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永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶
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(124) 右手の靴、なぜ片方?  永瀬正敏が撮ったイラン

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回もイランで撮った働く少年です。撮りながら、救われた気持ちになったというのですが、それは……。

(124) 右手の靴、なぜ片方?  永瀬正敏が撮ったイラン
©Masatoshi Nagase

前回前々回に引き続き、今回も働く少年。

テヘランの大きなマーケット内で出会った少年だ。
この巨大なマーケットでは、中央の広場が野菜など生鮮食料品を売る屋台で埋め尽くされ、何本もある通路の両脇に、衣類や土産物、香辛料や生活必需品を売る店舗がぎっしりと並んでいた。

この少年たちはその通路の端の一角、シャッターが閉まった店の前で靴を売っていた。
なので、このマーケット内には自分の店舗を持っていないのだろう。
このように商売している人たちも多くいた。

少年の隣に立っている男性は身内の方か? 時折少年と話をしている。
少年は左手に紳士用の革靴1足を持ち、右手にはなぜか女性用の靴を片方だけ持っていた。
「なぜ片方だけ?」と思ったが、彼らの後ろにある黒い袋の中に、おそらくたくさんの靴が入っているのだろう。
その中にもう片方の靴は紛れ込んでいるのではないか。
もしその片方の靴を気に入ったお客が来たら、ビニール袋からもう片方を見つけ出し、お客に渡すんだろうな……。
そんな事を考えながら少年を見ていた。
「遊びたい盛りだろうに……」

彼を見ていると、前回、前々回のように自分の幼少期がフィードバックしてくる。
何も考えず、ただその日その日を楽しく過ごしていた日々。
おなかがすいたら冷蔵庫を開ければ何かが入っているし、
眠くなったら整ったベッドで寝る。
新しいキャラクターのおもちゃを両親におねだりし、買ってもらえず駄々をこねる。
安心して学校に通い、休み時間に命をかけたようにはしゃぎまくる。
そして、放課後は秘密基地で友達と時間を過ごす……。

この少年は、そんな時間を持てているのだろうか……。
ちょうどそんなことを思っていた時、少年の表情が一瞬変わった。
この写真はその時のもの。
この笑顔に何か救われた気がした。

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