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小川フミオのモーターカー
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燃料電池車に「震え」がきた理由は ホンダFCX

見かけはフツウのハッチバックのよう

衝撃的な発言「2040年にはハイブリッド車を含めて内燃機関搭載車をすべてラインナップからなくす(大意)」としたホンダ。昔から燃料電池の乗用車に熱心だった。「クラリティ」など、水素を充填(じゅうてん)して、そこから電気を作りモーターを回す燃料電池車はよく知られているだろう。2002年の「FCX」はその先駆け。リースのかたちで一部にのみ提供された。私には思い出深いクルマなのです。

私の思い出とは、FCXのプロトタイプで屋久島を走り回ったこと。04年だった。鹿児島大学などの大学間共同研究チームの委託を受けて、屋久島電工が水力発電を使って水を電気分解して、水素を発生させる完全循環型の水素ステーションの試験運用を開始したタイミングだ。

水素タンクを二つ、リアシート下に備えていた
水素タンクを二つ、リアシート下に備えていた

その考えに賛同したのが、本田技術研究所。ホンダが自動車を作るにあたって、研究と開発を担当してきた企業が本田技研。そこが、FCXの運用試験を、屋久島で行っていた。私はそれを取材させてもらったのだ。

屋久島は、「ひと月に35日雨が降る」とかつて林芙美子が『浮雲』で書いたほど、雨の多い場所。うっそうとした緑の山の周囲に、申し訳程度といいたくなるような自動車も通れる道があるようなところだった。

水素を分解して電気(エレクトロン)を取り出すFCスタックは床下にあったが、室内は結構広かった
水素を分解して電気(エレクトロン)を取り出すFCスタックは床下にあったが、室内は結構広かった

「究極のクリーン性能を可能にする」と、ホンダがプレスリリースで謳(うた)っていたFCXは、見た目は軽自動車的なハッチバック(画像でご覧いただいている通りです)。これが未来かあ、と不思議な気がしたものだ。

実態は電気自動車。発進直後から最大トルクを出すモーターのおかげで、予想以上に力強い。上りと下りが続く屋久島の道を、面白いようにすいすいと走ったものだ。

左には回生エネルギーのメーター
左には回生エネルギーのメーター

途中で、価格のことを尋ねた。横は崖で、その下には森のように緑が広がっている道を走っていた時のことだ。すると本田技研の人は「(プロトタイプなので)一概にはいえませんが、3億円ぐらいですかね」とこともなげに言うのだった。

クラシックカーを除いて、私が生涯で運転したことのあるもっとも高価なクルマ。それが全長4メートル少々のFCXだ。スーパースポーツカーのブガッティも運転したことがあるけれど、崖の道をFCXで走った時のほうが緊張した。震えがきた。聞かなきゃよかったと思ったものだ。

エネルギー回収と放電にあたって(電池より)効率にすぐれるキャパシターを使用
エネルギー回収と放電にあたって(電池より)効率にすぐれるキャパシターを使用

ホンダは、そのあと、08年に余裕あるサイズの「FCXクラリティ」をリース販売でデビューさせ、16年にはプレミアムセダンの「クラリティ・フューエルセル」を発売。一時は、トヨタMIRAIとともに、水素を燃料とする燃料電池車の双璧をなした。

しかし、21年6月に販売不振を理由に、同社は燃料電池の乗用車事業からの撤退を発表。世間を驚かせた。私も驚いた。たしかに、CO2排出量規制は大型トラックにも及ぶ。でも、充電式電動車は現実的でない。そこでいま、ホンダも(トヨタも)大型商用車向けの燃料電池の開発に力点を移していくことになるのだ。

2002年12月には内閣府にリース販売した(助手席には当時の内閣総理大臣)
2002年12月には内閣府にリース販売した(助手席には当時の内閣総理大臣)

【スペックス】

車名 ホンダFCX
全長×全幅×全高 4165x1760x1645mm
電気モーター(燃料電池) 前輪駆動
最高出力 60kW
最大トルク 272Nm
航続距離 355km

(写真=ホンダ提供)

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