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幕末の動向反映する全国の台場 「青天を衝け」の城(5)

丸岡藩が築造した梶台場(丸岡藩砲台跡)

ほぼ原型残る鳥取藩の由良台場

鳥取藩では、1863(文久3)年から1864(元治元)年にかけて8カ所の台場が築造されている。1863年、大阪の天保山台場を警備していた鳥取藩の警備隊がイギリス船を砲撃する事件があり、その報復を恐れて次々と砲台を築造したようだ。

8カ所の台場のうち6カ所(由良台場跡、境台場跡、淀江台場跡、橋津台場跡、浦富台場跡、赤崎台場跡)が鳥取藩台場跡として国史跡に指定されている。

全国でも珍しい、ほぼ完全な形で残るのが由良台場(鳥取県北栄町)だ。鳥取藩で最初に築造され、やはり高島秋帆に西洋砲術を学んだ武信潤太郎を総指揮者として、1864年に完成した。正八角形を半分にしたような形で、高さ5メートルの土塁で囲まれた、東西125メートル×南北80メートル、総面積は8000平方メートルに及ぶ巨大な台場だ。

由良台場
由良台場
由良台場
由良台場を別の角度から

いずれも西洋砲術の専門家が設計に携わり、西洋式の城塞(じょうさい)プランが取り入れられているのが特徴だ。橋津台場跡(鳥取県湯梨浜町)は、日本海側の土塁は波浪に浸食され半分以上が流出してしまい、後方の土塁や目隠し土塁、両側面の土塁の一部が残るのみだが、古絵図には由良台場のような姿が描かれている。橋津台場は、年貢米を収める藩の蔵があった橋津港を防衛するための台場だった。

橋津台場跡
橋津台場跡

高野長英が設計した宇和島藩の砲台

1989(平成元)年11月には、御荘久良(みしょうひさよし)砲台(愛媛県愛南町)を設計した高野長英自筆の絵図や資料が宇和島伊達文化保存会の事務所で多数見つかった。資料によれば、大砲の命中率は10発中9発とかなりの高さだったという。軍備の近代化を推進した8代宇和島藩主の伊達宗城(むねなり)は、蘭学書の翻訳と軍事研究のため高野長英を庇護(ひご)。この際に宇和島藩の依頼を受けて長英が設計したのが、1850(嘉永3)年に完成した御荘久良砲台だった。

その後宇和島藩が設置した台場のうち、見学におすすめなのが樺崎(かばさき)砲台だ。近隣の山や海岸から運んだ石や土砂で海を埋め立てる難工事の末、1855(安政2)年に完成した。現在は埋め立てのため海に面していないが、土台となる石塁がよく残り、胸墻や肩墻(けんしょう)といった防護用の壁が復元され、幕末の様子が伝わる。かつて胸墻には正面に五つの銃眼があり、肩墻の左右にも臨時の砲眼が一つずつ配置。胸墻の中央から敷地を二つに分ける壁である隔墻が延び、奥には火薬庫が置かれていたらしい。

樺崎砲台
樺崎砲台

幕末には長崎でも台場増設

江戸初期の鎖国政策後に長崎港の警備目的で構築された長崎台場では、幕末にいくつもの台場が増設されている。そのうちの一つ、魚見岳台場には石垣や弾薬庫などがよく残る。魚見岳台場の三ノ増台場からは高鉾島(たかほこじま)台場跡や神崎(こうざき)台場跡がすぐ近くに見え、至近距離に多くの台場を構築して警戒を強めたようすが伝わる。

魚見岳台場の三ノ増台場から。高鉾島台場跡(左)や神崎台場跡(右)が見える
魚見岳台場の三ノ増台場から。高鉾島台場跡(左)や神崎台場跡(右)が見える

このように、各藩の台場からは幕末における切迫した社会情勢がうかがえる。どの藩もかなりの費用と人員を投じ、難局を乗り切るべく奔走していたようだ。台場は、幕末の情勢と各藩の動きを反映する遺跡といえるだろう。

(この項おわり。次回は9月6日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト
■品川台場
https://www.tptc.co.jp/park/01_01/history(東京港埠頭株式会社)

■神奈川台場
https://kanagawadaiba.com/daiba/(神奈川台場地域活性化推進協会)

■浜川砲台
https://www.shinagawa-kanko.or.jp/spot/hamakawahoudai/(しながわ観光協会)

■鳥取藩台場跡
http://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/3E3E01B2067A30E349257B6D00106D96?OpenDocument(鳥取県)

■樺崎砲台跡
https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/sizen-bunka/111kabasaki.html(宇和島市)

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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