって、いつも旅ばかりしているわけにはいかない。多くの人は、人生の時間の大半を地元での地道な日常生活に費やしているはず。私もその一人だ。が、少し異なるのは、夕方近くにはほぼ毎日、その地域で昔から続く銭湯(一般公衆浴場)ののれんをくぐることだろうか。この習慣は地元でも旅先でも変わらない。昔ながらの銭湯の客は、地域の常連さんがほとんど。近場であれ旅先であれ、知らない人たちのコミュニティーへよそ者として、しかも裸でお邪魔することは、けっこうな非日常体験であり、ひとつの旅なのだ。

京都駅から歩いて行ける、もう一つの京都

日本を代表する観光都市の玄関口はいつも慌ただしい。行き交う人々はみな一刻も早くこの雑踏を抜け出し、「しっとりとした情緒と風情に包まれる京都」へ急ごうとする。でも実際のところ、このターミナルと世界遺産の間には、150万人が暮らす「庶民の京都」が何食わぬ顔をして広がっている。生きた街としての京都はむしろそちらが本体だろう。そのことを最も手軽に体感できる場所の一つが、京都駅の新幹線口から歩いて15分たらず、約1kmの場所にある銭湯・日の出湯とそのかいわいだ。

京都駅は市街地を南北に分断している。北側を表玄関とすれば、新幹線口である南の八条口は裏玄関。再開発が遅れたぶん、駅前のホテル群とイオンモールの脇をすり抜けたとたんに“庶民の京都”が顔を出す。その南の境界線と言えそうなのが、八条通と九条通の中間を東西に走る東寺道だ。東寺道はその名の通り、まっすぐ西へ行けば世界遺産の東寺に突き当たる。日の出湯はその少し手前の路地に隠れている。

「けいらん」「衣笠丼」……京都らしい大衆食堂

大衆食堂「殿田」と東寺道
大衆食堂「殿田」と東寺道

駅から徒歩4分、東寺道に出た角にある「殿田」はいかにも「普通の」京都の大衆食堂だ。駅ナカのレストラン街もいいが、ここでは「のっぺい」「けいらん」「衣笠丼」といった京都らしい麺類・丼物が庶民価格で食べられる。私は迷った末に天とじ丼を注文することが多いが、玉子のトロふわ具合にはいつも「これよ、これなのよ!」と感服させられる。

「殿田」の天とじ丼。11:30ごろ~17:30、無休(臨時休業あり)
「殿田」の天とじ丼。11:30ごろ~17:30、無休(臨時休業あり)

一見異質なものが背中合わせ、京の生活空間のカオス

東寺道を西へ。イオンモール裏側の無表情な壁を過ぎ、油小路通(国道1号)を渡るとそこはもう「庶民の京都」エリアとなる。信号の脇に伏見稲荷大社の御旅所がある。鳥居前をそのまま進むとすぐに日の出湯に着いてしまうけど、ちょっと寄り道していこう。

伏見稲荷大社御旅所の鳥居
伏見稲荷大社御旅所の鳥居

御旅所は春の稲荷祭ではにぎやかにみこしが集結するが、それ以外のほとんどの期間は木立が静かに次の春を待つだけの無の空間、エアポケットだ。境内を北に抜けると何の変哲もない住宅地、だけどよそ者にとっては不思議と味わい深い。建て替えられた家々に交じって古めかしい銅張りの家が庭木を茂らせ、辻々に地蔵がまつられて花が添えられている。私は観光客だらけの有名な神社仏閣よりも、こういった何げない街角に「生きた京都」を感じる。

京都駅から徒歩15分、庶民の京都へタイムワープ 東寺道・日の出湯
ほこら(左)の中のお地蔵さんは石に顔が描かれ(右)、化粧地蔵と呼ばれる
狭い路地に踏み込めば郷愁を誘う風景が隠れている
狭い路地に踏み込めば郷愁を誘う風景が隠れている

大きなかき氷が人気の和菓子屋さんの2軒隣に突如として、京都唯一のストリップ劇場とされる「DX東寺劇場」が現れる。周囲の街並みに歓楽的要素はゼロ。なぜここに?  近所の人に聞いてみても、「さあ……まあ、昔からあるからね」との答え。でもこういった市井のカオスもまた京都という街の不思議な一側面だ。

DX東寺劇場。歴史を感じさせる唐破風(からはふ)のついた建物
DX東寺劇場。歴史を感じさせる唐破風(からはふ)のついた建物

世界遺産の東寺から日の出湯へ

ストリップ劇場からほんの1分のところに、世界遺産・東寺の東門(慶賀門)がある。

東寺の東門(慶賀門)
東寺の東門(慶賀門)

東寺は五重塔が有名だが、国宝の宝庫とも言われる広い境内はとても見応えがある。さまざまに紹介されているのでここでは触れないが、未訪の方は一度は参拝しておく価値があるだろう。

世界遺産・東寺の風景。広い境内は別世界
世界遺産・東寺の風景。広い境内は別世界

東門から東寺道を少し戻ると、地蔵のほこらがある路地の入り口に「日の出湯」の看板が出ている。その路地はちょっとしたタイムトンネル。参道、あるいは迷路のようにも感じられる。日が落ちてからは特にその思いが強くなる。

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