つながる、ということ
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「もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい」 坂本美雨さんが思う“勇気”

撮影:MURAKEN

――美雨さんが考える「勇気」というのは?

会社だったり、家庭だったり、学校だったり、無理な環境で踏ん張ろうとしても、身体(からだ)を壊すことになる。心と体は、どんどん蝕(むしば)まれていくものだから。もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい。色々な事情があって、逃げられないと思うかもしれないけれど、我慢(がまん)せずに、すぐに逃げていいと思います。

戦うことに意義を感じていたり、踏ん張る理由があったりする人は、踏ん張って戦うのもいいと思うんです。だけど、逃げられるのなら、逃げていいし、「ここにしか自分の世界がない」なんて、絶対に思わなくていいと思います。逃げてみたら、なんとかなるし、なんとかしてくれる人にもきっと出会えます。

特に子ども時代は、自分の世界が小さいので、学校での人間関係がすべて、なんて考えたら、本当に絶望してしまうと思う。大人になったら、どんどん世界が広がって、違うところに行くことができます。がんじがらめの時は、そういう想像もできなかったりする。そんなときは、まわりの人が、引っ張ってあげることも大事だと思います。

「もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい」 坂本美雨さんが思う“勇気”

たくさんの大人に育ててもらった幼少期

――以前、子育てに関して「まわりの人に、一緒に子育てしてください、と頼る。他人の存在が、子どもには学びになるし、頼る場所や逃げ場所にもなる。親にとっては仲間が増え、負担を軽くすることにつながる」とおっしゃってました。そんなふうに考えるようになったのには、ご自身の子どもの頃の体験が関係していますか?

はい、完全に自分がしてもらったことですね。父も母もずっと働いていて、遠くに行くこともあったから、お手伝いさんが2人、交互で来てくれて、その人たちにも育ててもらいました。あとは、両親それぞれのマネージャーと、レコード会社の人たち。仕事の現場で、たくさんの大人に育ててもらいました。大人になってから「おむつ替えたよ」って、ほうぼうから言われたりして(笑)。それが、すごく良かったなって思っているんです。いろんな人たちの仕事に対する真剣な姿を見ることができました。ダメな大人もたくさん見た気がします……今思うと(笑)。

お手伝いさんの家に預けられたときは、テレビを見せてくれたり、おやつをくれたり、うちではできないことができて、うれしかった記憶があります。もしアメリカではなく、あのまま日本で学校に通っていたとしても、嫌なことがあったときに逃げ込める場所は、たくさんあっただろうなと思います。

夫の実家は、仙台で自転車屋さんをやっているんですけど、やっぱり子どもの頃は、お客さんがたくさん出入りしていて、お客さんと遊んでもらうという日々だったらしくて。子育てするなら、いろんな価値観が入り乱れるところがいいよね、という考えかたは、夫と共通していましたね。

「もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい」 坂本美雨さんが思う“勇気”

――子どもの世界や、逃げ場はどう作ってあげたらいいと思いますか?

頑張って公園に行ってみようとか、子どもに何か習わせなくちゃとか、子どものために、子ども目線じゃなくちゃいけないって思いがちだと思います。でも、どうなんだろう、子どものためと思うよりも、まずは自分が趣味を持ったりだとか、自分が好きな場所に連れていくことが一番なのかなと思います。

畑仕事が趣味だったら、もちろん畑でいいし、スポーツ、キャンプでもいい。おいしいごはん巡りでもいい。親が一番に楽しむっていうのが、大事なんじゃないかなと思います。そこで親に出会いがあって、好きだな、信頼できるなって人に出会えればいいですよね。子どもって、親が好きな人、親が信頼している人のことを、信頼するものだから。

私は娘が生後2カ月の時に仕事復帰して、2歳弱ぐらいまでは、シッターさんやマネージャーさんに協力してもらって仕事の現場に連れて行っていたんです。不思議なもので、私が好きな人のところへ娘もいって、勝手に仲良くなるんですよね。私が楽しそうにしている表情を見るだけではなくて、本当に純粋に楽しくて、リラックスしている、その波動みたいなものを、子どもはよーく感じ取っているんだなって、思いました。

「もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい」 坂本美雨さんが思う“勇気”

――自分の好きな場所へ連れて行ったり、仕事場へ連れて行ったり。非常識って思われるかなとか、他人の目を気にして、やっぱりダメかなって諦めちゃうこともありそうです。

仕事復帰して生後2カ月の娘を連れてラジオの収録現場に行っていましたが、気にせずやっていたように見えて実は人一倍気にしていました。自分の中で常識だと思う部分と、でも、ここから先は、まわりのみんなにも少し意識を変えてもらえたらという気持ちのせめぎあいでしたね。

子どもを仕事に連れていくことも、外食に連れていくことも、もちろん時と場合によって判断しなくてはいけないと思います。ただ、子どもを連れていける環境を作るには、まず需要を発生させることも大事。みんなが子どもを連れていけば、じゃあ子ども椅子を用意しようとか、必要なものはなんだろうと考えてもらえるんですよね。社会はそうやって変えていくものだ、と思っています。

ラジオの収録現場に、赤ちゃんを連れてくる人なんて誰もいなかったんですが、セキュリティーのおじさんも、どんどん優しくなってくださったり、番組にいらっしゃるゲストのみなさんとも、お互いの子どもの話で場が和むこともあって。だんだんとまわりが受け入れてくださるようになっていました。

まずは、親が楽しむことが一番。だから私のライブには遠慮せずに、子どもを連れてきて欲しいし、親が行きたいライブにも、子どもをどんどん連れて行けるような環境になればいいな、と思っています。

文:仁平綾
撮影:MURAKEN

 

 

 

PROFILE
坂本美雨

5月1日生まれ。音楽に囲まれNYで育つ。1997年『Ryuichi Sakamoto featuring Sister M』名義でデビュー。音楽活動に加え、執筆活動、ナレーション、演劇など表現の幅を広げ、ラジオではTOKYO FMを始め全国ネットの「ディアフレンズ」のパーソナリティーを2011年より担当。村上春樹さんのラジオ番組「村上RADIO」でもDJを務める。おおはた雄一さんとのユニット「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」待望のファーストアルバム『よろこびあうことは』が2020年6月11日にリリースされた。動物愛護活動に長年携わり、著書「ネコの吸い方」や愛猫サバ美が話題となるなど、「ネコの人」としても知られる。2015年、出産。猫と娘との暮らしも日々つづっている。

約5年ぶりとなる待望の新作「birds fly」をリリース!
「もし傷つけられていたら、すぐに逃げたほうがいい」 坂本美雨さんが思う“勇気”
(FOLKY HOUSE)

CoProducer としてピアニストの平井真美子、チェリストの徳澤青弦を迎え、スタジオレコーディングではなく、自由学園明日館にて3 人での生演奏を一日で全6 曲レコーディングした、異例の作品。

録音と同時に映像も撮影され、作品が作り上げられていく全過程がドキュメンタリーとして記録された。この映像作品は、初回限定盤に収録される予定のBlu-rayで見られるが、apple musicではいち早く、日本では珍しい“ビジュアルEP”(Music Video付きアルバム)という形で配信されている。楽曲は各配信ストアでも先行配信中。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

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