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小川フミオのモーターカー
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創業者の情熱あふれる高性能スポーツカー デトマゾ・マングスタ

背景のヌオーバ500とマングスタの強烈な対比

どうしたら、クルマはかっこよく見えるか。1967年に発売されたイタリアの「デトマゾ・マングスタ(※)」は、クルマのかっこよさの教科書のようなスポーツカーだ。ボディースタイルはジョルジェット・ジュジャーロ(※)が手がけた。

マングスタは、以前この連載でとりあげた「バッレルンガ」(64年)の発展型ともいえるモデル。60年代から70年代中盤にかけて、イタリアのスポーツカーのデザインは百花繚乱(りょうらん)。メーカーが独自の審美観でもって個性を競っていた黄金時代だ。

(※日本では「デトマソ」「ジウジアーロ」と書かれることが多いが、本連載では「デトマゾ」「ジュジャーロ」と記載する)

なだらかなルーフラインと低いノーズが特徴的
なだらかなルーフラインと低いノーズが特徴的

ピニンファリーナがスタイリングを手がけるフェラーリは、どちらかというとオーソドクスな美。それに対して、ベルトーネを起用したランボルギーニは常識にとらわれない斬新さで目をひいた。

ジュジャーロが在籍していたカロッツェリア・ギアによるマングスタは、オーソドクスさとアバンギャルドの中間ぐらいといえばいいか。大きなV8エンジンを搭載しているのに、全高は1.1メートルとかなり低い。15インチ径のタイヤの存在感も大きく、理屈でなく、クルマ好きのハートをつかむスタイルだ。

同時に、細部まで凝りまくっているのも、創作意欲がみなぎっていた当時のジュジャーロならではだろう。低い位置に配された4灯式ヘッドランプによるアグレッシブさとともに、リアのエンジンルームは中央にちょうつがいを設けてあった。フードは左右から蝶(ちょう)の翅(はね)のように開くのである。斬新で衝撃的だった。

ユニークなデザインのエンジンフード
ユニークなデザインのエンジンフード

デトマゾを率いていた元レーシングドライバーのアルゼンチン人、アレハンドロ・デトマゾは、当時、米国のフォードとビジネス上で密接な関係を持っていた。マングスタも、米国市場向けのスポーツカーとして企画がスタートしたといわれる。

当初のパートナーは、やはりレーシングドライバー出身のキャロル・シェルビー。当初はマングスタ(へと発展するモデル)をレースに出走させ、そこからマーケティングを始めようということで、両者の間で話がついていた。なのに、デトマゾが納車の締め切りを守らず、計画は不首尾に終わってしまった。

デトマゾは、シボレー・コーベットと同等かそれ以上の性能を持つスポーツカーを欲しがっていたフォードから多額の資金を引き出すという胸算用があった。シェルビーは、やはりフォードエンジンのACコブラ(62年~)を手がけていて、フォードにとっても、計画どおりに進めば高性能スポーツカーを一気に2モデル、ラインアップに持つことも夢ではなかった。

車体の低さが強調された発売当初の写真
車体の低さが強調された発売当初の写真

マングスタは欧州と米国で販売された。欧州向けには306馬力の4.7リッターエンジン、米国向けには230馬力の5リッターエンジンを搭載。71年までの間に約400台が作られたのだから、まずまずの成果といえるだろう。

はたして、マングスタは、目論見(もくろみ)どおりにフォードとがっちり手を組んで、というふうには進まなかった。71年には後継モデルの「パンテーラ」を手がけ、販売面でも成功を収め、フォードはデトマゾの株式を取得して、親会社に。しかしそのすぐ後、73年に第一次石油ショックがあるなどして、フォードは大排気量スポーツカーへの興味を失っていくのだ。

レーシングカーのようなダッシュボード
レーシングカーのようなダッシュボード

マングスタが歴史に名を残すほどの高性能スポーツカーだったか。それは疑問なしとしない。ボディー剛性はそれほど高くないうえに、エンジンの性格も太いトルクで運転のしやすさを追求。その気になれば最高速は時速250キロ出せたというものの、レースでの活躍はなく、ピュアスポーツカーではなかった。

フェラーリもランボルギーニもマセラティも、自社製高性能エンジン搭載で、この分野でもマングスタに勝算はなかった。マングスタの当時のライバルは、(ちょっとマニアックだが)イタリアンエキゾチックスポーツカー、イソ・グリフォ(65年)だろうか。同じくジュジャーロが手がけたボディーに、シボレー製V8エンジン搭載と、少し成り立ちが似ている。

デザインを担当したジュジャーロの巧みなスケッチ
デザインを担当したジュジャーロの巧みなスケッチ

それでも、マングスタには類いまれな個性があった。ひとつはここで触れてきたジュジャーロによるローアンドワイドのスタイリング。もうひとつは、戦後出発ながら、フェラーリやマセラティに匹敵するスポーツカーを作ろうとした創業者の情熱だ。これがあるから、自動車はおもしろい。

【スペックス】
車名 デトマゾ・マングスタ
全長×全幅×全高 4275x1830x1110mm
4728ccV型8気筒ミドシップ 後輪駆動
最高出力 305ps@6200rpm
最大トルク 56.8kgm@3500rpm

(写真=De Tomaso Automobili提供)

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