原点はカーデザイン、拡大するピニンファリーナの世界

フェラーリの「BB」「308」そして「テスタロッサ」……。かつて世界の自動車キッズを魅了したそれらをデザインしたのは、イタリア・トリノのデザイン会社「ピニンファリーナ」である。トリノの創立90周年記念展とともに、あなたの知らない同社の仕事も紹介しよう。
【動画】Pininfarinaの歴史
今回トリノ自動車博物館で催されている企画展は、本来90周年である2020年に行われるべきものであった。だが、新型コロナウイルスの影響で1年遅れとなった。
実車16台と数々の開発用スケールモデルが置かれた展示室では、夏休みということもあり、親子連れも多くみられた。

前述のフェラーリBBを前に、「これは未来の車?」と聞く子どもに、父親が「いや、昔、生産してたんだよ」と息子に教えている。半世紀前の車がコンセプトカーのように映るとは。タイムレスなデザインの成せる業だ。

富裕層が注目、顧客リストに王侯貴族
ピニンファリーナの起源は1930年、バッティスタ・“ピニン”ファリーナ(1893-1966)が37歳でトリノに開設した車体製作工房、すなわちカロッツェリアに遡(さかのぼ)る。当初の商標は「カロッツェリア・ピニン・ファリーナ」だった。
ピニン(pinin)とは北部ピエモンテ方言で「小さい」を意味するニックネームである。バッティスタが11人兄弟の10番目であったことや、小柄な体形であったことに由来したものであった。
バッティスタの仕事の正確さとセンスは、自動車にとって今日でいうところのアーリーアダプターであった富裕層たちの注目を集めた。実際、顧客リストには王侯貴族の名前が連なった。