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〈心で味わう郷土料理4〉濃厚なうまみをギュッ 島根のしじみ汁

写真・猪俣博史

郷土料理はふるさとの味。昔は家庭の中で受け継がれていくものでした。ライフスタイルが変わった今、それを受け継いでいくことが難しくなってきています。ここでは、各地の文化や風土がギュッと詰まった料理を紹介します。毎日の献立に取り入れたり、少しアレンジを加えたりして、いつもの食卓に変化をつけてみませんか。見て、聴いて、嗅いで、触れて、味わって。コロナ禍で、気軽に旅ができない今、郷土料理を通して心の旅に出かけましょう。

みなさんのふるさとの味はどんな味ですか。どんな風景を想像しますか。

就職のために松江から上京したばかりなんです、という女性にふるさとの味をたずねてみると、「もちろん、しじみ汁ですよ」と教えてくれました。別の方に聞いても、しじみ汁のほかにはすぐに浮かばない様子。また、過去に松江に赴任していた女性に聞いても、即答で「しじみ汁がすごくおいしくて」と。

どんな料理?と聞くまでもありません。しじみのうまみたっぷりのおみそ汁やすまし汁は、家庭料理の定番ですよね。貝をよく食べる日本人。縄文時代の貝塚からは多くの貝類がみつかり、しじみもその中の代表格です。

「やっぱりしじみ汁ですよね~」と私がうなずいていると、「パスタにもしますよ、ペペロンチーノとか、トマトベースもいいですし」「雑炊もおいしいです」「塩味のラーメンは最高ですよ、飲んだ後なんかにも」など、ぽんぽんとメニューがあがります。これほどまでにしじみが愛されていることを知りました。

私自身、松江に出張したときの早朝の宍道湖(しんじこ)が忘れられません。朝もやのうっすらと残る宍道湖はとても神秘的で、まるで山水画のように美しくて青い世界。その澄んだ空気の中をジョギングして、途中立ち止まっては景色をうっとりと眺めていました。

そんな宍道湖の幻想的な風景を思い浮かべながら、しじみ汁を作ります。

きょうの郷土料理

ここで宍道湖のしじみについてのお話を少し。宍道湖で獲(と)れるヤマトシジミは、日本一の漁獲量を誇ります。しじみをとりすぎないように、漁師ひとりあたりの捕獲量が決められています。

漁法は、船上から人力で時間をかけて獲る「手掻(か)き」、人が湖につかる「入り掻き」、動力船で湖底を大きな機械で引き回して獲る「機械掻き」と様々。獲ったしじみは、石やゴミを取り除き、閉じたままで中身のないものや土の詰まったものを、手で転がして微妙な音の違いを聞き分けて選別します。目で見て、耳で聞いて。熟練が必要な、手の込んだ作業なのです。

ひと昔前までは、東京の納豆売り、京都の豆腐売りのように、おばあさんがリヤカーにしじみをどっさり積んで、まちなかを売り歩く光景がよく見られたといいます。

材料(5人分)

〈心で味わう郷土料理4〉濃厚なうまみをギュッ 島根のしじみ汁
  • ・しじみ
    250g
  • ・水
    500g
  • ・みそ
    大さじ2~3
  • ・山椒(さんしょう)
    適量
  • ・塩(砂抜き用)
    水1ℓに対し大さじ1/2ほど

作り方

準備 水1ℓに対し大さじ1/2ほどの塩を入れて、その中にしじみを入れて6時間ほどつけて砂抜きする。

1.鍋に水としじみを入れて中火にかけ、アクが出れば取り除く。殻が全て開くのを確認したら火を止める。

2.みそを溶かしたら、山椒をふりかけて完成。

〈心で味わう郷土料理4〉濃厚なうまみをギュッ 島根のしじみ汁

作ってみました

鍋の中が温まってくると、口をあけた殻から、もわもわっと白いものが出ている様子が見えます。これが出汁(だし)の正体。

ポコポコと音をたてながら、ひとつひとつの殻から出汁が出て、透き通っていた水がどんどん濁っていきます。そして泡やアクが出はじめて、コロコロコロッと殻同士がぶつかる音がしてきたら、もうそろそろだよ、というサイン。貝殻が教えてくれるんですね。同時に、貝や出汁の濃厚な香りがしてきます。あとは、みそを溶かすだけ。みその香りとあわさって、熱々を早く食べたい気持ちに。

味わってみました

〈心で味わう郷土料理4〉濃厚なうまみをギュッ 島根のしじみ汁

汁をすすると、鼻の奥まで貝の香りがぶわーっと広がります。黒光りしたしじみの殻の中をのぞくと、ぷっくりと丸い身が。身を食べてみると、しっかりとした弾力があり、まるで肉を食べているかのような食感と、汁の味をぎゅっと凝縮させたような味がして、甘さも感じることができます。ごくりと汁を飲むたびに体にしみわたり、栄養を取り入れているぞ!という満足感に浸れます。

しじみ汁は、シンプルな料理ゆえに、素材のパワーをダイレクトに感じることができます。海の幸、山の幸、自然の恵みが豊富だった縄文時代にぽーんと飛ばしてくれるタイムマシンのよう。味わうというのは、食の歴史を思うことなのかもしれません。

いただきます、ありがとう、ごちそうさま。

〈心で味わう郷土料理4〉濃厚なうまみをギュッ 島根のしじみ汁
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PROFILE
かのうかおり

料理研究家・カオリーヌ菓子店店主
フランスのチーズ文化を学ぶために渡仏。農家で修業し、店舗でも販売を学ぶ。帰国後にオープンした「カオリーヌ菓子店」では、バスクチーズケーキが人気に。五感を使った食材の味わい方、生産者と食べ手との関わりの観点から食の持つ力や自然を大切にする心を育む活動をしている。フランスチーズ鑑評騎士、J.S.A.ソムリエ、フードコンシャスネス・インストラクター。1男2女の母。著書に『カオリーヌ菓子店のチーズケーキ』(主婦と生活社)、『チーズの絵本』(mille books)。

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