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花のない花屋
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2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
石田彩希さん(仮名) 46歳 女性
会社員
愛知県在住

    ◇

2年前、私はがん告知を受けました。手術、抗がん剤、放射線治療と大変な治療が粛々と続き、心身ともに大きなダメージを受けながら、今ようやく経過観察となりました。

我が家は夫と、小学生の息子との3人家族。私も夫も故郷を遠く離れ、都市部に住む核家族です。病気を大っぴらにして、近くの知人に助けてもらおうという勇気もなく、告知された当時は、この過酷な治療を家族だけで乗り越えられるのだろうかと、不安しかありませんでした。

とはいえ夫と話し合い、2人で協力していつも通りの暮らしをできるだけ続けられるように頑張ろうと誓いあいました。いつもと違う日常が、まだ低学年だった息子の心の刺激になりすぎないようにと考えてのことでした。

そうして2年間の闘病生活が始まりました。子どもはまだ低学年で、手術で入院したり、副作用で寝込んだり、脱毛したりする私を見て、いつもどこかで不安があったと思います。親の言うことをよく聞き分けるようになり、宿題など自分の役目を黙っていてもこなすようになりました。

私自身は会社には可能な限り出勤することを決め、自分のためにも家族のためにも頑張ろうと決めたものの、副作用のあまりの厳しさにいつも通りの暮らしや母親業をまともにできないことに落ち込み、涙が止まらないこともたくさんありました。

大変だったのは夫です。いつも以上に息子の精神面に配慮しながら、横たわる妻をいたわり、目の前に常にある家事や育児と仕事を両立。計り知れないストレスだったと思います。

それでも根っからの楽天家の夫は、いつも通り悠々と日常を送る姿を見せてくれることで、私と息子を安心させてくれました。

そんな夫がたった一度だけ涙を見せたことがあります。抗がん剤で抜けた髪をバリカンで夫に剃(そ)ってもらったときのこと。治療で苦しい思いをしているところへ、髪まで失ってしまった私をかわいそうに思ったのでしょう。それまで張り詰めていた夫の緊張感が途切れて、おいおいと声を上げて泣いてくれました。

結婚以来、夫はおみやげにブーケを買ってきてくれることがよくありました。私の治療が始まってからも、治療がひとつずつ終わるたび、また脱毛で抜けた髪の毛が生えてきた時、ささやかなブーケがリビングに飾られました。夫が選ぶものは、派手過ぎず、グリーンが多くて素朴で、さっぱりした中にアクセントになるような彩りが添えられているブーケが多く、そんなお花を目にするたびに、私の気持ちも空気もぱーっと明るくなった感覚は忘れられません。

優しく穏やかな性格の夫と子どもに両脇を支えられ、私も我が家も、やっと落ち着きを取り戻したところです。そんな我が家に東さんのパワーあふれるお花を迎えて、夫や子どもを盛大にねぎらいたいです。

2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙
≪花材≫キングプロテア、ジンジャー、クルクマ、ケイトウ、アンスリウム、トリトマ、グラマトフィラム、キセログラフィカ、サラセニア、ウツボカズラ、ナデシコ、パピルス、オケラ、フェチダス、オヤマボクチ、シュベルティ、パフィオペディラム

花束をつくった東さんのコメント

見ていただくだけで元気がでるような、パワフルなアレンジに仕上げました。ご家族3人力を合わせて、ご病気を乗り越えたこと。旦那さんやお子さんとの深まった絆をテーマに、生命力にあふれたパワフルな植物の力を感じていただければと思います。

ウツボカズラやサラセニアという食虫植物、またジンジャーのお花やネイティブフラワーと呼ばれる力強い植物をそろえました。

ご家族のみなさんで眺めながら、植物のパワーを感じて、ますます元気になっていただけるとうれしいです。食虫植物など、お子さんの興味にひっかかったらいいなと思っています。

2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙
2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙
2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙
2年間のがん治療。宿題をこなす息子の姿と、楽天家の夫が見せた涙

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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