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篠原ともえ アイデアのありか
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孤高の観音様、御朱印、墨づくり……。感性が刺激される、とっておきの奈良旅へ

ものづくりを続けていく中で「旅」は大事なインスピレーション源。その場所で出会った人や自然、さまざまな体験が時を経て形となることも少なくありません。なかなか自由に出掛けられない昨今ではありますが、先日久しぶりにお仕事で地方へお邪魔しました。今回は私の大好きな場所、古都・奈良の旅のお話とともに、そこで見つけたアイデアのありかをご紹介したいと思います。

初めて奈良を訪れたのは、中学生の修学旅行。京都・奈良の名所を巡るいわゆる定番コースだったのですが、その中でもやはり東大寺はハイライトで、建物を含め大仏様の圧巻のたたずまいにとても驚いたことを覚えています。その感動が時を経た今もなお私の胸に響き、奈良を訪れる度に参拝させていただく大切な場所となりました。一年を通じ、さまざまな歴史ある行事が楽しめ、また、周囲の自然からは四季の移ろいを感じることができるのも魅力の一つです。

東大寺にて、デザインした御朱印と
東大寺にて、デザインした御朱印と

青空に映える大仏殿は圧倒的な存在感。幾度となく通う中で素敵なご縁もあり、数年前、東大寺の御朱印帳をデザインさせていただきました。御朱印には、墨でそのお寺や神社の名称、または、仏様や神様のお名前が書かれ、文字通り印章が押されます。また、参拝した日付も記され、その時々の思い出を呼び起こす大切な記録にもなるので、私は訪れるたびに記していただくようにしています。

東大寺ではさまざまな年中行事も催されていますが、その中でも毎年3月に行われる「修二会(しゅにえ=お水取り)」は、1250有余年もの間、一度も途絶えることなく受け継がれてきた祭事です。今年はコロナ禍で多くの制限を余儀なくされたそうですが、無事に行われ、その歴史をつなぎました。

天災や疫病、反乱などを鎮め、天下泰安や五穀豊穣(ほうじょう)といった人々の幸せを願うために続けられてきた儀式。千年以上も前にそうした祈りが粛々とこの奈良の地で捧げられ、現代の私たちもそれを継承し、同じ思いを重ねながら絶えず守り続けてきたことは、純粋に感動を覚えます。境内にある東大寺ミュージアムでは、そのような奈良や東大寺のさまざまな歴史を学ぶこともできますよ。

2020年秋、大仏池にて
2020年秋、大仏池にて

もう一つとっておきの場所としてご紹介したいのは、東大寺裏の大仏池。ここでは四季折々の景色を楽しむことができ、池には周りの木々や空の移ろいが鏡のように映り込み、いつ訪れても幻想的な空間が広がっています。昨年秋に立ち寄った際は一面紅葉で、夕暮れ時も美しく、時間を忘れてしまいました。芝をはむ鹿たちと時折目が合うのもいとおしく、癒やしの場でもあります。東大寺は御堂内外、何度訪れても毎回違った感動を与えてくれる唯一無二の場所です。

奈良市内から少し足をのばすと、もう一つ、私のお気に入りの場所にたどり着きます。それは、桜井市にある聖林寺(しょうりんじ)。お寺の境内からは、三輪山をはじめ大和盆地の古墳群や山の辺の道などを見渡せ、静かな時間を味わうことができます。

聖林寺の倉本ご住職と
聖林寺の倉本ご住職と

今年6月から東京国立博物館でこの聖林寺の国宝、十一面観音様を拝観できることでも話題になっていますが、私も長年こちらの仏像様のファンです。日本で最初の国宝の一つとして選ばれた孤高の美しさを誇る十一面観音像は、拝観する度に「お目にかかれて光栄……!」という気持ちになるのです。

参拝と共に聖林寺ご住職の倉本明佳さんに奈良やお寺の歴史についてお話を伺うのも楽しみの一つ。聖林寺では今、新しい観音堂建設のためクラウドファンディングも実施されています。聖林寺のように規模はけして大きくなくとも、たくましくその歴史を守られているお寺はたくさんあると思います。私も少しでもお役に立てたらと微力ながら参加させていただきました。この美しい御堂がこの先もずっと残り続けることを切に願っています。

孤高の観音様、御朱印、墨づくり……。感性が刺激される、とっておきの奈良旅へ
奈良の墨「古梅園」

奈良は墨の街としても歴史があります。前述の御朱印でも墨にはなじみがありますが、私自身も墨絵や版画をたしなんでいることもあり、その世界にすっかり魅了されています。そんな思いを満たしてくれる場所が、創業1577年という歴史を誇る「古梅園」さんです。こちらでは11~4月、予約をすれば繊細な墨製造の過程を見学できるほか、オリジナルの墨も作ることができるんですよ。

私も以前体験させていただいたのですが、墨づくりの過程でぎゅっと握ることにより、自分の手形が残る世界に一つの“にぎり墨”を手に入れることができます。その体験自体がとても特別で、そうして作った私だけのにぎり墨は、写経やイラストなどここぞという時に大切に使っています。

私の墨コレクション。にぎり墨(左上)、藍色の墨(中央上)、紫色の墨(中央下)
私の墨コレクション。にぎり墨(左上)、藍色の墨(中央上)、紫色の墨(中央下)

これまで墨は黒いものだと思い込んでいたのですが、古梅園さんを訪れ、実はほのかな紫や茶色、藍がかった墨もあることを知りました。モノクロの中にも奥深い色の世界があるなんて目からうろこでしたが、とても神秘的ですよね。墨の世界、その魅力に一層引き込まれるとともに、この有色の墨で今度は何を表現してみようと、また創作意欲をかき立てられました。

このように旅を通じ、まだ知らない歴史や文化に触れることで、それが新たな興味となって作品につながってゆくことがあります。いつもと違った環境に身を置くだけでも、感性が大きく刺激されますよね。今はまだ自由に旅することはできませんが、だからこそ、一つ一つの経験がとても貴重で、そのインプットがこうした状況下では特に、大切な創造の糧になることを実感しています。自由な場所の行き来が再開されたら、これまで以上にその土地土地でいろんなことを吸収したいな。今は旅の思い出を振り返りながら、新たなインスピレーションとの出会いに期待する日々です。

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