&w

花のない花屋
連載をフォローする

最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
米澤真紀子さん(仮名) 51歳 女性
会社員
三重県在住

    ◇

姉と私はともに離婚経験があり、それぞれの子どもたちとともに、実家で同居生活をしていました。ショッピングモールの洋服売り場で勤務していた姉は、メイクや服も派手で、赤やピンクのバラ柄などが好み。丁寧な接客でお客様のファンも多く、自分の選んだ服を喜んでくれるお客様の笑顔に生きがいを感じて、「趣味は仕事」と言ってはばからないほど、仕事が好きでした。

そんな姉が乳がんの診断を受けたのが2014年、47歳のときです。抗がん剤治療では副作用による吐き気にも負けず、できる限り出勤して、姉を目当てに来店してくれるお客様の接客をこなしていました。そうしてみんなが、姉の病気のことも忘れかけた3年後、今度はがんが肝臓に転移したことを告げられます。青天の霹靂(へきれき)でした。

それでも姉は諦めずに、新たな治療を開始して、果敢にがんに立ち向かっていきました。もちろん仕事は楽しそうに続けていたほか、私の家族に週に一度、ご飯を作る役を買って出たり、はたまた私の仕事の話を聞いてくれたり、以前よりかえって忙しい日々を送るようになりました。

ところが姉のがんは、少しずつ姉の体をむしばみ続けていたのです。転移がわかってから4年が経った今年の春、主治医からとうとう「もうこれ以上の治療はありません」と告げられ、緩和ケアを勧められました。そんな状態でも、しばらくはがんばって出勤を続けていた姉ですが、まもなくして立ち上がれない状態になってしまいました。

がんが発見されてからトータル7年半、ずっと死と向き合ってきた人のすごさだと思います。覚悟ができていたのか姉は落ち着いていて、「私、死んだらどこへ行くんやろな」と言いながらも、冷静に死を受け入れようとしている様子でした。

ホスピスに入ることも考えていたようですが、コロナで面会もままならないこともあり「迷うくらいなら、家にいればええやん」と私が声をかけると、「迷惑かけたら悪いなあ」と言いながら、在宅介護を続けることになりました。

意識が薄らぐようになってからは、介護ベッドの上で勤務していたお店のことを口にしたり、私の頭を撫(な)でてくれたり、せん妄を繰り返したりしています。数日前まで伝い歩きで行けていたトイレまで、今日は歩いて行けなくなりました。

ここ数日は私も会社を休んで、姉との時間を過ごしています。考えてみれば、離婚して途方に暮れていた私を「大丈夫」と励まし、仕事を探してくれたのは姉でした。こうして仕事を見つけたことが大きな励みになり、離婚後の生活のスタートダッシュになりました。今の生活があるのは、姉のおかげと感謝しています。また、人の役に立つ仕事の喜びを教えてくれたのも姉でした。

今も隣でうめき声をあげながら生きようと必死です。「一緒にがんばってくれてありがとう」ちょっと前には、姉からそんな言葉も聞きました。

姉は花が好きで、枕元に庭のアジサイを飾ると、「水を換えたらなあかん」「きれいやな」と、うわごとの中で言っています。東さんのお花を届けていただける頃、姉はこの世にいないかもしれません。でも私が姉を思っていた証として、姉に素敵なプレゼントができたらと思います。

最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ
≪花材≫バラ(品種:レッドエレガンス、イヴピアジェ、スイートアバランチェ、ファイヤーキング)、アジサイ、ポリシャス、多肉植物

花束をつくった東さんのコメント

真ん中には多肉植物を置き、その周囲にお姉様がお好きだというアジサイ、さらにその周りにバラを配しました。

香りがいいピンクのバラや、スプレー咲きの小ぶりのバラ、さらに大きな花をつけたものまで、大小さまざまなバラをミックスして、アジサイを取り囲むようなアレンジになっています。

お姉様は赤やピンクがお好きというエピソードをうかがったので、明るくて華やかで、みんなに愛されるお姉様のイメージを詰め込みました。投稿者様のお姉様へのお気持ちを、アレンジに乗せて届けられるとうれしいです。

最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ
最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ
最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ
最期に見せたい花束。死期が近いことを悟っている姉へ

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

応募フォームはこちら

REACTION

LIKE
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら