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ニッポン銭湯風土記
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近江鉄道で行く、東海道・旧水口宿とミニ銭湯 滋賀「清水湯」

東海道・旧水口宿、道が三筋に分かれて再び合流する街並みにひっそりと溶け込む清水湯=滋賀県甲賀市

南の筋を折り返していよいよ清水湯へ。南の筋は旧東海道よりもひなびた雰囲気だ。700mほど戻ると清水湯の煙突が見えてくる。

宿場町にポツンと残るミニ銭湯、清水湯
宿場町にポツンと残るミニ銭湯、清水湯

と、少し先のなにやら小さな明かりが目に留まった。行ってみると西田酒造という看板がかけられており、一瞬普通の酒販店かと思ったが、表のショーウィンドーにはさっき水口神社に奉納されていた「酔小町」の酒だるが飾られている。店に入っておかみさんに聞くと、なんとその「酔小町」の蔵元だという。

近江鉄道で行く、東海道・旧水口宿とミニ銭湯 滋賀「清水湯」

創業は明治元年、酒自体は現在別の蔵で醸造しているらしいが、さっきの斬新な笑四季酒造とは対照的に、こちらはいかにも庶民の酒という感じ。安藤広重の浮世絵・東海道五十三次に描かれた「水口 名物干瓢(かんぴょう)」図をラベルに使った「みなくち」という酒が目についた。控えめな人柄のおかみさんは、「これは原酒で19度ありまして、燗(かん)をして飲むと足元にきますので、冷やすか氷を落として飲まれるのがいいんです」とおっしゃる。それを購入し、またもやリュックに押し込んだ。

西田酒造の店内
西田酒造の店内

小さくても堂々、レトロな町家造りの平屋銭湯

さて、今度こそ風呂に入ろう。清水湯は町家造りの小さな平屋建てで、低い屋根と細い煙突がなんとも愛らしい。地方の銭湯ならではだが、こんなに小さくても100年近く続いている。

のれんの脇で、おかみさんがアサガオに水をあげていた。戸を開けるといきなりタタキに番台が置かれた古いスタイル。10年あまり前に取材で訪れた時にはこの番台に高齢の大女将が座っておられたが、7年前に92歳で亡くなり、後を息子さん夫婦が継いでいる。

清水湯の使い込まれた番台
清水湯の使い込まれた番台

ここで改めて、青く塗られた天井の低さに驚かされる。高い天井が特徴的な東京の銭湯はもちろん、京都や大阪でもまずお目にかかれない低さだ。漢数字の木製脱衣箱や、男女の仕切り壁を抜いてはめ込まれた冷蔵庫、天井近くの注意書きなども珍しく、田舎の片隅に埋没していくような小旅行の楽しさがこみ上げてくる。

【動画】木製脱衣箱も年季が入っている。浮世絵風ののれんが東海道の銭湯に似合う。玄関のタタキに番台がある古いスタイル

服を籠に放り込んで浴室に入るや、一気に湯気に包まれる。この浴室もまたコンパクトで銭湯としては最小レベル。湯船もミニサイズが一つあるだけだが、見上げると高々と煙突のように伸び上がった湯気抜きの造形が印象的だ。

【動画】小さな湯船から、高く持ち上がった湯気抜きを眺める

湯は熱い。だが清水湯の自慢はその名の通り、古城山の清らかな地下水。それを沸かした湯はきめ細かに感じられ、カランの水を浴びては何度もつかりたくなる。そのうち一人また一人と常連客がやってきて、黙って体を洗っては出てゆく。古い宿場町の小さな銭湯で、今もこうして東海道の歴史が積み重ねられているような気がした。

帰路も「ガタゴト」……酒蔵と小さな銭湯再訪誓う

湯上がりは近くの居酒屋でビールにありついたが、ローカル線の日帰り旅はあまり遅くまではいられない。水口石橋駅から再び近江鉄道にゴトゴトと揺られた。ずっしり重いリュックの中で、私といっしょに2本の酒も揺れている。水口は小さな町だが、地図を見ると酒蔵がもう1軒あるようだ。次回はそこも行ってみたい。小さな清水湯が湯を沸かし続けている限り、必ずまた来ることになるだろう。とりあえず今日帰ったら西田酒造のおかみさんが言った通り、原酒に氷を浮かべて飲んでみることにしよう。

近江鉄道で行く、東海道・旧水口宿とミニ銭湯 滋賀「清水湯」

【清水湯】
滋賀県甲賀市水口町本町2丁目5-10
電話 0748-62-2666
営業時間 16:00~21:00 水曜定休

「旅先銭湯」シリーズ

本連載の著者・松本康治さんが、全国のレトロな銭湯や周辺の街を訪ねたムック本「旅先銭湯」は、書店やネット、各地の銭湯で販売中。松本さんは「ふろいこか~プロジェクト」を立ち上げ、廃業が進む銭湯を残したり、修復したりする活動も応援しています。

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