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カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん

写真:山本倫子

3週にわたってスパイス料理研究家・印度カリー子さんのお弁当レシピを紹介してきました。今週は、カリー子さんへのインタビュー。「カレーに人生を変えてもらった」と語る彼女の深いスパイス愛をたっぷりとお届けします。

今年の春、東京大学大学院を修了し、スパイス料理研究家として、またスパイス専門店の代表取締役として、ますますスパイスにどっぷりの日々を送っている印度カリー子さん。そんな彼女の原点は、お姉さんのために作った一皿のカレーだ。

大学1年生のあるとき、姉の好きなスパイスカレーを作ってみたらめちゃめちゃおいしくて簡単だったんです。それまでは祖母と同居してたので和食しか作れなかったんですよ。結局、煮物とかばっかり作って。でも、飽きるんですよね。そういうときにちょうどスパイスカレーに出会ったのも大きかったです。和食と違った味わいがあっておいしいし、作ってみたら、たまねぎ、トマト、にんにく、しょうが、お肉と少しのスパイスを合わせるだけでカレーになる、すごく単純な構造なのだと知りました。

そのときの感動をたくさんの人に味わってもらいたくて、1年生の終わりごろ、SNSやブログで、カレーやスパイスの魅力を発信し始めた。

確実に広がるっていう自信があったし、スパイスカレーってめちゃめちゃ簡単なんですよ。あとは伝え方の問題。若い女の子が自炊で作ってるっていうところをちゃんと伝えていけば、料理が好きな人や興味をもった人が、スムーズに「始めてみよう」と感じられると思ったんです。

自分が学生のうちに発信することで、いろんな人に「スパイスカレーってもしかしたら簡単なんじゃない?」「学生でも毎日作ってるんだったら、私にもできるんじゃない?」と思ってほしかった。なので、真剣に「10代のうちに広めなければいけない」「学生のうちにやらなければ」という使命感があったんです。

本名ではなく「印度カリー子」と名乗るのは、少しでも興味をもって覚えてもらいたいから。東大生、女子学生という肩書や年齢といった“インパクトワード”も、情報を届ける拡声機となった。“ハタチ”もインパクトがあったかもしれません、と分析する冷静な一面は、彼女がどれほどカレーに真剣なのかを物語っている。

「印度カリー子」はスパイスカレーを伝えるための媒体なんです。スパイスカレーを広めるにあたって、初心者の目線に立って「これがベストだよ」って伝えるためには、常に伝え方を客観視しないといけない。それができないと、「自分がこのカレーが好きだから作ってください」というエゴになってしまう。自分の本名を置いて印度カリー子っていう名前をつけたことによって、ある意味、自然と客観視できるようになった。それはすごい良いことだったと思っています。

でも、はっきり言っておかしなやつですよね(笑)。大学1、2年生の19歳の女の子が、周りがみんなサークルに入って、お酒飲んでワイワイして、髪の毛を染めてっていうときに「印度カリー子」って言って家でカレーを作ってる。それは本当に同窓会のときに心配されました。

カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん

家には寝室にも洗面所にも、研究用のレシピ本が山ほど積まれているという。「愛によって動かされている」と語るほどスパイス一筋のカリー子さんだが、意外にも、これほど夢中になれるものと出会ったのは初めてだった、と振り返る。

それまでの私はすごく飽きっぽくって、興味をもっても1週間と続かない。将来の夢もないし、希望もないし、学校でいい成績を取ることぐらいしか興味がない、もう本当につまんない、魅力的じゃない人間でした。

バイトも疲れるから嫌だし、サークルはバドミントンサークルに入ったんですけど、1カ月でやめたんですよ。バドミントンはしたかったけど、練習の後に必ず飲み会がセットでついていたんですね。私はお酒はそんなに好きじゃなかった。女の子が酔って男の子に頼ってる姿を見るの、本当に嫌だったんですよ。こう言うとなんかプライドが高いみたいな感じですけど(苦笑)、どうして自分自身のこと管理できないんだろう?っていうタイプだったので、飲み会に1カ月間出ずにいたら、さすがに先輩に「なんで来ないの?」って言われて、やめざるを得ない状況になりました。

カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん

でも、本当は友達が欲しかったし、サークルにも入りたかった。飲み会に行きたくないって言ってたけど、本当はみんなの中で盛り上がりたかったんです。でもそれが自分の性格的にできないっていうことも知っていて、いわゆる大学生活が全然楽しめてなくて、本当にみんながうらやましかった。キラキラしてるし、かわいいし。それがなんで自分にはないんだろう、しかも勉強だけしてプライドだけ高くなって、それで満足して……って。そんな自分を客観視したら、ただの嫌な人間みたいな感じで。つらかったんですよね、ずっと。

どん底の自己評価を変えてくれたのは、ほかでもない、スパイスとの出会いだ。

それこそダイヤモンドの原石みつけちゃった状態ですよ。砂漠を歩いてたら、あれ? なんかあれ怪しいな、みたいな感じで。私が19歳のときに思ったのは、こんな私がカレーの魅力に気づいてるんだから、その魅力に気付いている人は日本に100人はいるだろうなっていうことでした。じゃあ私以外の99人が先に広めちゃったらどうしよう? 私が初めて見つけたダイヤモンドの原石なのに、ほかの人に目の前で磨かれちゃったらどうしよう? でも私にはお金はない。でも時間はある。じゃあその時間を全て費やして、いまある自分の肩書、19歳とか学生だっていうところを逆手にとって広めないといけない。死ぬほど時間がないっていう認識でした。

カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん

いま、スパイスの魅力を語るカリー子さんの表情は、とにかく明るい。

私の目標としては、スパイスカレーが広まって文化になって、それによって私が負の状態、曇天の下を歩いていた状態から晴天の世界に飛び立ったときのあの幸せを、できるだけ多くの人に味わって欲しいんです。

カレーには人生を変えてもらったし、性格も変えてもらったし、対人関係とか、本当に全てを変えてもらったんですよね。だからものすごく感謝しているし、自分がカレーとかスパイスによって変えてもらった魅力的な部分を、ちゃんと伝えていかないといけないと思っています。

一つひとつの言葉もさることながら、キラキラと輝くカリー子さんの目を見ていると、スパイスの楽しさがひしひしと伝わってくる。何かに夢中になれる人はきっと、「好き」を伝播(でんぱ)させる達人でもあるのだ。

カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん
PROFILE
印度カリー子

スパイス料理研究家。1996年11月生まれ、仙台出身。スパイス初心者のための専門店香林館(株)代表取締役。スパイスセットの商品開発・販売をする他、大手企業とのレシピ開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。2021年3月東京大学大学院農学生命科学研究科修了。
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カレーに人生を変えてもらった 印度カリー子さん
発行:世界文化社

一肉一菜スパイス弁当
1,540円(税込み)| 著:印度カリー子

スパイス弁当で「おいしい・簡単・ヘルシー」を実現! 人気スパイス料理研究家の印度カリー子さんが、初の弁当本を出版しました。昨今、大注目の「スパイスカレー」。そのヤミツキになるおいしさで注目を集めています。スパイス料理は時間がたつと調和が生まれて熟成したようなおいしさになるなど、お弁当に向いている要素が満載 なんです。いつものお弁当じゃ物足りなくなった人、そしてスパイスを愛するすべての人に捧げる一冊です。

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