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花のない花屋
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「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
山崎香奈恵さん(仮名) 38歳 女性
主婦
神奈川県在住

    ◇

昨日、小学4年生の次女に色覚異常があることがわかりました。学校で行われる簡易検査を希望して受けて判明しました。実は、わが家では夫にも色覚異常があります。夫の言葉を借りると、「緑と赤の区別がしづらい。小さなものだとごちゃっとして、色がわかりづらい」そうです。

昔からその話は聞いていましたが、日常生活に支障を感じたことがないと話しており、また夫がこのことで困っている場面も見たことがありません。私も夫に色覚異常があること自体を普段考えることがない生活を送っていました。

わが家の3人の子の真ん中にあたる次女は、外見やしぐさ、優しくて絵が上手なところなど、何かと夫に似ています。強い光が苦手なところや、「『はひふへほ』って言うのがちょっと苦手なところまでパパと似ている(笑)」という次女です。

だから色覚異常の検査希望書が届いた時に、「あるかもしれない。でも娘が何かを訴えてきたことはないし、ひどく支障を感じるほどじゃないだろう」と、軽い気持ちで検査を申し込みました。「疑いあり」と最初の結果が出たときも、「珍しいものじゃなく、生きていくのに大きな不自由はない」という夫のおかげで落ち着いて受け止めることができました。

とはいえ、その後正式に色覚異常の診断が出て、娘に改めて色についての話を聞くと、思いも寄らない答えが返ってきました。

「黄緑も緑も同じに見えるの。だから学校で友達に、黄緑の鉛筆はどっち?って聞いてた。幼稚園の頃は全部の色がとってもきれいに見えていたから、そのときの感覚で本当はどんな色なのかはわかるんだよ。あとは色の濃さをみんなに合わせて塗っているよ」

幼稚園までは、色が普通に見えていたとのことで、その記憶を頼りに、お絵かきや服の色を選ぶときは、その色が人にどう見えるか、想像して選んでいたというのです。なぜ今まで言わなかったの?と聞くと、「不自由だったけど、問題だと思わなかった」とのこと。そして「パパと一緒だね!」と笑っていました。でも、ほんの一瞬、寂しそうにした横顔が、娘の本当の気持ちのように思えました。

重い病気ではないけれど、絵を描くのが大好きで、かわいいものやカラフルなものが大好きな娘。いつも周りに合わせて、かわいいって言っていたのかな……。まだ小学4年生の娘が、ずっとそんな気を遣っていたのかと思うと、涙が止まりませんでした。

娘ならではの色の見え方も、また個性。これからはそう考えて、娘には本心で「かわいい!」と感じる色を選んでほしいと思っています。本人にとっては、あらためて自分の色覚を実感する、色との新たな関係の始まりです。

そこで、娘の目から見て、本当にかわいいと感じる花束を作っていただけませんでしょうか。「黄緑が緑に見える」そうで、全体的にワントーン濃く見えているようです。薄めのパステル色で、色をたくさん使ったアレンジが気に入るかなと思います。

「自分がかわいいと思う色で、自由に描いていいんだよ。自分がかわいく見える服を選べばいい。図工だって、みんながほめる絵じゃなくて、あなたがすてきに見える絵に仕上げてね」

作っていただくお花にそんなメッセージを込めたく、応募させていただきました。

「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ
≪花材≫スプレーバラ、クルクマ、ナデシコ、スプレーカーネーション、ブルースター、クレマチスシード、アルストロメリア、トルコキキョウ、ブバリア、ミラビフローラ、ドラセナ

花束をつくった東さんのコメント

お嬢さんが好みの色を見つけられるように、色とりどりの小花が詰まった花束を作りました。器も黒にして、全体を引き締めました。お花は色だけでなく、形や質感もさまざま。それぞれのお花の世界を楽しんでいただければと思います。

オーダーメイドの花屋をやっていると、人によって、また同じ人でも、気分や状況によって、美しいと思うお花が変わることがわかります。お花は見る人の個性や心情があらわれる対象。そして、人それぞれ見え方が違っていいと思います。

色だけでなく形や質感など、お花の世界を丸ごと楽しんでもらうことで、「好きな色を好きと言っていい」という、お母様のメッセージも伝わりますように。

「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ
「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ
「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ
「幼稚園の頃の記憶で色を塗っているの」色覚異常がわかった、お絵かき好きの次女へ

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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