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永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶
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(128) 30年以上の親交に感謝 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は米国・ニューヨークの街角。前を歩く女性の姿を見つめながら、永瀬さんが思い出していたのは……。

(128) 30年以上の親交に感謝 永瀬正敏が撮ったニューヨーク
©Masatoshi Nagase

「ジィーム!!」
僕はアパートメントの前で、5階のある部屋に向け叫ぶ。

「今日何してる?」
前回も書いた、僕が昔ニューヨークに滞在していた時、よく映画監督のジム・ジャームッシュ氏が電話をくれた。
日本から1人でやってきた、ましてやほとんど海外に行ったことがなかった僕のことを、気にしてくれていたんだと思う。
そして、彼は自分の友人たちも惜しみなく紹介してくれた。
今でも僕がニューヨークを訪れると、誰に聞いて調べたのか、いつもホテルの部屋に連絡をくれる。

当時、そんな彼に会いに行くのは、本当に楽しかった。
ダウンタウンから徒歩か地下鉄で、彼の住むアパートメントへ向かう。
その道中でさまざまな出来事に遭遇する。
頭にでっかい掛け布団をかぶって街中を移動している人、
昼間から目がうつろな人、
リムジンからさっそうと降り立つゴージャス極まりない女性、
電車の中で突然踊り出す集団、
ウディ・アレン監督の撮影現場に遭遇したこともある。
そんな非日常のような日常を体感しながら、ジムの家にたどり着く。

「ジィーム!!」
アパートメントの前に着いた僕は、毎回空に向かってそう叫ぶ。
すると、部屋の窓が開き、ジムのパートナーで映画監督・プロデューサーのサラ・ドライバー氏が、靴下に包んだ鍵を落としてくれる。
それをキャッチして、入り口を開け入っていく。
インターホンが壊れているからだ。
そして、あらゆる角度に傾いた薄暗い階段を一段一段上がっていく……。

一連の行為で、スパイ映画の登場人物が隠れ家に向かうような気分になって、
ジムとサラに会う前に、すでに興奮はMAXを超えていた。
ある日はランチ、ある日はディナー、さまざまな場所へ連れて行ってもらったり、驚くような人たちを紹介してもらったり。
ジムとサラは監督と役者という関係を超えて、友人として僕を受け入れ、接してくれていた。
毎回うれしさをかみしめながら、僕は夜のマンハッタンを歩いて帰っていく。
「こんなに素晴らしいことがあっていいのか……」と。

この腕を組み歩いている女性たちの後ろ姿を見た時、
あの日の思い出を、興奮を、またしみじみ思い出していた。
そしてジムたちとの友人関係が30年以上も続いていることに、ただただ感謝した。

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