『NIGHT HEAD 2041』キャラクターデザイン原案・大暮維人「正義も悪も美しさも醜さも、すべてあわせ持った方が美しい」
1992年10月から半年にわたって放送され、カルト的な人気を得たTVドラマ『NIGHT HEAD』。超能力を持つ兄弟の運命を描いた物語だ。深夜の放送にもかかわらず、終了時にはビデオ化を望むファンの電話や手紙が多数寄せられた。そして、2021年7月。TVアニメ『NIGHT HEAD 2041』として帰ってきた。
本作のキャラクター原案を担当するのは、『天上天下』『エア・ギア』『バイオーグ・トリニティ』(原作・舞城王太郎)など人気作を手掛け、現在「週刊少年マガジン」にて『化物語』(原作・西尾維新)を連載中の漫画家・大暮維人さん。アニメやゲームなどのキャラクターデザインを度々手掛けているが、どれもが美しく個性に溢れている。魅力的なキャラクターをどのようにつくり込んでいるのか。キャラクターづくりの根幹に迫った。

キャラクターの性格とは真逆の造形にすることも
キャラクターをつくり上げる上で、まず最初に行うのが「物語におけるキャラクターの座標、居場所をつくること」だと大暮さんは言う。
「主人公はどのような性格なのか、どの立場(視点)であるのかを決定・把握し、その相関で脇キャラクターの造形をイメージしていきます。そして、『NIGHT HEAD 2041』のようなキャラクターデザインの仕事の場合、そこからイメージラフを数点つくり、方向性として間違っていないかをスタッフのみなさんに検討していただきます。ラフをもとにやり取りをしてデザインを詰めていくという流れです」
自身の作品であれば、一人もしくは編集者とともに少人数かつ自由にキャラクター設定をつくり上げることができる。しかし、アニメやゲームだとそうはいかない。すでに用意された設定の中でキャラクターをつくり上げる時と、自身の漫画作品を手掛ける時では、どんな違いがあるのだろうか。
「自分の漫画ならば、キャラクターが何をする人なのかが分かっているので、直感的な作業が多いです。しかし、あらかじめ設定の用意されているキャラクターデザインですと、直感的なつくり方とは異なります。個人的に意外性のあるキャラクターに魅力を感じるので、提出ラフではキャラクターの性格とはあえて真逆の造形にすることも。結構攻めたデザインをちょこちょこ織り交ぜます」
TVドラマ『NIGHT HEAD』を知る人たちの中には、大暮さんの生み出した新しいキャラクターのデザインに驚きを感じた人も多いのではないだろうか。
キャラクターたちに込めた創意工夫
『NIGHT HEAD』のメインキャラクターである霧原直人・直也兄弟。TVドラマ版や2006年に放送されたアニメ『NIGHT HEAD GENESIS』など過去のシリーズに登場する二人は黒いトーンで統一されていたが、『NIGHT HEAD 2041』では白髪となっている。

「目覚めた先には黒い未来ではなく、明るい世界がある。という希望の象徴として、あえて白髪にしました」と大暮さん。TVドラマ版放送当時、一視聴者であった大暮さんならではのアイデアが詰め込まれていた。

「直人は一見柔和な雰囲気の中に剛直さが内包されている感じを、直也は弱さと不安がさらに強調される感じを出してみました。ちなみに直人の黒コートは『NIGHT HEAD』の重要なアイコンなので、過去シリーズから踏襲させていただきました。ありがたいことに『自由にやってください』とおっしゃっていただいたので、核となる直人以外は方向性の確認を取った後、自由に描きました」
『NIGHT HEAD 2041』からは、霧原兄弟と対峙(たいじ)するもう一組の主人公兄弟、黒木タクヤ・ユウヤが新しく登場。黒木兄弟のキャラクターのデザインについても語ってくれた。

「タクヤはチャラいように見えて、芯の通っているギャップを顔と体で表現しました。中身までチャラいやつは、あんなに腹筋は割れないでしょう(笑)。ユウヤは真面目というより、できるやつ感や一生懸命な雰囲気を出しました」

「タクヤたちの着ている制服は、夜に瞬くネオンに溶け込む未来の都市迷彩をイメージしています」
そして、大暮さんが個人的にお気に入りのキャラクターだと話すのが「小林君枝」だ。
「エキセントリックな女性は大好物です。あんなのリアル世界で遭遇したら逃げますが(笑)」

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