久保純子 LIFE in N.Y.
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「I Choose Joy」太陽のような彼女との出会いと、新しいムーブメント

「アジアンヘイト」に一石を

さらに今年の3月には、NYをはじめ全米を取り巻く「アジアンヘイト(アジア人に対する偏見や暴動)」に一石を投ずるべく、ブロードウェーのアジア人にスポットライトを当てたプロジェクト「Celebrate Asian Joy」を彼女は立ち上げた。

昨年5月の警察官によるジョージ・フロイド氏暴行死事件に端を発して、ブラック・ライブズ・マター運動(BLM、黒人の命は大事だ)はここNYでも巻き起こり、黒人の人権を見つめ直す運動が盛んに行われた。だが、トランプ前大統領の「チャイナウイルス」発言も発端となって、全米各地で、アジア人に対するヘイトクライムも勃発した。NYでも、これまでに経験したことのない恐怖を感じた。

「I Choose Joy」太陽のような彼女との出会いと、新しいムーブメント
ブラック・ライブズ・マター運動のマーチや集会は平和裡(へいわり)に開かれていた。黒人への暴力に抗議して、試合前の国歌演奏で地面に膝をついたアメリカンフットボールのNFLの選手たちに思いを重ねて、ひざまずく市民の姿が見られた
「I Choose Joy」太陽のような彼女との出会いと、新しいムーブメント
ブラック・ライブズ・マター運動の最中、マンハッタンのあちこちで心ない一部の人による略奪や強盗行為が蔓延(はびこ)り、プロテクションのため、ショーウィンドーに板を張る店舗が続出。心痛む光景だった

地下鉄や道端で殴打されるアジア人を巻き込む事件が連日取り沙汰された。知人も、地下鉄のホームで顔を殴られ、PTSDで日本に帰国するまでに至ってしまった。私たち家族も日没後の外出は控え、地下鉄の代わりに、自転車や徒歩で移動するように。どうしても地下鉄に乗らなければいけない時には、改札口や階段の辺りで待機し、非常事態にはすぐに走って逃げられるよう見張っていた。そんな折、道すがら、見知らぬ男性に「murderer(コロナ殺人者)」と暴言を吐かれたこともあった。コロナ禍で疲弊する人々の悲痛な叫びが爆発してしまったのか。NYは今年の春先、カオスに包まれていた。

「I Choose Joy」太陽のような彼女との出会いと、新しいムーブメント
今年の初め、NY市はアジアンヘイトを抑制するためのキャンペーンを立ち上げ、街中にポスターが貼り出された。NY市のアジア人に対する犯罪は、 今年の初めからこの7月までで昨年と比較して395%増加した

「人種のるつぼ」で、ヘイトではなく共存を

このような状況下で、リーザさんは「アジアンヘイト」というネガティブな概念を一掃し、アジア人の良いところにスポットを当てることができるのではないか。さらには、これを機にアジア人の権利・地位向上を目指したい、と動き始めた。もともと、ブロードウェー界では極端にアジア人の数が少ない。俳優、音響、監督、振り付けなどあらゆる分野において白人の占める割合が高い。AAPAC(アジア系アメリカ人俳優による団体)が集計した最新のデータによると、ブロードウェーで活躍する俳優の58.6%が白人、次いで黒人が29%、アジア人はわずか6.3%。監督に至っては、81.3%が白人なのだ。

リーザさんは、アジア出身の俳優やスタッフを一堂に集め、自分たちの存在を世に示す歌を発表することにしたのだ。作詞作曲からレコーディング、編集、ダンスの振り付けに至るまでを全てアジア系のメンバーで担う。リーザさんはプロデューサーからディレクター、パフォーマーまで務めた。テーマは、「I Choose Joy(私は幸せを選択する)」。アジア人としてブロードウェーで闘う中で様々な困難はあるけれど、それでも選んだ道、喜びを歌っている。「人種のるつぼ」NYで、ヘイトではなく共存しようというメッセージが込められている。心から素晴らしいと思った。応援したい気持ちになった。その気持ちはNYに住む日本人も同じだった。在NY日本領事館をはじめ、日系団体のサポートにより、今秋にはプレミア披露会が行われる予定だ。

「I Choose Joy」太陽のような彼女との出会いと、新しいムーブメント
『I Choose Joy』のミュージックビデオ撮影風景@タイムズスクエア。「Celebrate Asian Joy」は、ブロードウェーに携わるアジア人の出演者やスタッフに光を当てている。@celebrateasianjoy

コロナ禍で思わぬ出会いが生まれ、コロナ禍で新しいムーブメントが起こる。力強く立ち上がるリーザさんと触れ合い、こんな諺(ことわざ)がふと頭をよぎった。「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」。あと数カ月で私も50歳。志も明確になった今こそ、新たなチャレンジをしようと意気込んでいる。

高橋リーザ
兵庫県伊丹市出身。幼少期からミュージカルを始め、高校でカナダへ留学。大学からアメリカの大学のミュージカル科へ進学。2018年3月に念願のブロードウェーデビューを果たす。
公式サイト:https://www.rizatakahashi.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/rizatakahashi/

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