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京都ゆるり休日さんぽ
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旅気分を味わうレバノン料理。ボーダーレスに食卓を囲むレストラン「汽 ki:」

ひと皿で異国の地を旅するような気分にさせてくれる料理。旅が遠い存在となってしまった今、色で、香りで、ここではないどこかへと心をいざなう料理は、もっとも身近な異国への入り口です。今回訪ねたのは、下京区の旧「五条楽園」地区に今年5月オープンしたレストラン「汽 ki:」。薪窯(まきがま)を備えた開放的なキッチンから運ばれてくるのは、ビビッドな色彩が躍るレバノン料理です。

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

国や信仰を越えて、一つのテーブルを囲む風景を

オーナー・長野浩丈さんの祖母の家をリノベーション。梁(はり)や土壁など既存の建物の持ち味を生かしつつ、石造りの大テーブルを主役にした空間に
オーナー・長野浩丈さんの祖母の家をリノベーション。梁(はり)や土壁など既存の建物の持ち味を生かしつつ、石造りの大テーブルを主役にした空間に

天窓から光が降り注ぐ空間の中心にあるのは、石造りの大テーブル。動かすことも、分けることもできないこのテーブルは、オーナー・長野浩丈さんの決意の現れです。

「宗教上の理由で食べられないものがある人も、オーガニックで健康的な食を意識している人も、みんなが同じテーブルを囲む場所にしたいと思ったんです。コロナ禍ということもあって、周りにはずいぶん反対されたんですが、これだけは譲れなくて」(感染症対策として仕切り板を設置、入り口で手指消毒)

左から、長野さんの盟友でもあるシェフの西川勇作さん、共同経営する弟の★★★★さん、長野さん、スタッフの★★さん
左から、長野さんの盟友でもあるシェフの西川勇作さん、共同経営する弟のTKさん、長野さん、スタッフのジョーさん

そう笑う長野さんは、京都、フランス、東京、大阪とさまざまな場所で22年間フランス料理に携わってきた料理人。フレンチのシェフとして経験を積むなかで、高価で動物性の食材が主役となるフランス料理から、より日常的でエシカル(倫理的)な料理へと関心が向くようになりました。新しい店をオープンすることになった時思い浮かんだのは、かつてパリで見たレストランの光景。そこでは信仰や食のスタイルが異なる人同士が、一緒に食卓を囲むことが当たり前だったといいます。

高瀬川に面した外観は木漏れ日がさす。ガラス窓からは厨房(ちゅうぼう)の様子が見える
高瀬川に面した外観は木漏れ日がさす。ガラス窓からは厨房(ちゅうぼう)の様子が見える

大きな石のテーブルは、日本でもそんなボーダーレスな食卓を実現したいという長野さんの意思そのもの。健康的で、エシカルで、さまざまな宗教の人が食べられる料理をと思い巡らせるうち、レバノン料理がひらめきました。

野菜の端材を有効活用。厨房、畑、食卓がつながる

かつてフランスの委任統治領だったレバノンは、フレンチのほか中東諸国の食文化の影響を受けながら、いくつもの宗教が入り交じる国。タブレピタパン、シャワルマ(ケバブ)、ファラフェル(ヒヨコマメやソラマメのコロッケ)といったさまざまな出自の料理がミックスされつつも、野菜やハーブをふんだんに使ったヘルシーなスタイルが魅力です。

ランチの「チキンファラフェルミックス」(2500円、税込み)。季節の野菜の前菜やグリル、ハーブがちりばめられた一皿
ランチの「チキンファラフェルミックス」(2500円、税込み)。季節の野菜の前菜やグリル、ハーブがちりばめられた一皿

オリジナルのスパイスで下味を付け、薪窯でじっくり焼き上げたチキンと中東料理でポピュラーなファラフェル、色とりどりの前菜を自身でピタパンに挟んでいただくプレートが「汽 ki:」の定番。一つひとつの香りと食感、マリネの爽やかな酸味やアイオリソースのコクが複雑に絡み合う味わいは、ふくよかで多彩な食文化の層が感じられます。

自身でピタパンに具材を詰めていただく。一つひとつ味付けが異なるため、一緒に食べると複雑ながらも調和した味わいに感動する
自身でピタパンに具材を詰めていただく。一つひとつ味付けが異なるため、一緒に食べると複雑ながらも調和した味わいに感動する

他にはないグレーのピタパンは、調理過程で出る野菜の皮やヘタを薪窯で炭化させ、生地に練り込んで焼き上げたもの。これにより、生ゴミの量は大幅に削減されました。残った灰は、西京区の大原野(おおはらの)にある自家農園の堆肥(たいひ)になるのだそう。そしてその畑から、「汽 ki:」のひと皿を彩る野菜やハーブが収穫されます。

「自分たちの手の届く範囲からでも、有機的なサイクルを生み出せればと思っています。食べる人も今、ヴィーガンでなくても健康的で野菜中心の食を見直していたり、環境に配慮したものへの意識が高まっている。ここがそういう選択肢になれば」

デザートに人気の「カヌレ」(400円・税込み)。薪窯でミルクに燻香を付け焼き上げる
デザートに人気の「カヌレ」(400円・税込み)。薪窯でミルクに燻香を付け焼き上げる

異なる信仰や主義の人々が、一つのテーブルを囲んで時間をともにする。皿の上ではさまざまな国の要素が調和し、厨房(ちゅうぼう)は畑とつながり循環する。理想郷のような物語も、一軒のレストランの食卓からなら不可能ではありません。レバノン料理という異国の食文化を通して、ここで体験するのは、有機的で多様性に満ちた半歩先の未来です。

朝8時から10時は朝食営業も。テイクアウトもできる
朝8時から10時は朝食営業も。テイクアウトもできる

■汽 ki:
https://www.instagram.com/ki.kyoto/

BOOK

旅気分を味わうレバノン料理。ボーダーレスに食卓を囲むレストラン「汽 ki:」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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