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小川フミオのモーターカー
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力強い加速と安定した操縦性 新型ランドローバー・ディフェンダーに試乗

アクセルペダルを踏むと、2トンを超える車体が軽々と動き、ぐんぐん加速するランドローバー・ディフェンダー110 D300

世のなかで最もモノ好きの興味をそそるクルマの1台。それがランドローバー・ディフェンダーだった。単にランドローバーと呼ばれたオリジナルの登場は1948年。鉄板にリベット打ちっぱなしで、ウィンドーも板ガラス、といったホント“道具”というデザインゆえの魅力があるのだ。

コロナ禍のせいもあって、家でネットフリックスを見ていた私は、戦後の英国王室を主人公にした傑作ドラマシリーズ「ザ・クラウン」にハマった時期があった(次のシーズンを楽しみにしているところ)。そこでエリザベス女王(に扮したオリビア・コールマン)がランドローバーを自分で運転するシーンがよく出てくる。

キャラクターのたったフロントマスクが魅力的な90
キャラクターのたったフロントマスクが魅力的な90

オリジナルのランドローバーは、2016年までという長いモデルライフを持つ。ロイヤルワラント(英国王室御用達)を与えられており、最も英国的なクルマ、と評する向きもあるぐらいだ。折に触れて改良が加えられ、エンジンやサスペンションなどが時宜を得て変更されるとともに、84年にディフェンダーの名が冠された。

現在の新しいディフェンダーが登場したのは2020年。「変えなくてもいいと思うところが多かった」と、ランドローバーのデザインを統括しているジェリー・マガバーン氏が私に語ってくれた通りで、オリジナルの雰囲気をうまく残したスタイルが特徴的だ。

110 D300の燃費はリッター9.9キロ(WLTC)
110 D300の燃費はリッター9.9キロ(WLTC)

そこにあって、いややっぱり変えてくれてよかった、と言いたくなったのは、20年秋に発表されて、ようやく21年夏に日本にお目見えした、3リッター6気筒ディーゼルエンジン搭載の「110 D300」に乗ったときだ。加えて、同時に乗れた、ショートホイールベースの2ドア「90」もよかった。

110はワンテン、90はナインティと、メーカーでは呼びならわしている。もとはホイールベースの長さで、ボディーを区別するため、ファンや自動車ジャーナリズムが非公式に使っていた名称だ。110は約110インチ(約2.8メートル)のホイールベースを持つモデルを意味している。130なるモデルもあった。現在の110の場合3020ミリもある。90は2585ミリで、新型VWゴルフ(2620ミリ)より短い。

私が好きな英国の作家グレアム・グリーンの小説「名誉領事」(1973年)にも、ランドローバー(のちのディフェンダー)をこよなく愛する英国人が登場する。英国版ジープとして開発されただけに頑強さが売りもので、個性的な存在感ゆえ、日本にも根強いファンを生んできた。

鉄板むきだしだったオリジナルのイメージをうまく生かしたダッシュボード(90)
鉄板むきだしだったオリジナルのイメージをうまく生かしたダッシュボード(90)

こういうクルマのモデルチェンジは実にやりにくい、と、メーカーの人間はよく言う。そこにあって、いまだったら、走りのよさとともに、燃費と快適装備が眼目になるだろう。実際、新型ディフェンダーも同様だ。“乗用車”として全方位的に進化している。

当初日本に導入された2リッター4気筒ガソリンエンジンモデルは、とはいえ、ボディーに対していまひとつパワー不足感があった。300馬力(221kW)とはいえ、ボディーが大きすぎるのか。どうなんだろうなあと、思ったのは事実。しかし、今回の6気筒ディーゼルは、先に触れた通り、とてもよい。

90の燃費はリッター8.3キロ(WLTC)
90の燃費はリッター8.3キロ(WLTC)

D300と呼ばれるディーゼルエンジンモデルをひと言で評すると、快適で大人っぽい乗り味、といえる。エンジンは加速のための電気モーターが備わるマイルドハイブリッド化されたこともあって、力不足を感じさせる場面は皆無だった。

乗ったのが、フェラーリを走らせても楽しい箱根の山道だった。そこでも、力強い加速と、安定してカーブを曲がる操縦性とで、いいクルマだなあと感心させられたのだ。このクルマが真価を発揮するのは、高速での巡航だろう。後席も広いので、家族を乗せて、どこまで走っていっても、疲れはなさそうだ。

90の後席はアクセスはやや悪いが広い
90の後席はアクセスはやや悪いが広い

一方、「こちらのほうがデザイナーとしてはイチオシ」と前出のデザイナー、マガバーン氏が述べていた2ドアの90にも、今回初めて乗ることが出来た。ガソリンエンジン特有のエンジン回転を上げれば上げるほどパワーが盛り上がっていく感じは、(環境コンシャスが求められる昨今では不謹慎なんて思われそうだけれど)とても楽しい。

110のD300が2420キロの車重だったのに対して、90のP300は2100キロと重さが違う。加えてシャシーのバランスやら、試乗車には備わっていたエアサスペンション(110にも使われている)の設定の妙、というやつだろう。

後席の頭上にはアルパインライトなる明かり採りが設けられている
後席の頭上にはアルパインライトなる明かり採りが設けられている

ショートホイールベースのせいか、走らせると110より、足まわりはややハネぎみと感じる。でも、たいした問題にはならないはず。運転が好きな人には、こちらを勧めたい。オリジナルを思わせるボディーデザインは、本当にスタイリッシュで好ましい。

ただし、デザイン優先のせいか、ドアは大きいのだけれど、後席へのアクセス性はいまひとつ。前席シートは電動で前方にスライドさせることが出来るものの、急いでいるときは、どうしても、フロントシートとドアの開口部との間のせまい空間に体を押し込みたくなる。でもつらいのでやめておいたほうがいいだろう。

ドアは横ヒンジで開くデザイン
ドアは横ヒンジで開くデザイン

いちど後席におさまってしまえば、空間はたっぷりある。頭の上にはアルパインライトと呼ばれる伝統的な細長いウィンドーがあったりして、光がたっぷり入ってくるし。普段は2人でドライブする、っていう人が都会で乗るには、90、カッコいい、と私は思う。

価格は、110 D300が754万円から、90 P300は551万円から。問題は……生産が注文に追いついていないことだ。人気車種のディフェンダーの場合、いま(21年7月)注文して、納車予定は22年の年明けだそう。買い替えのタイミングがうまく調整できるなら、少しぐらい待つのも楽しそうだけれど。

フォトギャラリーでもっと写真を見る

【スペックス】
ランドローバー・ディフェンダー110 D300
全長×全幅×全高=4945×1995×1970ミリ
2993cc直列6気筒ディーゼル 全輪駆動
最高出力 221kW(300ps)@4000rpm
最大トルク 650Nm@1500~2500rpm
価格 754万円~

ランドローバー・ディフェンダー90 P300
全長×全幅×全高=4510×1995×1970ミリ
1995cc直列4気筒 全輪駆動
最高出力 221kW(300ps)@5500rpm
最大トルク 400Nm@2000rpm
価格 551万円~

(写真=筆者)

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