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アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味

片山正通さん/野呂美帆撮影

買う行為には失敗もつきもの。失敗を通じて体感したこと

――足を運んで“見る”ことと、それを買って“所有すること”はそこまで大きく違うものですか? 

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味

片山 「失敗することがある」というのがかなり大きな、そして重要な違いだと思います。僕の音楽好きの始まりは、まだ子どもだった頃、年の離れた親戚のお兄ちゃんの影響で世界のいろんな音楽を聞かされたこと。当然データ配信なんてありませんから、吟味して、吟味してアナログレコードを1枚ずつ買いました。

子どもなので、ひと夏かけてちょっとしたお手伝い程度のアルバイトをして、3~4千円のアナログレコードが1枚やっと買える。収録されているトラックを何度も繰り返し聞いて、ライナーノーツを読み込んで、ジャケットも穴が開くほどに眺めて、その対価に見合うだけのアルバムだったか?を考える。そういうことをよくやっていたんです。

対価以上の喜びを得られたと思うものもあれば「失敗したなあ!」と思うものもあるわけで。なぜ失敗したのか、音楽はもちろん、ジャケットのデザインなども含めて子どもなりに分析していましたね。翻せば、“買ってもらう”ことには価格だけの価値を提供する責任があるということだと、今は思います。

現在のように、曲の頭だけをささっと流し聞きするだけではない真剣さが出てくるのは、“所有する”ことの意味ではないでしょうか。金額の多寡に関係なく、自分が投資して、かつ楽しむことができたものは、少しずつわかるようになるし、さらに楽しくもなる。僕はそうやって自分の世界を広げてきたのだと思います。

――買うことの成功も失敗も、デザインに生きてくるんですね。

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味

片山 デザインそのものに直結するというよりは、クライアントとのコミュニケーションに大いに役立っています。僕らの仕事は「デザイン」ですが、それは、クライアントとセッションしながらものを考えてつくっていく行為。クライアントがやりたいことをよく聞く、あるいは話しながらやりたい方向性を探していくといった膨大なコミュニケーションが必要なんです。プロジェクトを成功に導くためにどうするべきかを話すなかで、自分の知識や造形力をお貸しして、クライアントの方に託す感覚です。

コミュニケーションのなかで「こういう空間でこういうものを買えたら面白い」あるいは「これを買ってみたけれどちょっと時代遅れだったかも」といった、実際の買い物で得てきた感覚は、確実に生きていると思います。

僕はマーケティングのビジネス用語は全然知らないけれど、「これは面白い」「これは古くなってしまう」といった生の感覚でクライアントと話ができることは、自分ならではの強みだと思っています。

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