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早世の天才デザイナー、ピオ・マンズーが遺(のこ)したもの

トリノ自動車博物館ピオ・マンズー企画展の会場

ピオ・マンズーの崇高な精神とは

しかし悲劇は突然訪れた。69年5月26日、127のプレゼンテーションのため、ミラノからトリノのフィアット社に向かう高速道路上で、交通事故によりマンズーは30歳にしてこの世を去った。

ピオ・マンズー(1939-1969)
ピオ・マンズー(1939-1969)

127は、彼の死から2年後である71年に発表される。おりしも発売直後に石油危機が勃発したこともあり、新しい小型車像を模索する欧州、日本さらには米国メーカーにとって大きな範となった。76年初代「フォード・フィエスタ」の開発過程には、127が研究対象の1台であったことが明確に記録されている。そしてイタリア本国のほかスペインや南米拠点でも生産され、累計生産台数は520万台以上に達した。

彼のプロダクトデザインもロングセラーとなった。置き時計クロノタイムは今日、イタリアを代表する家庭用品メーカー「アレッシィ」がラインナップのひとつとしている。ルームランプ「パレンテジ」は生前のマンズーが残したアイデアスケッチをもとに、イタリアの工業デザイン巨匠のひとり・アキッレ・カスティリオーニによって仕上げられ、こちらもフロス社によって現在も販売されている。

ピオ・マンズー/アキッレ・カスティリオーニ「パレンテジ」68年構想
ピオ・マンズー/アキッレ・カスティリオーニ「パレンテジ」68年構想

最後に筆者の考えを述べれば、今日のプロダクトデザイナーや自動車デザイナーの多くは、とかく高価格・高スペックの製品を手掛けることに自らの達成感とステータスを見いだしているといってよい。しかしマンズーは限られた人ではなく、広く人々に使い続けられる良質かつ永続的なデザインをひたすら目指した。デザイナーとして、より高い次元での使命を感じていたのだ。イタリアの路上で今も大切に使われているフィアット127とすれ違うたび、マンズーの思いが伝わってくる。

昨今、世界の自動車業界は、来たるべき自動運転車やシェアリング・モビリティーの姿を懸命に模索している。常に社会の機能の一部としての乗り物を考えていたマンズーである。天国ではあるべき姿をスケッチしているに違いない。そのうち1枚でもいいから、地上にひらりと落としてほしい。世の迷えるクリエーターのために。

    ◇

「Che macchina! Pio Manzu e i 50 anni della FIAT 127」展は、イタリア・トリノ自動車博物館で2021年9月5日まで開催中

(写真・動画/大矢アキオ Akio Lorenzo OYA、大矢麻里 Mari OYA)

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