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花のない花屋
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救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
坂田好恵さん(仮名) 56歳 女性
会社員
岐阜県在住

    ◇

今から3年前。53歳だった私は、長年家庭内別居状態だった夫と離婚し、趣味のサークルで知り合った彼と結婚を前提に同棲(どうせい)をスタートさせました。すでに私の子どもたちは独立しており、第二の人生を彼とともに生きていく覚悟で、彼の地元に転居し、ご両親を含む4人での新生活が始まりました。

ところが見知らぬ土地での生活は、私が望んでいた平凡で穏やかなものではありませんでした。同居しても、彼の女性関係は派手なまま。夜の遊びもやめず、話し合いをしようとしても、押し黙ってしまうだけで会話になりません。どんなに私がお願いしても、「生活を改める」とはとうとう一度も言うことはありませんでした。

空しさと悲しさで真っ黒になった雲が、日に日に私の心に垂れ込めてくるようでした。自分の何が悪いのか、どう努力をすれば彼との幸せな時間を取り戻せるのか、答えのない自問自答を繰り返しました。

そんな日々にもがき苦しみ、いよいよ家を出ることを考えるようになったとき、気がつくと私は隣家のドアをたたいていました。定年したご主人と暮らしていらっしゃる隣家の奥さんは、道で会えば世間話をする程度の仲でした。ただ、人のために身を削るのを厭(いと)わない面倒見のいい方で、遠くから彼を頼ってこの町に来た私のことを、いつも気に掛けてくれていました。

そんな彼女がドアを開けて、いつものやさしいほほ笑みを見せてくれた途端、私は体から力が抜けて、その場に座り込んでしまいました。そして、追い詰められた胸の内を、すべて彼女に話しました。黙ってうなずいて聞いていたその人は、最後にこうやさしく語りかけてくれました。

「ここまでがんばったね。でももう無理しなくてもいいよ。今はつらくても、生きていれば必ずいいことがありますから」

その言葉に救われ、励まされ、そして背中を押され、次の日の朝私は胸を張って家を出ました。

その後、アパートで一人暮らしを始めた私の心の支えになってくれたのも、その隣人でした。彼の家は出たものの、孤独と喪失感に押しつぶされそうになっていた私は、真っ暗な部屋でポツンと一人涙を流し、「このまま死ねたらどんなにラクだろう……」などと考えることもありました。「生きてさえいればきっといいことがある」「どんな過去でもプラスに捉えて、前に進むのよ」と励ましてくれる彼女の言葉に、何度救われたかわかりません。

その後も「ご飯ちゃんと食べてる?」「仕事は見つかりそう?」と、私を心配して連絡をくれた彼女。親兄弟がいない私にとって、彼女は母のように安らげる存在になっていきました。

家を出てから1年ちょっと。今は仕事も決まり、私の生活は徐々に軌道に乗ってきました。「生きていればいいこともある」。そんな彼女の言葉を思い出し、自分を励ます余裕も生まれています。何よりもがく私に、一人じゃないと思わせてくれた彼女のやさしさに、心から感謝しています。

今度会えたら、彼女の手をぎゅっと握って「ありがとう」と伝えたいです。そんな心優しいあの方にお花を贈っていただけたらいいなあと思っています。

救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生
≪花材≫ガーベラ、アスター、ブバルディア、バラ、セルリア、バーベナ、ヒペリカム、フロックス、テッセン、デンファレ、ピットスポルム

花束をつくった東さんのコメント

ピンクを中心とした淡い色合いのお花を集め、パステル系のアレンジにしています。お隣の奥さまはいつもほほ笑んでいて、穏やかな言葉で安心させてくれる心優しい方。そんな印象から、見る人をふんわり包んでくれるような、さまざまな小花をちりばめました。

バラやガーベラ、かわいい実を付けたヒペリカムなどを囲むように、デンファレというランの一種やグリーンを配しました。

素敵な方に巡り合えて、苦しい時を乗り越えられた投稿者さま。これからも前を向いて歩いていただけたらと思います。

救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生
救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生
救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生
救ってくれたのは、隣人。幸せになるはずだった第二の人生

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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