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京都ゆるり休日さんぽ
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モダン建築でリモートワークも オープンデーに訪ねたい「国際会館」

京都市営地下鉄烏丸(からすま)線の終点として、京都を訪れた人ならたびたび見聞きするであろう「国際会館」(国立京都国際会館、左京区)。日本初の国際会議場であり、戦後モダニズムを代表する建築物でもあるこの場所で毎月、誰でもカフェやコワーキングスペースを利用できるオープンデーがあることをご存じですか。壮大なスケールの建築美に身を置くと、いつもの仕事やコーヒーもひと味違って感じられそうです。

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

近代日本建築の知恵と美学、日本初の国際会議場

正面玄関で「オープンデー利用」などと伝えて入館。近未来的な台形のエントランスは高揚感がある
正面玄関で「オープンデー利用」などと伝えて入館。近未来的な台形のエントランスは高揚感がある

正面玄関を入ると、まるで宇宙空間のようなトンネル状のエントランスに迎えられます。建築家・大谷幸夫氏のプランが国内初の公開コンペで最優秀賞を獲得し、1966年に開館した国際会館は、約4万6千平方メートルもの延べ床面積を誇る巨大空間。台形と逆台形を巧みに組み合わせた空間デザインは、力強く近未来的。一方で、4色の濃淡で四季のコケの色をイメージしたじゅうたんや職人がたたき出したという粗面仕上げの柱が、無機質な構造にぬくもりを添えています。

日本庭園をのぞむラウンジ。催事が開かれている時は、関係者向けのカフェとして営業されている
日本庭園をのぞむラウンジ。催事が開かれている時は、関係者向けのカフェとして営業されている

「『人は自然の中に集い話し合う』が、大谷氏の一貫したコンセプトでした。ここは、比叡山を借景にした宝ヶ池一帯の穏やかな山間風景が魅力。四角い形状では、異形のものが立ち現れたように見えると考えられたようです。台形は、建物を山肌から離し、圧迫感を和(やわ)らげるため。逆台形は、深いひさしで日光や雨を遮る役目を果たしつつ、周囲の自然との調和を図りました」

そう話すのは、広報の小野田千春さん。昨年から、催事の関係者以外にも国際会館の空間美にふれてもらおうと、毎月設定される「建築の日(特別見学会)」「NIWA caféの日」「ワーケーションの日」から成る「ICC Kyoto open day」を開催しています。

V字の柱には折り紙から着想した照明が。奥のステンドグラスは、若手の美術家を集めた「A・A・A(Association des Artistes pour l’Architecture)」が制作した
V字の柱には折り紙から着想した照明が。奥のステンドグラスは、若手の美術家を集めた「A・A・A(Association des Artistes pour l’Architecture)」が制作した

日本庭園をのぞむメインホールのラウンジは、インテリアデザイナー・剣持勇氏がデザインしたソファや美術グループ「A・A・A(Association des Artistes pour l’Architecture)」が手がけたステンドグラス、折り紙をモチーフにした照明など、世界各国の来賓をもてなす調度品が配された空間。オープンデーでは誰でも、ここでくつろいだり仕事をしたりすることができます。

ラウンジの会話が会議を変える 交流生むスペース

剣持勇氏デザインのソファ。六角形の面と面を合わせることで、さまざまな形につなげることができる
剣持勇氏デザインのソファ。六角形の面と面を合わせることで、さまざまな形につなげることができる

1997年の地球温暖化防止「京都議定書」採択をはじめ、国際会館は数々の国際会議に利用されてきました。会議場がフォーマルな空間であるならば、ロビーやラウンジは広場のように各国の交流を生む空間。実際に、京都議定書の採択の際には、全体委員会のエストラーダ議長が反対国の代表団をソファに誘う光景が何度も見られたといいます。

日本庭園の池には白鳥が泳ぎ、訪れた人を和ませる。公募で選ばれた名前は、つがいの「幸子」と愛いっぱいの幸せな家庭が営まれるようにと「幸男」。庭に出て散歩することも可能
日本庭園の池には白鳥が泳ぎ、訪れた人を和ませる。公募で選ばれた名前は、つがいの「幸子」と「愛いっぱいの幸せな家庭が営まれるように」と「幸男」。庭に出て散歩することも可能

「国際的な議題の交渉や駆け引きは、会議場だけでなく、会議の合間に人々がくつろぐラウンジでこそ行われると大谷氏は考えていました。建物の約70%をパブリックスペースが占め、総建築費の1%が美術品に充てられているのは、そうしたねらいがあります。面と面をつなげてさまざまにレイアウトできる剣持氏のソファも、実際に座って隣り合う方とお話しすると、人と人との交流を意図したデザインだということが感じていただけると思います」(広報・小野田さん)

「NIWA café」でいただける「スワンシュー」(1個200円)、「NIWA caféコーヒー」(単品300円、フードとセットで200円)。いずれも税込み
「NIWA café」でいただける「スワンシュー」(1個200円)、「NIWA caféコーヒー」(単品300円、フードとセットで200円)。いずれも税込み

昨年から、市内に11店舗を展開する「前田珈琲(コーヒー)」が手がける「NIWA café」がオープンし、オープンデーには庭園を眺めながらランチやデザートを楽しむ人、コーヒーをかたわらに仕事にいそしむ人でにぎわいます。モダン建築に興味のある人なら、建築の見どころを解説していただきながら館内をめぐる「建築の日(特別見学会)」に参加することも。さまざまな国際会議の舞台となってきたこの場所は今、市民に開かれた、ローカルで多様な交流の場にもなりつつあります。

「NIWA café」では朝食やランチメニューも豊富。館内はWi-Fiやプリンター、コワーキングスペースのデスクも利用できるため、一日中仕事する人も
「NIWA café」では朝食やランチメニューも豊富。館内はWi-Fiやプリンター、コワーキングスペースのデスクも利用できるため、一日中仕事する人も

「オープンデーがあることが少しずつ広まり、催事関係者以外にも利用していただけるようになってきました。建築としての魅力はもちろん周囲の自然も豊かで、庭園では桜や紅葉の風景も楽しめます。気軽に足を運んでいただき、会館の活性化につながれば」と広報の小野田さんは話します。

広いパブリックスペースはいくつかの階層に分けられ、それぞれのフロアで話す人々を見渡せる造り。小集団での交流をスムーズにしながら、会議全体のムードを共有できる
広いパブリックスペースはいくつかの階層に分けられ、それぞれのフロアで話す人々を見渡せる造り。小集団での交流をスムーズにしながら、会議全体のムードを共有できる

世界中の要人が集まる会議も、市民が文化に親しみ憩う場所も、自然と調和し、人と人とがつながる空間が必要とされていることは変わりません。戦後モダニズムの代表作から未来に残る建築へ。進化する国際会館から、今後も目が離せません。

■国立京都国際会館
https://www.icckyoto.or.jp/
※9月のオープンデ―は緊急事態宣言延長に伴い中止。来月以降、詳細はHPにて

BOOK

モダン建築でリモートワークも オープンデーに訪ねたい「国際会館」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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