&w

ファッションニュース
連載をフォローする

マルタン・マルジェラ、自ら語る創作 明かさぬ顔、「素顔」に迫る映画

つま先が足袋の形をした「タビシューズ」

あらゆる対面取材を断り、公の場では決して顔を明かさない。ベールに包まれたトップデザイナー、マルタン・マルジェラの素顔に迫る映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」が、17日から公開される。生い立ちや創作の源を自身の言葉で話す貴重なドキュメンタリーだ。

手元と声のみ、生い立ちや苦悩も

劇中でも顔が明かされることは一切なく、カメラは手元を映すのみ。「有名人にはなりたくない」「顔を出さないと決めたのは自分を守るためだ」。淡々と語る声からは、孤独を好む繊細な人柄がにじみ出る。

マルタン・マルジェラ、自ら語る創作 明かさぬ顔、「素顔」に迫る映画
人形の服に触れるマルジェラの手 ©2019 Reiner Holzemer Film RTBF Aminata Productions

1957年、ベルギー生まれ。ジャンポール・ゴルチエのアシスタントを経て、88年に自身のブランド「メゾン・マルタン・マルジェラ」を設立。パリ・コレクションで作品を発表してきた。ブランドを象徴する商品であるつま先が足袋の形をした「タビブーツ」は、彼が初めて東京を訪れたとき、地下足袋をはいた作業員を見て思いついたという。

引退は突然だった。ブランド創設20周年のファッションショーを境に、表舞台から姿を消す。現在ブランドは「メゾン・マルジェラ」と名前を変え、ジョン・ガリアーノがデザイナーを務める。

マルタン・マルジェラ、自ら語る創作 明かさぬ顔、「素顔」に迫る映画
ブランドを象徴する「フォーステッチ」

映画は著名なファッション評論家やかつてのアシスタントらの証言を交えながら、ビジネスを拡大するなかで抱いた苦悩や引退を決めた理由に迫り、60代になったマルジェラのいまも明かされる。

東京・渋谷のホワイトシネクイントほかで順次公開。

妥協しない強さ、ゆえの孤独 ホルツェマー監督

ドイツ出身のライナー・ホルツェマー監督は、難攻不落といわれたマルジェラの信頼を得て、映画の製作にこぎつけた。約40日をかけたという撮影の舞台裏を、オンライン取材で聞いた。

マルタン・マルジェラ、自ら語る創作 明かさぬ顔、「素顔」に迫る映画
ホルツェマー監督 ©Fritz Beck

――マルジェラはなぜ取材を受けたのでしょうか

彼がファッション業界を離れて10年以上経ったことは大きかったでしょうね。彼はこの業界に苦しんでいて、傷を癒やすためにも離れて過ごす時間が必要だった。いいタイミングでアプローチできたと思います。

――彼はどんな人ですか

ストリートで見かけても誰もファッションデザイナーだとは思わないでしょう。Tシャツとジーンズにスニーカーやブーツ、いたって普通の格好をしています。話しやすい人ですが、一切の妥協をしない強さがある。それゆえ、孤独なポジションに立ってしまいがちなところがあるかなと思いました。

――取材相手の信頼を得るために大切なことは

正直であること。そして自分自身がオープンであること。もちろん質問を用意していきますが、それをゴミ箱に捨てる。それぐらい相手の言葉に耳を傾ける。有名人であっても、ちゃんと聞けば彼らも喜ぶし、もっと語ってくれると思います。

(長谷川陽子)

ファッションの枠から人々を解放

「僕はマルジェラじゃないからね」と2度ほど会ったマルタン・マルジェラは、いたずらっぽく念を押した。「20世紀の破壊王」と呼ばれ、主に90年代からの20年、ファッションの常識を壊し、その枠から人々を解放した。

匿名性へのこだわりや脱構築性、古着の再利用や、カビ菌が増殖する服、拡大やフラットにした服やリラックスしたぜいたくな時間の提案……。どれも自由な発想を、ユーモアと皮肉と人間愛と優れた仕立て技術で具現化した。

エレガンスとベーシック、美と醜、高級と低級などアイデアやデザインの振り幅も大きかった。20世紀の多くの慣習を壊そうとしたマルジェラのそんな手法や考え方の影響は、結局30年後の21世紀の今も続いている。

SDGsの取り組みなど大量生産販売してきたファッションシステムもようやく変わろうとしている今、本人が声や手だけでも出演した今回の映画は、ファッションが次に進むことをマルジェラ自身が強く待ち望んでいる証しのようにも思える。

(編集委員・高橋牧子)

REACTION

LIKE
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら