&Travel

にっぽんの逸品を訪ねて
連載をフォローする

「祈りの回廊」と軍艦島ツアー 心に残る二つの体験

少し大げさかもしれませんが、旅先で価値観や人生観が変わるような体験をすることがあります。その場に身を置くことでしか感じられない「何か」に心を動かされる経験。それが旅の醍醐(だいご)味かもしれません。連載最終回となる今回は、過去4年の連載の中から大きく心が動かされた二つの体験をご紹介します。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

奈良の長谷寺で1000年続く朝の勤行

コロナ禍で何となく元気が出ないとき、懐かしく思い出すのが長谷寺(奈良県桜井市)の朝の勤行(ごんぎょう)体験です。僧侶とともに本堂で読経するこの体験は「祈りの回廊」とよばれます。

「一心不乱に何かをする」ということが、これほどすがすがしく気持ちを前向きにするのかと驚きました。

仁王門
長谷寺の風格ある仁王門

長谷寺は、約1300年の歴史を持つ奈良を代表する名刹(めいさつ)の一つです。ボタンやサクラ、アジサイ、キンモクセイなど、四季を通じて花々が美しいことから「花の御寺」ともよばれます。

「登廊」
本堂へと続く「登廊(のぼりろう)」

仁王門から入山し、初瀬山の中腹にある本堂を目指します。山肌に続く「登廊(のぼりろう)」は399段。独特の形の「長谷型灯籠(とうろう)」が、華やかさと風情を添えています。

本堂
断崖絶壁に懸(かけ)造りされた本堂。国宝に指定されている

登りきった本堂付近では、僧侶が掃除をしていました。規則正しいほうきの音だけが響く静けさと朝の冷たい空気が、身を清めてくれるようでした。

山並み
外舞台の向こうに朝霧がただよう山並みが見えます

受け付けをして待つ間、本堂から見る美しい景色も胸を打ちます。しだいに明るくなる山ぎわと山あいをゆっくりと流れる朝霧。鳥たちの楽しげな鳴き声も聞こえてきます。

朝の勤行
厳かに朝の勤行が始まります。毎朝6時30分(冬季は7時)から。新型コロナウイルス感染対策をして実施中。参拝料500円

十数人の僧侶が本堂に入場すると、空気が凜(りん)と引き締まります。間もなく、ご本尊の十一面観世音菩薩(ぼさつ)像を前に読経が始まりました。

長谷寺の朝の勤行は、まさに「全身全霊」を込めた読経です。おなかの底から声を出し、一言一句を大切に唱えます。

読経
お堂が震えるほどの読経の声が響きます

響き渡る読経の声と、打ち鳴らす大太鼓や拍子木の音。僧たちのまねをして懸命にお経を唱えると、余計なことは一切考えられず、一心不乱の境地に。いつしかすがすがしい高揚感に包まれます。

「お経を唱えるのは私たち僧侶にとって普通のことですが、それを、毎朝、一生懸命にすることが大切なのです」と話してくださった僧侶の言葉が忘れられません。「一生懸命」は、普通を普通ではないものにするのでしょう。

遥拝
外舞台での遥拝(ようはい)

読経の後は、外舞台から五方向に向かって遥拝(ようはい)を行います。朝のあいさつをして「祈りの回廊」は終了しました。

ご本尊
特別拝観時にはご本尊に間近で参拝できます

長谷寺のご本尊は高さ約10メートルあり、木造としては日本最大級の十一面観世音菩薩像です。春と秋の年2回行われる特別拝観時には、ご本尊のお御足(みあし)に直接触れて、間近でお参りできます。

■紹介記事はこちら
1000年続く祈りの時間 長谷寺の朝の勤行体験 奈良県桜井市

近代化へのエネルギーを体感する「軍艦島ツアー」

軍艦島とよばれる長崎市・端島(はしま)を訪れたツアーも忘れられない体験の一つです。時代の移り変わりを目の当たりにして、文明や人の暮らしについて考えさせられる貴重な時間でした。

長崎港の沖合に浮かぶ端島(画像提供:長崎県観光連盟)
長崎港の沖合に浮かぶ端島(画像提供:長崎県観光連盟)

軍艦「土佐」に似ていたことから軍艦島とよばれる端島は、明治から昭和にかけて海底炭鉱で繁栄しました。閉山とともに無人になり島は荒廃しましたが、近代化の歴史を伝える貴重な遺跡として、2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産としてユネスコの世界遺産に登録されています。

クルーズ船
軍艦島コンシェルジュのクルーズ船「JUPITER(ジュピター)」

何社か軍艦島クルーズを実施していますが、私が利用したのは軍艦島コンシェルジュの軍艦島上陸・周遊プラン「優先(ミュージアム付き)」でした。「軍艦島デジタルミュージアム」の入館券が付き、クルーズ船へ優先乗船できます。

クルーズの予・復習に立ち寄りたい「軍艦島デジタルミュージアム」。坑道体験コーナーも(画像提供:軍艦島デジタルミュージアム)
クルーズの予・復習に立ち寄りたい「軍艦島デジタルミュージアム」。坑道体験コーナーも(画像提供:軍艦島デジタルミュージアム)

クルーズの前にはぜひ、軍艦島デジタルミュージアムに立ち寄りましょう。軍艦島の歴史や生活を知ることができて、ツアーを何倍も楽しめます。島内の立ち入り禁止エリアをVR(バーチャルリアリティー)で体験するコーナーや、海底の石炭採掘現場に向かう坑道体験コーナーもあります。

艦船のように見える軍艦島(画像提供:長崎県観光連盟)
艦船のように見える軍艦島(画像提供:長崎県観光連盟)

出航から約35分すると軍艦島が見えてきます。「小さい」というのが第一印象。名前の通り、軍艦一隻ほどの大きさに見えます。

近づくにつれ、あふれんばかりの高層アパートが並んでいることに目を見張ります。周囲約1.2キロメートルの島に、最盛期には5000人以上が暮らし、東京都をはるかに超える人口密度だったそうです。

NEXT PAGEいよいよ上陸 繁栄の歴史が目の前に

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら