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中谷美紀×原田マハ 10年越しで実現した映画と、政治との向き合い方

女性の労働環境はほとんど変わってない

中谷 原田さんは日本で女性の総理大臣が誕生することについてどう思っていらっしゃるのですか。

原田 小説を書いた時と日本の状況がほとんど変わっていないのが怖い。日本は女性リーダーの数が先進各国と比べても少ないです。日本で女性総理大臣の誕生はまだまだ遠いというのは正直あります。でも、実際には社会の中で活躍する女性は非常に多い。こんなに活躍している優秀な女性が多いのに、どうしてリーダーが少ないのだろうと思ってしまうところがまだまだですね。

原田マハさん

中谷 原田さんの小説は、日本人でも女性でもこんなに世界を舞台に活躍できるんだって夢を与えてくださる。そこがいいですよね。ニューヨーク近代美術館のキュレーターである八神瑤子が活躍する『暗幕のゲルニカ』もそうでしたし、オークション会社に勤める高遠冴が主人公の『リボルバー』でもそうでした。こうやって欧米で専門家としてちゃんと渡り合うことのできる女性がいらっしゃるんだなと。

原田 実際にいらっしゃると思いますが、アートの世界でもやはりアジア人、それから女性であるというのはマイノリティーではあります。文化の世界でも保守的な方々がまだまだいらっしゃるというのは実感としてあります。だけど、確実に変わりつつあります。肌の色やジェンダー、性的指向などで、人のポジションが決まるとか、あるいは、この人と仕事するしないを決めるのは絶対にあってはならない、という高い意識を持ってらっしゃる方々は非常に増えてきたと思います。それは明るい兆しです。

日本は議論されるようにはなってきたけど、まだまだ。LGBT法案は凛子が総理大臣だったら絶対可決しています。

中谷美紀さん

原田 映画業界では、女性の働き方は変わってきましたか。

中谷 女性の監督は少し増えました。カメラマンの方や照明さん、重い荷物を運ぶ女性も本当に増えました。でも、監督だったら子育てをしながらでも許されることがあるかもしれないですが、お仕事をいただいて現場に行く立場の方々だとやはりお子さんが生まれるとどうしても難しい。出産を機にお辞めになる方がまだまだ多い印象です。やはり託児所、保育園、教育のシステムが整ってないと。全部女性が自分でやれと言われても無理ですよね。

原田 無理ですね。それはパートナーがサポートする。男性であれ女性であれ、子育てと介護は両方の仕事なんだとシェアしていかなければいけない。だれもが社会的な弱者となる時期が人生の中で必ずあるわけです。自分のこととして社会全体がサポートしなくてはいけない。それはいつも思っています。

凛子が発する「みんなで幸せになりましょう」のように政治で人を幸せにする。彼女は「国民一人一人を幸せにする」と言いましたが、そういう世の中であってほしい。これは私が理想をパッケージしたような小説なんです。

中谷美紀さん、原田マハさん

政治を日々の暮らしに結びつけてもらえたらうれしい

中谷 凛子のセリフで「私はね、総理の椅子にしがみつく気はないの。自分の理想を実現するために一番の近道だったのが、総理大臣っていうポストだっただけ」というセリフがあったんですが、それがとても好きでした。現実は、夢をもって世の中を良くする気持ちを優先し続けることは、難しいのではないかと想像します。

原田 カッコ良かったです。女性総理大臣が映画の中だけの絵空事であるというのは、本当は憂慮すべき世の中なのかもしれません。日本以外の国では今、女性のリーダーが登場し始めてますから、そのうちにきっと日本もそういう方が出てきてくれるのでは、という希望は持ちたいですね。

中谷 ぜひこの映画を日本の国民の皆さま全員にご覧いただきたいです。投票に行くことは、日々の暮らし、100円のものを購入した時にいくら消費税がついてくるのかとか、本当に身近な日々の暮らしに密接に関わっていることです。映画を楽しく笑ってご覧いただいて、少しでも日々の暮らしに結びつけていただけたらうれしいなって思います。

原田 本当にそうですね。政治は他人ごと、みたいな方もいらっしゃるのではないかと思うので、これをきっかけに少し興味を持っていただければいいなと思いますし、現実を厳しく見ていただけたら。

ジャッジするのは国民側です。だから無関心でいることが、実は一番この国を間違った方向に向かせることになってしまう。投票に行くことももちろん、そのためには、一人一人の意見をきちんと聞く。政治家サイドもすごく勉強しないと駄目だと思います。私たち国民に何を言っても大丈夫なんだって思わせてはいけない。政治家の方々もこの映画を見られるのではないかしら。

中谷 そうしたらしめしめですね。そこが一番大事かもしれません。

原田 凛子を見習ってもらいたい。政治家の皆さんにもぜひご覧いただきたいですね。

中谷美紀×原田マハ 10年越しで実現した映画と、政治との向き合い方
(c)2021「総理の夫」製作委員会

(構成・坂口さゆり 写真・伊藤彰紀〈aosora〉)

スタイリスト:岡部美穂
ヘアメイク:下田英里
ネイリスト: 川村倫子(ネイルハウス安气子

総理の夫
中谷美紀×原田マハ 10年越しで実現した映画と、政治との向き合い方

大財閥の次男に生まれ、何不自由なく暮らしてきた世間知らずの相馬日和(田中圭)と、才色兼備で政界に渦巻く男たちの黒い思惑を笑顔でかわしていく男前なヒロイン、凛子(中谷美紀)。おっとりした夫は日本初の女性総理となった妻を支え切ることができるのか。原田マハさんの小説を映画化したヒューマンコメディー。9月23日(木・祝)、全国ロードショー。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

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