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小川フミオのモーターカー
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電動化ロードマップは着々と進む 世界のEV最新事情

2021年夏に公開されたアウディ「スカイスフィア」コンセプトはホイールベース可変のスポーツEV

世界の自動車メーカーのEV化が加速中。メディアでも話題になることが多いし、読者の中には“すでに乗ってるよ”なんて方もいらっしゃるのでは。

そんな中、最近の動向を眺めていくと、世の中こんなに変わっているんだ、と驚くほど。例えばゴッツい四駆の代名詞といえるジープが、「2025年までに、全世界で販売されるジープの7割を電動車にする」と発表したりという具合。

ジープは北米でも日本でもプラグインハイブリッド車に力を入れていくという
ジープは北米でも日本でもプラグインハイブリッド車に力を入れていくという

面白いのは、高級ブランドと大衆車ブランドとで、EVのコンセプトがかなり違っていること。例えばアウディは21年8月に「スカイスフィア」なるEVのコンセプトモデルを発表。ラグジュアリーの新しい形を提案、というのがコンセプトだ。

スカイスフィアは、スポーツカーモードとグランドツアラーモードを備え、電動でホイールベースが250ミリも変わる。後者ではロングホイールベースで快適な乗り心地を追求する。自動車史上あまり例を見ないコンセプトだ。

大きなエンジンがないのでフロントにゴルフバッグも搭載できるユニークなデザインのアウディ「スカイスフィア」コンセプト
大きなエンジンがないのでフロントにゴルフバッグも搭載できるユニークなデザインのアウディ「スカイスフィア」コンセプト

一方、大衆車を得意とするフランスのルノーは、EVの価格を下げて、マーケットを広げることに熱心に取り組んでいる。21年に公開したコンパクトハッチバックEVのコンセプトモデル「ルノー5」は、300万円を切る価格で24年に発売する意向を表明している。

「ルノー5」(左)と「メガーヌe」(右)とともにオンラインでEV戦略を語るルノーのデメオCEO
「ルノー5」(左)と「メガーヌe」(右)とともにオンラインでEV戦略を語るルノーのデメオCEO

果たして、今のEVを見ていると、メーカーが自社のキャラクターを明確化するための格好の道具のような気がする。上記のような極端な違いはないものの、日本のピュアEVも個性的だ。

日産リーフ(17年)、Honda e(20年)、マツダMX-30 ev model(21年)、レクサスUX300e(21年)など、バッテリーの大きさを始め、加速や減速など、各車に独自のキャラクターがある。

冒頭に引例したジープは、「モーターのほうが力(トルク)を細かく調整できるので、エンジンよりオフロード走行に向いている」(技術担当者)などとする。これも興味深い。

ジープ・ラングラー・ルビコンのプラグインハイブリッドモデルは北米市場で好調なセールスという(日本未導入)
ジープ・ラングラー・ルビコンのプラグインハイブリッドモデルは北米市場で好調なセールスという(日本未導入)

確かにEVは、スムーズな加速と、重いバッテリーを床下に収めた低い重心高による操縦安定性などで、ドライブの楽しみがちゃんとある。個人的には、私はEV好きなのだ。

問題は充電のインフラが十分に整っていないこと。最近の報道では、欧州委員会は、化石燃料で走るクルマの規制をより厳しくする方針を打ち出したとされている。21年7月14日の時点では、35年には、ハイブリッドを含めて内燃機関(エンジン)で走るクルマの販売の禁止を提案したという。大丈夫かいな、と思う。

VWが20年に発表したEV「ID.3」は、普通から急速まで3つの充電に対応
VWが20年に発表したEV「ID.3」は、普通から急速まで3つの充電に対応

何はともあれ、規制があるなら、自動車メーカーはそこへ向けて製品を開発するしかない。つまり、EV化。例えばルノーは、25年までに欧州で販売されるルノー車の65パーセントを電動化(ハイブリッドを含む)と発表。

「30年にはその割合を90パーセントに引き上げるのを目標とする」とルノーのルカ・デメオCEOは述べた。舞台は、7月にオンラインで開催された「Renault EWAYS ELECTROPOP(イーウェイズ・エレクトロポップ=深い意味はほぼなし)」なるジャーナリスト向け発表会だ。

300万円を切る価格での販売が計画されているコンパクトEV「ルノー5」は往年のルノー5のスタイリングイメージを生かしたモデル
300万円を切る価格での販売が計画されているコンパクトEV「ルノー5」は往年のルノー5のスタイリングイメージを生かしたモデル

デメオCEOによると、大事なのは製品だけでない。生産が何より重要となる。ルノーでは、EVのための生産設備を集約したメガファクトリーをノルマンディーに、さらに二酸化炭素排出量を抑えたバッテリー工場を含むギガファクトリーをベルギー国境近くに開設する計画という。

プレミアムカーだろうと大衆車だろうと、EV生産において各社に共通するのは、スタートアップ企業との提携あるいは買収に始まり、バッテリーなどの主要部品の自社製造、そして関連企業の集約化、である。

部品の共用化は、自動車界においては1950年代から始まっていたことであるので、目新しくはない。今回の動きの背景にあるのは、高価なパワートレインやバッテリーを大量生産することでコスト引き下げを狙う、というもの。加えて、供給の安定化が重要だ。

VWはひとつの「MEB」プラットフォームからさまざまな「ID.(アイディー)」シリーズを作る
VWはひとつの「MEB」プラットフォームからさまざまな「ID.(アイディー)」シリーズを作る

デジタライゼーション(自動車業界では電動化をこう呼んだりする)の時代における、特徴的な現象としては、バッテリーや半導体の供給が生産の生命線になる点だ。昨今のコロナ禍による部品工場での生産遅れが、自動車メーカーに大きな打撃を与えたのは、読者の皆さんもご存じの通り。

ルノーでは早い速度で多くの関連企業を傘下に入れている。中には駆動システムを開発している企業や、電源を交流から直流に変えるインバーターやオンボードチャージャーなどをコンパクトに一体化する技術開発に成功した企業も含まれる。

中でも、駆動用バッテリーは重要なパーツだ。小型化かつ効率化を始め、リサイクルを効率的に進めることや、さらに将来のソリッドステートバッテリー開発および生産にいたるまで、供給体制を強固なものとしなくてはならない。

VWの「ソフトウェア・オフェンシブ 」(デジタル時代におけるソフトウェアによる攻勢)と題したオンラインでの記者発表の光景(画面右が開発担当重役のトマス・ウルブリッヒ氏、中央が販売担当重役のクラウス・ツェルマー氏)
VWの「ソフトウェア・オフェンシブ 」(デジタル時代におけるソフトウェアによる攻勢)と題したオンラインでの記者発表の光景(画面右が開発担当重役のトマス・ウルブリッヒ氏、中央が販売担当重役のクラウス・ツェルマー氏)

フォルクスワーゲン(VW)では、ソリッドステートバッテリーの自社開発を、米国のスタートアップ企業と手を組んで進めている。軽量で小型で、かつリサイクル率が90パーセントを超えるというこのバッテリー。VWによると、「e-Golf(先代ゴルフのピュアEV仕様)に搭載すると、航続距離が今の231キロから、大体750キロへ伸びます」という。

まもなくベールをぬぐ予定のVWの新型「ID.5 GTX」はピュアEVのSUVクーペ(VWの定義)
まもなくベールをぬぐ予定のVWの新型「ID.5 GTX」はピュアEVのSUVクーペ(VWの定義)

生産台数からいうと、決して大手でないものの、早くから脱化石燃料を謳(うた)ってきたスウェーデンのボルボでも、ピュアEVの体制固めのために、バッテリーを他社任せにする現在の体制からの脱却を図る。

新しいピュアEVのSUVをオンラインでお披露目するボルボカーCEOのホーカン・サムエルソン氏
新しいピュアEVのSUVをオンラインでお披露目するボルボカーCEOのホーカン・サムエルソン氏

「スウェーデンの大手バッテリーメーカーと協力して、バッテリーセルのエネルギー密度を現在の市場にあるものに比べて最大50パーセントまで高めることを計画しています。20年代の後半には、実走行距離1000キロを実現したいと考えています」

ボルボ・カーズの最高技術責任者であるヘンリック・グリーン氏は、21年7月1日に電動化計画についてのオンライン記者会見「Tech Moment」でそう語った。

ボルボとバッテリーを共同開発する「ノースボルト」社の工場
ボルボとバッテリーを共同開発する「ノースボルト」社の工場

同社の「電動化ロードマップ」は、戦略的パートナーとの協力の下、バッテリー、電気モーター、関連ソフトウェアの設計、開発、生産を自社で行う垂直統合に重点を置いたもの、とグリーン氏。まもなく、電動化したプレミアムSUVの新型車を発表する予定だ。

現行のプレミアムSUVモデルの代替車種になるといわれる「ボルボ・コンセプトリチャージ」はピュアEV
現行のプレミアムSUVモデルの代替車種になるといわれる「ボルボ・コンセプトリチャージ」はピュアEV

アウディも、親会社であるフォルクスワーゲンを含めて、EVのための生産設備の拡充に早くから力を入れている。同時に、生産設備や輸送過程において、二酸化炭素の排出を抑える努力をするという。

例えば、バッテリー工場ではなるべく自然由来のエネルギーによる発電を行うし、完成車は二酸化炭素排出量の少ない列車で輸送する、という具合。

アウディがオンラインで公開した「テックトーク(充電)」には、充電時間と充電効率の開発担当のジルビア・グラムリヒ氏(画面中央)と、ハイブリッド車のバッテリー開発担当のフランク・キンダーマン氏(右)が登壇し、今後の目標などを語った
アウディがオンラインで公開した「テックトーク(充電)」には、充電時間と充電効率の開発担当のジルビア・グラムリヒ氏(画面中央)と、ハイブリッド車のバッテリー開発担当のフランク・キンダーマン氏(右)が登壇し、今後の目標などを語った

ジープが属するステランティスグループは、21年7月8日にオンライン記者発表会「EV Day」において、同様に、パワートレインの共用化をより強く推し進めるとした。

ジープはこれからピアトゥピア(個人で発電した電力を個人に売る)充電の拡充にも力を入れていくという
ジープはこれからピアトゥピア(個人で発電した電力を個人に売る)充電の拡充にも力を入れていくという

ステランティスには、フィアットやアルファロメオ、プジョーやオペルなど14のブランドが傘下に収まる。同グループのパワートレインの戦略は、3種類のEDM(エレクトリックドライブモジュール)を開発し、傘下ブランドの製品に搭載するというもの。

EDMは、モーター、ギアボックス、インバーターで構成されている。特徴としてあげられたのは、コンパクトで柔軟性が高く、拡張も容易で、かつ、全てのEDMが、前輪駆動、後輪駆動、4WD、4xe(電動あるいはプラグインハイブリッドによる4WD)に対応。グループのCEOを務めるカルロス・タバレス氏はオンラインで、このような戦略について語った。

まだまだピュアEVは少数派であるものの、乗れば独自の楽しさがある。何よりスムーズな加速感は、快感すら覚えるほど。メーカーによって、操縦性にテイストの違いがちゃんと感じられるのも、自動車好きにアピールしそう。

充電などのインフラの問題が解決されれば、そして価格が下がってくれば、EVは自動車好きの選択肢に確実に入ってくるだろう。ただし、自動車好きとしては、選択できることが大事。エンジンもあればハイブリッドもあるしピュアEVも、という状況が理想的なのだ。その中で、ユーザーは理性的な選択をすればよい、と私は思っている。

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