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アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味

片山正通さん/野呂美帆撮影

価値観を覆し、世界を押し広げてくれるアートへの投資

――片山さんはアートも相当数所有されていますよね。アートを買うこと、所有することの面白みとは?

片山 自分の固定観念を覆してくれるものには、強烈な興味を抱いて知りたくなる。服やCDもそうでしたが、ここしばらくはコンセプチュアル・アートでそれを感じることがとても多いです。若い頃から買い物を続けてきたわけで、つまりは物質に対しての信頼があったのだと思うのですが、コンセプチュアル・アートを知ると、全然そうじゃないかも……!という衝撃があるんですよね。

コレクションしているアーティストの一人、ライアン・ガンダーの作品は、“概念”が作品になっている感じ。たとえば《Alchemy Box》は、厳重に封がされた真っ黒の箱。付属のキャプションには、その中に入っているもののリストが書かれています。本当にリストの通りに入っているのかどうかわからないし、開けてしまえば作品は価値を失ってしまう。入ってるのかな、入っていないのかな、開けてしまおうかな……。さまざまに考えさせられる、その時間や妄想への対価なのかもしれない。

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味
英国人アーティスト、ライアン・ガンダーによる作品。写真左手の黒い箱が《Alchemy Box No.10.1 – Memorandum JB CH AG (Brother Box)》。その下のキャプションには箱の中身が記載されている。もちろんは箱は封をしたまま

オフィスの階段にディスプレーしている《The danger in visualising your own end 2010》は、作品を買うと、これをつくるための権利書と仕様書がやってくるんですよ。仕様書に基づいて自分でネオンサインの業者に発注して(笑)これをつくり、そして最後に割る。そこまで仕様に書かれているんですよ! こういう作品に出会うと、頭をハンマーでたたかれたような気分になるんです。モノの価値ってなんだろうと考えさせられる。

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味
同じくライアン・ガンダーの作品《The danger in visualising your own end 2010》。「Flashes of beautiful thinking」という文字がかたどられたネオン管を割って完成。下には破損した材料が散らばる

ほかに、ミーティングルームの壁の作品は、イギリスのジョナサン・モンクによるもの。ものすごいシャレの効いた作品をつくる面白いアーティストで、自分の好きな巨匠アーティストにパラサイトするんですよ。この《Wool Piece II》は、著名なアーティストのクリストファー・ウールの作品のパロディー! ステンシルがよく知られるウールの作品を模して、ウール生地でつくっている(笑)。なんで尊敬する人のまねをしちゃいけないの?って真顔で聞いてくるような作品です。

コンセプチュアル・アートには、そもそもの大前提を疑うようなところがあって、それはそのままデザインの考え方にも生きているように思います。

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味
クリストファー・ウールの作品を模したジョナサン・モンク《Wool Piece II》。「FUCK EM IF THEY CANT TAKE A JOKE」は「笑えないなんてダサイ!」という意味のスラング

――片山さんのクライアントは、“デザイン”に対して対価を払う。考えてみれば、デザインというものも実体があるような、ないようなものだとも思います。デザインを買ってもらう立場として気をつけていることはありますか?

片山 デザインって、ともすると「イメージで」とか「インスピレーションが」とかいった言葉で片づけてしまいがち。でも実際はそんなことはなくて、お客さんにとって対価に見合うものになっているかどうかは、かなりシビアに追求しています。コミュニケーションを密に行うこともそのひとつだし、僕らでいうと模型でのコミュニケーションも特徴的でしょうね。

アートを「見る」と「買う」では何が違うのか? 片山正通が語る所有の意味

オフィスに模型製作専門のスタッフがいて、かなり精密な模型をつくるんです。空間の仕上がりは、特に専門以外の人にとってはなかなかわかりづらいもの。なのでプレゼンテーションの際は、模型で伝えるんです。それをデザイン段階から何度も見てもらって、単純に好きか嫌いかで判断してもらう。その好き嫌いの理由をコミュニケーションで拾い上げて、デザインに反映させていく感じです。

本当ならば服を試着するように、実際の空間を体験してもらえたらいいけれど、そうはいかない(笑)。だから極力それに近い感覚を得られるようにしているつもりです。買い物をたくさんしてきた分、買う側の気持ちもわかる、といったところなのかもしれません。

(文=阿久根佐和子 撮影=野呂美帆)

PROFILE
片山正通

かたやま・まさみち インテリアデザイナー 、Wonderwall® 代表、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授。代表作に、ユニクロ グローバル旗艦店(NY、パリ、銀座など)、INTERSECT BY LEXUS(青山、ドバイ、NY)、外務省主導の海外拠点事業 JAPAN HOUSE LONDON、2020年開業の虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー(商業施設環境/ARCH)など。2020年、オランダのデザイン誌『FRAME』主催の「FRAME AWARDS 2020」で2019年のフィリップ・スタルクに続きLifetime Achievement Awardを受賞。www.wonder-wall.com

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