&Travel

城旅へようこそ
連載をフォローする

特例で築かれ十数年後に落城、波乱万丈の松前城 「青天を衝け」の城(6)

松前城(福山城)、復元された天守と現存する本丸御門

日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載「城旅へようこそ」。今回は大河ドラマ「青天を衝(つ)け」ゆかりの城の第6回、松前城(北海道松前町)です。外国船からの海防拠点としては堅牢でしたが、戊辰戦争ではあっという間に落城してしまいました。なぜなのでしょう?

幕末に幕府の命令で館を城に

1615(元和元)年に武家諸法度が公布されると、櫓(やぐら)や石垣の修繕にも江戸幕府の厳しい規制がかかり、それまでのように各藩が自由に城に手を入れることはなくなった。厳密には武家諸法度公布後に築かれた城はあるが、幕府が有益または必要と判断しての特例に限られる。城は藩庁としては機能し続けたが、戦いの場としては長い眠りについたと言っていい。

しかし幕末になると、外国船からの攻撃に備えて防御施設としての城が再び築かれることになった。<幕末の動向反映する全国の台場>で紹介したように、海防目的の「台場」が全国各地で急増。一方、幕府の命令を受けて小藩の大名が築いた特例の城もあった。その一つが、松前藩の松前城(福山城)だ。

松前城の築城を命じられたのは、12代松前藩主の松前崇広(たかひろ)だ。松前家の前身は、大館を拠点とした蠣崎(かきざき)氏。蠣崎慶広(よしひろ)が初代松前藩主となった際に松前氏と改名し、1606(慶長11)年に福山館(ふくやまだて)を完成させて松前藩の拠点とした。

松前城に復元された搦手(からめて)二の門
松前城の復元された搦手(からめて)二の門

<城ではない?江戸時代の「陣屋」とは >で述べたように、石高の低い無城大名(陣屋大名)は、城を持たず陣屋を構えるのが一般的だった。当時は稲作ができなかった蝦夷地(えぞち、現在の北海道)を拠点にした松前氏は石高のない無城大名であったため、城ではなく陣屋に相当する福山館を拠点としていた。

大手門付近に残る石垣
大手門付近に残る石垣

ところが幕末、松前藩は激動の渦に巻き込まれることとなった。蝦夷地近海に外国船が出没するようになると、脅威を感じた幕府は北方警備強化のため松前藩に城を築くよう命令したのだ。これを受けた松前藩は1850(嘉永3)年、福山館を広げる形で松前城の築城を開始し、1854(安政元)年に完成させた。

復元整備された二の丸の土塁と石垣
復元整備された二の丸の土塁と石垣

海に向かって固めた防御

明らかに、海に向かって防御を固めた城だ。松前城の縄張(設計)を描いた絵図「松前城」(北海道大学附属図書館蔵)を見ると、その意図がよくわかる。本丸、二の丸、三の丸が南側に広がる海に向かって北側から並び、本丸の石垣はとくに南面が複雑に折れ曲がる。屈曲させることで射撃面を増やし、海側から迫る敵を効率よく迎撃できる設計だ。

#cap1-5 二重太鼓櫓跡からの眺望。海が迫る
二重太鼓櫓跡からの眺望。海が迫る

さらに絵図を見ていくと、二の丸の南面も石垣が屈曲し、同じく海からの敵に向けた迎撃体制を感じる。三の丸とを結ぶ二の丸南側に置かれた追手門は、多門櫓で囲まれた屈強な枡形虎口だ。追手門の東側に突出するように置かれた二重太鼓櫓がとりわけ存在感を放っている。おそらく、海に向かってにらみを利かせる重要な櫓だったのだろう。この場所であれば、海岸線から三の丸まで広範囲を見渡すことができそうだ。

三の丸の土塁
三の丸の土塁

もっとも印象的なのは、海岸に面した三の丸の南面だ。海に向かって7基の砲台場が設けられている。戦国時代から江戸時代初期の城では見られない、主力兵器が大砲へと変化した、幕末の城らしい様相だ。

城内に展示されている松前城の模型
城内に展示されている松前城の模型

本丸の西側は二の丸を経て外堀で守られ、本丸の東側は内堀を隔てて東郭、その北側に北郭が置かれて防備を固めていたとみられる。「蝦夷実地検考録」によれば、城の面積は23,578坪。城は16カ所の城門、一つの三重櫓、三つの二重櫓、三つの渡櫓門、二つの多聞櫓を備えていた。

NEXT PAGE戊辰戦争であっさり落城したわけ

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら