フィンランドで見つけた“幸せ”
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こっそり静かに作戦決行 森の恵みと秘密の場所

内緒のきのこスポットへ

慣れた様子で森に入っていく彼女に続くと、森の中の土は、ふんわりやわらかい。時折小さな枝をポキッと踏む感触が足に伝わってくる。北国らしい針葉樹の森、でも見上げるとこずえの先から日の光が差し込んで明るく、うっそうという雰囲気ではない。

「あったあった!」

彼女はもうきのこの群生を見つけ、バスケットの中に入れている。私はというと、緑のコケやベリーの低木などの下草の中、目を凝らすけれど、まったく見つからない。 「慣れてくると見えてくるようになるのよ、“きのこの目”になるの。ほら、ここのあたり、見てみて!」

きのこ
黄色が美しいカンタレリは、数あるきのこの中でも一番見分けやすく、スープやソースにする

小声で指し示された場所を見てみると、発見!  茂みの中から鮮やかな黄色いきのこが顔をのぞかせている。これはカンタレリ(アンズタケ)という、おいしいきのこ。

かさを壊さないようにそっと根元をつまんで引き抜くと、一瞬やわらかく土の中に沈むような感覚があり、しっとりした大ぶりのカンタレリが手の中に収まった。これは楽しい! きのこはひとつ見つけると、周りにも生えていることが多い。コツをつかむと、だんだんと頭をのぞかせているきのこたちを見つけることができるようになってくる。

夢中になって収穫し、やったねと喜びあっていると、遠くの方から犬がほえる声がした。

「あれはこの辺りの家の犬ね、私たちが来たからほえてるのよ。この辺にきのこポイントがあるって、あの家の人に分かっちゃう」

友人はしかめっ面をしたあと笑って、私たちは撤収することにした。 秘密の場所での大作戦のようなきのこ狩り。いつの間にか彼女愛用のシラカバのかごはきのこでいっぱいになっていた。

きのこ
かごに入っているのは、「スッピロヴァハヴェロ」という呪文のような名前のきのこ。パイに入れることも
軽食
採ってきたきのこをソテーし、トーストの上に。友人が作ってくれた軽食は絶品

夕暮れの帰り道、森の間に広がる草地には白いもやがかかっていた。青い夕闇が深まっていき、急に冷たくなった空気が、夏の季節は終わったのだと告げていた。豊かな実りの後にやって来る長く暗い冬の時間が、もうすぐそばで身を潜めている。暮れていく森と空を眺めていると、遠くの家々にともるランプやキャンドルの明かりが、とても懐かしく、あたたかく思えた。

もや

ふと、トーベ・ヤンソンが作詞し、フィンランドで今も愛唱されている「秋の歌」という歌を思い出した。少しさみしげで透明感のあるその歌は、「明かりをともしましょう 夜がすぐに近づき 夏はもう終わるから」と繰り返す。それは、今まさに秋を迎えるフィンランドの風景そのものだった。

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